『羊飼いの礼拝』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 07:42 UTC 版)
「ヤーコブ・ヨルダーンス」の記事における「『羊飼いの礼拝』」の解説
『羊飼いの礼拝』には複数のヴァージョンが現存している。いずれも幼児キリストをかき抱く聖母マリアと、二人を崇拝しているフランドル風の衣装を身に着けた羊飼いたちを描いた作品である。キリスト以外の人物はひとかたまりになった半身像で表現され、この場面が親密さにあふれていることを強調している。1616年以前のヨルダーンスはマニエリスムの華やかで明瞭な色使いに興味を持っていた。しかし『羊飼いの礼拝』は色使いよりも光を描写することで人物像を浮かびあがらせる技法を試している。これはヨルダーンスがカラヴァッジョの作品から影響を受けたことを意味する。『羊飼いの礼拝』は聖ヨセフがかかげる蝋燭が主たる光源になっており、この作品における光の表現手法は、独自の明暗技法を発展させたアダム・エルスハイマーからの影響も見られる。そのほかカラヴァッジョからは写実主義も取り入れており「聖母マリアと幼児キリストは素朴で飾り気なく描かれ、そこにはわずかな理想化も存在しない」とされている。 ヨルダーンスは『羊飼いの礼拝』を少なくとも6点描いている。密着した半身の人物像で描くことが多く、観るものの注意が人物像にのみ向けられるように場面を小さく切り取ったような構成で描かれている。この構成は作品の物語性を強め、さらに描かれている人物たちの感情表現を際立たせる目的で採用されている。
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