前期課程教育
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「東京大学大学院総合文化研究科・教養学部」の記事における「前期課程教育」の解説
東京大学は新制大学となって以来、リベラル・アーツ教育を学部教育の基礎として重視している。前期課程教育は東京大学に入学した全ての1, 2年生を対象に教養学部で実施されている。教養学部(大学院総合文化研究科)が運営主体となっているが、その他の学部や研究所なども一部の授業を担当しており、先端研究の成果が教養教育に反映されているという特徴がある。 東京大学の教養教育は、カリキュラムこそ現代に合わせて変化しているものの、実質的に旧制高等学校時代で重視されていた教養教育の流れを汲んでいる(詳細は教養学部の項を参照)。本節ではそのような事情を踏まえて東京大学における教養教育を特に詳細に解説する。 このような東京大学の教養教育への取り組みは、2003年に文部科学省の特色ある大学教育支援プログラムに「教養教育と大学院先端研究との創造的連携の推進」として採択された。また、2007年には現代的教育ニーズ取組支援プログラムに「ICTを活用した新たな教養教育の実現-アクティブラーニングの深化による国際標準の授業モデル構築-」が採択された。その他には、大学教育の国際化推進プログラムとして「国際標準の学部初年次教育実現のモデル構築-留学生も視野に入れた先進的研修プログラムの試行-」(2006年)、「国際連携による初年次教養教育のモデル実現-職員・学生の参画をとおした「学び」のエンパワーメント-」(2007年)が採択されている。 現在のカリキュラムは2006年度に開始されたが、1993年〜2005年のカリキュラムの基本的な枠組みを継承している。大きく基礎科目、総合科目、主題科目の3つに大別され、そのうち基礎科目がいわゆる必修科目である。進学振分けは基礎科目・総合科目の成績に基づいて行われる。 なお、期末レポートにて剽窃などの不適切行為が判明した場合、当該学期の履修全科目の単位が無効となる処置が採られる。 基礎科目 専門を学ぶ上で土台となる基礎的知識・技能を身に付けるための科目である。2006年度のカリキュラム改正でさらに重要視されるようになった。外国語、情報、身体運動・健康科学実習を除くと、文科生は人文科学・社会科学系科目、理科生は数理科学・物質科学・生命科学などの自然科学系科目を履修するようになっている。その一方、理学部のように文科生の進学希望者に対して自然科学系科目の履修を義務付けている学部もある。外国語 英語(既修のみ)・ドイツ語・フランス語・中国語・ロシア語・スペイン語・韓国朝鮮語・イタリア語・日本語(外国人留学生のみ)から2か国語を選択する。既修外国語と初修外国語の組み合わせが基本であるが、既修外国語と既修外国語の組み合わせも可能な場合がある(以前は初修外国語と初修外国語の組み合わせも可能であったが現在は認められていない)。英語を選択する学生がほとんどである。なお、上記以外の外国語も総合科目L(言語・コミュニケーション)の枠内で第三外国語として履修可能である。 1年生対象の英語の授業のうち、英語一列は全クラス同一カリキュラムという(大学では)珍しい授業システムをとっており、テキスト・ビデオは教養学部英語部会が自作したものを使用している。テキストは市販されており、1993年〜2006年まで使用していた『The Universe of English』(東京大学出版会)シリーズはベストセラーとなった。 情報 主に情報学的な面から情報について学習する科目である。情報と社会との関わりも講義内容に含まれている。2005年以前の科目「情報処理」との相違点は、パソコンの基本操作は習得済と想定していることと、コンピュータ実習だけでなく一般教室での講義もあることである。 身体運動・健康科学実習 いわゆる体育実技であるが、スポーツサイエンスの講義・実習も含まれている。2005年以前の科目「スポーツ・身体運動」からの変更点は、以前は希望者のみであったスポーツサイエンスの実習が全受講者対象となったことである。 初年次ゼミナール文科(文科のみ) 少人数のゼミである。文献調査・討論・発表など、文科学生に必要な能力を養成するための科目である。共通テキストとして作成された『知の技法』(東京大学出版会)はベストセラーとなった。 社会科学(文科のみ) 2005年以前の「方法論基礎 社会科学基礎」に相当する。法・政治・経済・社会・数学の5分野がそれぞれ数科目開講されている。必要な単位数や履修条件は科類ごとに異なっている。 人文科学(文科のみ) 2005年以前の「方法論基礎 人文科学基礎」に相当する。哲学・倫理・歴史・ことばと文学・心理の5分野がそれぞれ数科目開講されている。各類とも、2分野以上にわたり最低4単位履修することが求められている。 数理科学(理科のみ) 数理科学基礎 (後者二つの基礎を学ぶ)・微分積分学・線形代数学およびそれぞれの演習からなる。数理科学基礎が2単位、微分積分学・線形代数学がそれぞれ3単位ずつ、それぞれの演習が1単位ずつ必修であり、数理科学基礎の演習は理科一類のみ必修、理科二・三類では自由選択である。 物質科学(理科のみ) 力学・電磁気学・熱力学(理科一類)または化学熱力学(理科二・三類、ただし理科一類の生徒で入試で物理を選択しなかった学生も履修可)・構造化学・物性化学からなる。力学・電磁気学は、高校で物理を学んでいなかった学生向けの授業(Bコース)も開講される。各科目2単位ずつであり、すべて必修である。なお、2005年度入学者までは「基礎講義 物質科学基礎」という科目名で開講されていた。 生命科学(理科のみ) 理科一類は2006年度入学者より生命科学2単位が必修となり、のちに1単位となった。理科二・三類は生命科学I(生化学・分子生物学)・生命科学II(細胞生物学)の4単位が必修である。なお、2005年度入学者までは「基礎講義 生命科学基礎」という科目名で、理科二・三類のみ開講されていた。 基礎実験(理科のみ) 理科二・三類は基礎物理学・化学実験と基礎生命科学実験が必修である。理科一類は基礎物理学実験と基礎化学実験が必修であり、理科二・三類と同じ基礎生命科学実験を含むカリキュラムも選択できる。各類とも4単位であるが、この科目は1コマ1単位である。 初年次ゼミナール理科(理科のみ) 少人数のゼミである。文献調査・グループ学習・研究発表など、自然科学における基礎的な研究技法を身に付け、理科学生に必要な能力を養成するための科目である。 総合科目 いわゆる一般教養であり、選択科目である。LとA〜Fの7系列に分かれ、毎学期数百もの授業が開講される。統計学、量子論や文科学生向けの物理学など基礎科目に含まれていない授業も総合科目の枠内で開講されている。それぞれの系列には「〜一般」(「思想・芸術一般」など)と呼ばれる科目もいくつかあり、それらは教養学部以外の教員が自分の専門に近い内容を講義する授業である。文科・理科ともに、複数の系列にまたがって幅広く履修することが要求されている。L: 言語・コミュニケーション A: 思想・芸術 B: 国際・地域 C: 社会・制度 D: 人間・環境 E: 物質・生命 F: 数理・情報 主題科目 2005年度までは自由選択であったが、2006年度入学者より最低2単位の履修が義務付けられた。テーマ講義 あるテーマに関して複数の教員が講義を行うオムニバス形式の講義である。その研究分野で世界的に知られる教員が交代で講義を行い、前期課程教育で学んでいる内容が先端の学問領域とどのように関連しているかを提示することを目的とする「学術俯瞰講義」(Global Focus on Knowledge Lecture Series; 略称: GFK)も2005年度より開講されている。 全学自由研究ゼミナール 担当教員がそれぞれ設定した主題に基づいて、少人数で行うゼミ形式の授業である。教養学部を含む東京大学全学の教員が開講している。 全学体験ゼミナール 2006年度より新たに加わった科目である(2005年度までは全学自由研究ゼミナールの一部として開講されていた)。東京大学が全国各地に持つ多くの研究施設を利用して、実際に体験することを通じて学習する授業である。また、囲碁、コントラクトブリッジ、座禅といった珍しい授業も開講されている。前2つは実際にゲームをすることで考える力を養うことを目的としている。なお、教養学部附属教養教育開発機構には2006年10月より「教養教育への囲碁の活用研究部門」が置かれている。
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