併用軌道区間
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「富山地方鉄道富山港線」の記事における「併用軌道区間」の解説
北陸新幹線の建設にあわせて実施される富山駅周辺の連続立体交差事業計画が具体化する段階で、富山港線の取り扱いについても検討されたが、費用対効果や用地などの面で高架駅への乗り入れは見送りとなった。そのため、旧富山港線が市道綾田北代線を横断していた中学校踏切までの区間を廃止した上、その代替となる延長約1.1 kmの併用軌道を市道上に建設して富山駅までのルートを確保すると共に、既存区間も路面電車仕様に改良することになった。この計画の妥当性を検討するため、2003年(平成15年)に「富山港線路面電車化検討委員会」が組織され、路面電車化のほか、現状を維持しながら高架化、全線を廃止してバスで代替、の3案について様々な試算が行われた。その結果、路面電車化した場合、2006年(平成18年)から30年間で累積される社会的総便益が最も大きくなるとの報告が出された。 新設された併用軌道区間の名称は、富山市都市計画審議会で「富山ライトレール線」とすることが決められた。なお廃止区間のうち富山駅から富山口駅までは、高架化工事期間中の仮線用地に転用された。 この区間の経路について下り方向で順に挙げると、起点の富山駅停留場は、JR富山駅の高架下にあり3面2線構造である。駅を出ると直ちに富山駅北口交差点を横切って、その先で1線に合流してから市道富山駅北線の路肩を北に進み、牛島町交差点に達する。ここで右に曲がって市道綾田北代線に移り、以降は道路の中央を東に進み、インテック本社前停留場、牛島新町西交差点、牛島新町交差点、いたち川に架かる八田橋、永楽町交差点を通過する。その後2線に分岐して北向きに曲がりながら市道の東行き車線を横断して、旧線との合流点である奥田中学校前駅に到達する。なお八田橋については、強度の面で従来の橋桁を流用できなかったため、橋桁の中央部分を一旦撤去した後、新たに軌道専用の下路プレートガーダー橋を架設している。 軌道の施工に際しては、インファンド (INFUNDO) と呼ばれる技術が導入されている。これは2列の溝が形成されたコンクリート板を路面に埋設して、この溝の中に樹脂などを介して溝付レールを固定するもので、騒音や振動が従来よりも抑制されている。また積雪対策として、軌道の両側に沿って撒水式の消雪装置が設置されている。 富山駅北口交差点と牛島町交差点は、その手前に列車を検知するセンサーが設置されており、交通信号が切り替わる際、専用の信号機で列車だけを通過させる方式になっている。しかし列車が止まることなく通過できる優先信号が設置されている交差点はない。そのため信号待ちが発生することや、右折車が軌道をふさぐことがあり、若干の遅れが出ることがある。特に朝ラッシュ時の10分間隔ダイヤを維持するには、インテック本社前停留場での停車を含めて、各列車がこの区間を5分以内に走り抜ける必要があるが、現実には難しく、富山駅周辺のダイヤは乱れやすい。なお列車を検知するセンサーとしては、トロリーコンタクターのほか、左右レールの内側に接するように埋め込む方式の物も使用されており、いずれの場合も、列車の進行方向を検知するため複数個を並べて設置している箇所が多い。 市道綾田北代線は、軌道の敷設によって、当初の4車線から2車線(交差点付近は右折車線を含む3車線)に削減された。そのため一部区間を拡幅する計画があり、併せて八田橋の東側から奥田中学校前駅までの軌道を複線化する予定で、これに備えた分岐器が当初から設置されている。この複線化にあわせて、永楽町交差点付近に新停留場を設置する計画が公表された(後述)。なお現状では、永楽町交差点付近での渋滞が激しくなったほか、この周辺で、自動車との接触事故が開業初年度に6件発生するなどの問題が出ている。この対策として2008年3月、ドライバーなどに列車の接近を知らせるため、八田橋の東側と永楽町交差点に計4台の電光掲示板が設置された。列車がトロリーコンタクターで区画された範囲内にあるとき、「電車接近中」と「軌道横断注意」が交互表示される。 2014年1月、富山市はインテック本社前停留場から奥田中学校前駅間の道路の一部、いたち川に架る八田橋東詰から奥田中学校前駅間約340mを拡幅し車道を4車線化、また無電柱化した上で、2017年度より軌道の複線化、八田橋東詰付近に新たに地元からの要望のあった永楽町停留場(仮称)の設置工事に取り掛かると正式に発表した。2018年ごろには富山駅の在来線北陸本線(あいの風とやま鉄道線)の高架工事が完了し、富山地方鉄道富山軌道線との南北接続を予定しているため、それに合わせ完成を目指すとされた。なお複線化により新停留場を設けても、これまでどおりのダイヤ運行定時性を確保できるとみている。2015年12月4日、国土交通省は富山市と富山ライトレール・富山地方鉄道から出されていた軌道運送高度化実施計画の変更を12月7日付で認めると発表した。これによると、軌道延伸(南北接続)工事は平成31年度(2019年度)、複線化も含めた完成は平成32年度(2020年度)の予定とされた。富山駅北停留場は、既設の富山地方鉄道富山駅停留場(2015年3月14日に移設開業済)に統合される。また、既存区間も含めた富山ライトレールの軌道区間は上下分離を行い、富山市が軌道施設を保有する形に変更するとした。なお、南北接続後に富山ライトレール・富山地方鉄道両鉄道で均一運賃、かつ運行主体についても南北接続後に一元化する構想があり、2019年4月25日には2020年2月22日をもって富山地方鉄道が富山ライトレールを吸収合併する事が決定した。これにより、国による買収から77年ぶりに富山地方鉄道の路線に復帰することになる。2019年2月の時点では、延伸工事の完成は2020年3月、新停留場の着工は2019年度とされていた。軌道の複線化は2018年、南北接続は2020年に完成し、新停留場は龍谷富山高校前(永楽町)停留場として2021年に開業した。 富山駅北口交差点から牛島町交差点までの区間は、市道富山駅北線の西側の路肩に軌道が設置されており、縁石によって車道と区画されているため、中に自動車が入り込むことはない。富山駅北停留場構内はバラスト軌道に溝付レールという構造になっていた。 2005年度に富山駅北停留場から牛島町交差点までの軌道が緑化されたが、富山駅北停留場構内は日当たりが悪くコケが繁茂するなどしたため、2015年に小松精練(現・小松マテーレ)が開発した新素材により再施工された。富山軌道線との接続工事により、富山駅北停留場跡地にはシーサスクロッシングが設けられたため、構内の緑化軌道は現存しない。 この区間の施工に際しては海外技術が導入されており、例えば分岐器や、レールボックス(列車検知センサーを軌道内に埋め込むための箱)や、地上と列車との情報伝達装置(両端駅の軌道中央にループコイル状のアンテナが設置されており、車両運転席の左側には操作パネルが埋め込まれている)は、ドイツにある HANNING&KAHL 社の製品が使用されている。なお同社が公開している情報誌で当線が紹介されている。 この区間の最高速度は、法令に従い40 km/hとされるが、曲線などによる速度制限が点在しており、また信号による停止のほか、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}安全確保のため徐行する場合もあり、30km/h程度で頭打ちとなることが多い[独自研究?]。なお奥田中学校前駅以北では、駅間距離が長い区間を中心に最高60 km/hで運行されている。 ポイントと永楽町交差点(2006年9月) 芝生軌道と牛島町交差点(2006年9月) 富山駅北停留場の出発信号機(2006年5月)
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