作品の構成とトリック
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/22 23:38 UTC 版)
真相は錯綜したもので、カーは見かけとは逆に事件の諸相を集積して本作を構成している。 フレイは確かに教授の弟だった。しかし三男は棺が掘り出される前に窒息死していた。酒場での言葉は恐喝をほのめかしていた。教授はミルズをアリバイの証人に仕立て、フレイの殺害を計画する。デュモンはハンガリー時代からの内縁で共犯を務めた。まず画の包みに大きな鏡を隠して書斎に持ち込む。決行時は書斎の戸口に鏡を置いたあとこっそりフレイの下宿に行き、遺書にも見える文章を書くよう言いくるめ、隙を見て自殺と思われるような個所に銃弾を撃ち込む。さらに自身の体にも一発撃つ。コートに帽子、仮面で顔を隠して帰宅、鏡の前で仮面を外して顔を映し、背後のミルズに見せつける。鏡はミルズからは縁が見えず、鏡像と実像が、人間が二人書斎の戸口の内外で相対していると見える位置に配置されている。戸の開け閉めはデュモンが行う。書斎に入った後(鏡像は実像に隠れてミルズからは見えなくなる)は鏡を暖炉に隠し、実は紙製の衣装を燃やす。仕上げはカンシャク玉を破裂させて、駆け付けた家人に今フレイが自分を撃って窓から逃げたと証言する。その後警察が自殺を発見という段取りだった。 犯行当夜雪が突然降り始めるが、教授は計画完了時までには止むまいと当て込んだ。殺害の際思わぬ抵抗にあい、背中を撃ったことで偽装自殺は望み薄となったが、続行を決意する。フレイの声を聞いた人々が駆けつけるのを恐れ、一刻も早く戻ろうと自傷は止めた教授が去ると、まだ生きていたフレイも立ち上がり外へ出た。街頭で建物の間に教授を見出したフレイは、「二発目はおまえにだ」と叫びをあげ、一発撃ちこんだところで息絶え、銃を取り落して倒れた。銃の指紋は雪で流れ落ちた。銃弾は教授の肩甲骨の下、奇しくもフレイを後ろから撃ったのと同じ個所に命中していた。自宅に戻った教授も偽の銃声を聞かせたところで力尽きた。10時25分というフレイ射殺時の証言は、現場前のショーウィンドウの時計を目に留めたもので、時計は狂っており実は9時40分頃だった。
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