作品の特定とは? わかりやすく解説

作品の特定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 08:13 UTC 版)

ジョルジョーネ」の記事における「作品の特定」の解説

ティツィアーノ真作判断するのが困難な理由として、その死後に他の画家たちによって最終的な完成見た作品があることと、当時からティツィアーノ評価あまりにも高かったことから、他の画家作品であってもティツィアーノ作の絵画であるとした間違った記録残っていることがあげられる残っている絵画に関する当時の記録教会王侯からの依頼記録大部分で、一般家庭向けジョルジョーネ小作に関するような記録ほとんどない。他の画家によるこういった小作品の制作ジョルジョーネ死後数年続けられさらには16世紀半ばごろから精巧な贋作描かれるようになった。 作品の特定における主要な記録ヴェネツィア貴族マルカントニオ・ミキエルが1525年から1543年書いた美術品消息』で、12点絵画1点ドローイングについてジョルジョーネ作品であるとしている。このうち現存する5点絵画については、多く美術史家から間違いなくジョルジョーネ作品であると認定されている。その5点の絵画とは『テンペスタ』、『三人の哲学者』、『眠れるヴィーナス』、『矢を持つ少年』、そして異論出ているが『フルートを持つ歌手』である。ミキエルは『三人の哲学者』はセバスティアーノ・デル・ピオンボが、『眠れるヴィーナス』はティツィアーノが、それぞれジョルジョーネ死後完成させたと書いている。『眠れるヴィーナス』はティツィアーノ背景風景画完成させたと現在の美術史家からも認められているが、『三人の哲学者』はデル・ピオンボに加えてティツィアーノ関係しているのではいかと考え美術史家もいる。『テンペスタ』はジョルジョーネだけの手完成させたと広く認められている唯一の絵画である。その他にジョルジョーネ生まれ故郷カステルフランコ聖堂にある『玉座聖母子と聖リベラーレ、聖フランチェスコ』と呼ばれることもある『カステルフランコ祭壇画』もジョルジョーネ真作であるという評価が高い絵画だが、ドイツ倉庫描かれていた祭壇画一部だったとする説もある。ウィーン美術史美術館所蔵の『ラウラ』には絵画裏面ではあるが、唯一ジョルジョーネ自身署名制作日付残されている。フィレンツェウフィツィ美術館所蔵の『モーゼの火の試練』ともう1点作品も、初期ジョルジョーネ作品であろうといわれている。 ジョルジョ・ヴァザーリ著作画家・彫刻家・建築家列伝』でジョルジョーネ作とされている絵画検証はより複雑である。1550年初版では、現在ヴェネツィアのサンロッコ同信会館所蔵する十字架を担うキリスト (en:Christ Carrying the Cross (Titian))』がティツィアーノ作であると書かれているが、1568年最終的に完成する第二版では1565年時点ではジョルジョーネ作、1567年時点ではティツィアーノとなっている。ヴァザーリ1565年から1567年にかけてヴェネツィア訪れており、このときに異なる二種類情報入手しているのではないかといわれている。ジョルジョーネ作品ティツィアーノ若いころ作品かで議論となり判断出来ないのは、ルーブル美術館所蔵の『田園の奏楽』も同様で、2003年には「ルネサンス期イタリア美術品の作者特定で、もっとも激し議論の的となるのはこの問題だろう」といわれたこともある。 『田園の奏楽』はプラド美術館所蔵する聖母子パドヴァの聖アントニウス聖ロクス』と作風が非常によく似ており、チャールズ・ホープによればティツィアーノではないかといわれることが多い絵画で、何度も指摘されているように初期ティツィアーノ作品酷似していることは明らかだジョルジョーネ作とするのは無理があるよう思えるしかしながら専門的知識駆使し今まで知られているティツィアーノ経歴精査したとしても、これらの作品ティツィアーノ初期の作品であると断言することは、誰にも出来ないだろう。『田園の奏楽』やそれによく似た絵画作者二人どちらでもなく、より無名のドメニコ・マンチーニにしないかと提案したいくらいだ」としている イタリア人版画家ジュリオ・カンパニョーラ1482年頃 - 1515年頃)が残した版画も、ジョルジョーネとティツィアーノ作品判断材料使用されることがある。カンパニョーラはジョルジョーネ風の版画制作者として著名で、ジョルジョーネとティツィアーノ絵画モデルとして多く版画制作したではないか考えられており、実際にカンパニョーラが残した版画二人の名前が記載されているものも存在している。 夭折したジョルジョーネ画家としてのキャリアは短いが、キャリア初期絵画で「アレンデール・グループ (Allendale group)」と総称される数点の作品がある。ワシントンナショナル・ギャラリー所蔵する『羊飼いの礼拝』英語名称アレンデールの降誕 (Allendale Nativity)』から命名されたもので、このグループには同じくナショナル・ギャラリー所蔵の『聖家族』、ロンドンナショナル・ギャラリー所蔵する東方三博士の礼拝』が含まれ、さらにワシントン『羊飼いの礼拝』酷似した、ウィーン美術史美術館所蔵別バージョンともいえる『羊飼いの礼拝』含まれることがある。アレンデール・グループの絵画セットとして扱われており、全てジョルジョーネ真作みなされることが多いが、逆に全てジョルジョーネ作品ではないとされることもある。ワシントン『羊飼いの礼拝』1930年代大論争の的になった著名な画商ジョゼフ・デュヴィーン (en:Joseph Duveen, 1st Baron Duveen) が『羊飼いの礼拝』ジョルジョーネ真作だとしてアンドリュー・メロン売却したが、デュヴィーンの友人ルネサンス絵画専門家だったバーナード・ベレンソンがこの絵画ティツィアーノ初期の作品だと強く反論したのであるベレンソンジョルジョーネ真作精査し、その数を12点程度とする説に重要な役割果たしたことがある学者だった。 ジョルジョーネ存命時から高く評価され続けイタリア屈指の芸術家という名声受けていたにもかかわらず多く絵画ジョルジョーネではなく別の画家による作品であるとみなされてきた。エルミタージュ美術館の『ユディト』は長い間ラファエロ作品と見なされており、『眠れるヴィーナス』はティツィアーノ作品とされていた。19世紀終わりジョルジョーネ再評価の動き大きくなり、逆に他の画家絵画ジョルジョーネ作品であると誤認識されるようになってしまい、とくに肖像画大量にジョルジョーネ作品だと認定された。1世紀前にジョルジョーネ作だと認定され絵画のうち現在でもジョルジョーネ作と認められている作品皆無ではあるが、ジョルジョーネ絵画を巡る論争は現在でも当時増して激しくなっている。現在のこのような論争背景風景描かれた作品と、肖像画二つ大別できる。アメリカ美術史家コロンビア大学教授デヴィッド・ロサンドの1997年著書によれば「アレッサンドロ・バラリンの急進的な真作認定1993年パリでの展覧会)とマウロ・ロッコの著作1996年)によって、ますます致命的なまでに混乱極めている」としている。2004年ウィーンヴェネツィアで、2006年ワシントン開催され大規模な展示会が、美術史家たちにジョルジョーネかどうか争点となっている絵画一度目にする機会与えた外部リンク参照)。

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作品の特定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/31 23:45 UTC 版)

シモン・マルミオン」の記事における「作品の特定」の解説

19世紀から20世紀半ば美術史家たちはさまざまな作品をマルミリオンのものだとして追加してきた。しかし美術史家アントニー・シュライヴァーが、マルミオンの作品とされているなかには別人作品含まれているのではないか指摘し1969年以降作品見直し開始される。マルミオンの手によるとされている作品は、装飾写本パネル絵合計最大40作品ほどになるが、マルミオンの生涯世評記載されている当時の記録照合する全てがマルミオンの作品とはいえないことが分かってきた。しかし照合作業はっきりしたこともあり、ヴァランシエンヌ近くのサン・オメールの修道院長で、聖ベルタン祭壇画依頼主でもあるギヨーム・フィラートルは、ペテルブルク『年代記』などほかの写本もマルミオンに注文したことが明らかになった。マルミオンがフィリップ3世命令で、1467年から1470年にかけて聖務日課書を作成した記録がある。現在メトロポリタン美術館所蔵されている細密画は、この聖務日課書から散逸したのである

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