原因と相互関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 14:29 UTC 版)
心理的欲求という理論的観点から見ると、FOMO は、心理的欲求の充足が状況によってあるいは長期的に不充分であるため起こるのであり、社会にそれが蔓延すると人々の社会生活はますます裸にされ、リアルタイムな情報の量は増加してゆく。使用・満足感評価によると、人々は特定の欲求を満たすため、具体的には情報を探したり、社会的活動を通じて他者との関係を維持したりするために、ソーシャルメディアを積極的に選び使用する。 FOMO にとりつかれた人にとって、ソーシャルメディアに没頭することは、比較的低コストで社会的につながる便利なツールであるゆえ、素敵な体験になりうるだろう。 自己決定理論(英語版)によると、能力、自立性、関連性における個人の精神的な満足感は、人間が持つ3つの基本的な精神的欲求から成り立っている 。その欲求が低いレベルでしか満たされていない人ほど、FOMO を強く訴える傾向があった。言い換えれば、基本的な精神的欲求と FOMO の間に強い相関関係があることが分かった。加えて、ほぼ10人に4人が FOMO を時々あるいはしばしば感じると訴えていた。FOMO は年齢と負の相関関係があると分かっており、男性は女性より FOMO を訴えやすい傾向がある。 メリアム=ウェブスターが明らかにした別のタイプは、注意と興味が自分に外部にあるものへ完全に向けられる時に起こる。外交的性格の人は、打ち解けて非常に寛いでいるということである。これは、外向性と、より高頻度のソーシャルメディア使用には関連性があることを明らかにしている。彼らは、仲間内での存在感と他者とのつながりをより強めるプラットフォームとして、ソーシャルメディアを使う。 神経質な人間の一類型であるニューロティシズム(英語版)は、感情的な優柔不断さを含意している。これはソーシャルメディアの使用およびネット依存と相関があることが分かってきている。普通の人よりもニューロティシズムに深く悩んでいる人ほど、Facebook や Twitter といったソーシャルメディア・アプリにより惹きつけられやすい。彼らがそれらのアプリを使うのは、友人から肯定してもらうことで自分の存在の正当性を確認しようとする試みなのである。彼らがそうしたプラットフォームを使うのは、直に会うよりソーシャルメディアを使った交流の方が、彼らにとって容易だからだ。 愛情の示し方は、ソーシャルメディアの使用から大きく影響を受ける。ソーシャルメディアは人々が他者と常につながっていられるようにするため作られた。関係性の維持はその人の愛着の示し方に大きく根差しており、愛情を示すにも心配性が付きまとう人は、より不安を感じやすく、パートナーからの安心させる言葉を頻繁に求める傾向がある。ソーシャルメディアはパートナーと常時接触できる手段を提供するため、こうした状況を悪化させることがある。しかし心配性のパートナーに安心させる言葉を常時届けられる点で関係の維持に役立つこともある。ソーシャルメディアは即座の返信を必要としないコミュニケーション手段を提供するという事実は、人間関係で悩んでいる人にとって、ためらいや気まずい沈黙を心配することなく何を言いたいか考えることを可能にする。心配性な愛情の示し方をする人と頻繁にソーシャルメディアを使う人とで人間像に重なりがあるかという点は幾分曖昧なところがあるが、研究者らは一方がもう一方の徴候を示す根拠に充分なると考えている。 Facebook、Foursquare、Twitter のようなソーシャルメディアは、社会的なつながりを求めるためのテクノロジー(技術)であり、より深いレベルでの社会参加の望みを提供してくれる。しかし、不健康な IT 習慣は、対面でのコミュニケーションに充分関われないようにさせることがある。人が何かを考えたり感じたまさにその時、それを他人と共有することで自分が何者であるかを規定するようにテクノロジーを使う時、その人は間接的に「私はシェアするゆえに私である」というメッセージを伝えているのであり、それは他人とのつながりやコミュニケーションの本質を歪めて理解させることもある。もし、より多くの人が他人とシェアし関心を惹こうと目新しいものを探し求めるようになったら、彼らは次第により孤独と空虚さを感じるかもしれない。 ソーシャルメディアは FOMO という感覚に大きな影響を与える要素となってきている。人々がソーシャルメディアによってネガティブな感情を膨らませるのは、他人の投稿や生活への妬みゆえである。ソーシャルメディアは絶えずフィードを更新し、まさにいま他人が何をしているか見つけられる、アクセス容易な中心地を作り出してきた。Snapchat はこのアイデアを次の段階に進めている。ユーザーが投稿する、24時間で消える一連の写真・動画からなるストーリーは、彼らの生活の殆ど全てにわたっている。例えば、ちょうど食べている食事の写真から、参加しているカントリー・ミュージックのコンサートの動画といったものである。これにより、友人が昨日を通して得た全ての楽しい体験を知ることができ、まさに FOMO のスイッチが入るわけである。ドイツの2つの大学の研究者らは Facebook のデータを分析し、人々は友人らの一見「完璧」な生活を見ることにより、ソーシャルメディアを使う時にネガティブな気分になることを明らかにした。FOMO を感じる人々は、常に「つながったまま」でいる必要を感じるがゆえに、ソーシャルメディアによりのめり込み易い。ソーシャルメディアとスマートフォンが登場する以前、人は、一般的には友人たちと一緒に居ることで彼らが何をしているかを知るだけだった。しかし今日、人々はボタンをクリックすることで見逃したものを探すことができる。 「ミレニアル世代」とは、2015年の時点で大学等に通っている学生を指す。彼らは携帯電話を使った音声通話やテキストメッセージを、互いにコミュニケーションする手段として、友人や家族とやりとりするという対人交流に強い関心を寄せている。しかしこれは、良い面もあるが悪い面もある。良い面としては、個々人が他者とつながり続け、サポートを受けてストレスを軽減する助けとなる点がある。しかし悪い面としては、学生にとって気を散らす原因となり得るだけでなく、強いストレスにつながることである。加えてソーシャルメディアは、抑鬱や不安などから来る嗜癖行動のはけ口となり得る。 研究者のアマンディープ・ディールらは、ソーシャルメディアの利用と FOMO に関連して、抑鬱が起こる可能性について論じている。彼らは抑鬱というものを、「人々が喜びを感じない、あるいは感じるにしてもごく僅かという心的状態」と説明する。そして「抑鬱には感情における2つの両極が存在する」と述べる。すなわち楽観的で上機嫌な傾向が弱く、悲観的で不機嫌な傾向が強いという状態である。抑鬱に陥っている人は、心痛、悲哀、苦悩、その他の激しい感情の波や徴候を経験する。抑鬱は、日常の活動を阻害し、集中力、睡眠、食欲、その他の妨げとなる。何年にもわたり研究者らは、ソーシャルメディアの利用が抑鬱を引き起こすことを明らかにしてきた。人はメディアに晒されれば晒されるほど、抑鬱に対して脆弱となり、それは FOMO やその他のメディアがもたらす不安によってさらに悪化することもある。 不安とは、「人が困難な立場や恐れを心配する心の状態」と定義される。伝承文学は、心配性の人が多くの病気に罹りやすいことを示している。「心配性の人は自分の不安な状態を『解決しづらい、慢性の免れがたいもの』と捉えている」、という考えに、研究者らは異議を唱えている。心配性の人は不安な状態でいる間、疲労し肉体的な苦痛を感じる傾向にある。 研究者らは近年、ソーシャルメディア利用者の間での不安感の蔓延について研究を始めてきている。不安を感じてソーシャルメディアを使う人は、却ってソーシャルメディアを高頻度で使うといったような、異なった対処法に戻りがちである。心配性の利用者は不安を紛らわせるために、自分がソーシャルメディアの一員であり注目を集めたいという感覚を得ようとすることによって、よりソーシャルメディアにのめり込む。
※この「原因と相互関係」の解説は、「FOMO」の解説の一部です。
「原因と相互関係」を含む「FOMO」の記事については、「FOMO」の概要を参照ください。
- 原因と相互関係のページへのリンク