デタントの時代(1967年-1979年)
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「冷戦」の記事における「デタントの時代(1967年-1979年)」の解説
1960年代末から緊張緩和、いわゆるデタントの時代に突入した。米ソ間で戦略兵器制限交渉 (SALT)を開始、1972年の協定で核兵器の量的削減が行われ、緊張緩和を世界が感じることができた。 この頃には同じ共産陣営でありながらソ連と中国の路線対立はあらゆる方面で亀裂を生むようになってきており、中ソ国境紛争など実力行使を伴うほどになってきていた。印パ戦争は中ソの代理戦争の様相を呈した。 ソ連を牽制すると同時に、東アジアの平和を樹立することを狙い、リチャード・ニクソンがパキスタンの仲介により1972年に中華人民共和国を訪問し、中華人民共和国を承認して外交と貿易を開始し、東アジアにおける冷戦の対立軸であった米中関係が改善、1972年には日本が中華人民共和国と国交正常化した。 また、1973年に北ベトナムとアメリカは和平協定に調印し、アメリカ軍はベトナムから撤退した。アメリカは建国以来初の敗北を味わうことになった。その後1975年4月に南ベトナムの首都であるサイゴンは北ベトナムの手に落ち、同時にラオス、カンボジアでも共産主義勢力が政権を獲得し、インドシナ半島は完全に赤化された。 一般市民の日常生活や仕事に役立つ多種多様な商品やサービスが開発・供給され、世界の経済、財政、貿易、投資、通貨発行は著しく拡大したので、金本位制と外国為替の固定相場制の維持が不可能になり、管理通貨制度と変動相場制に移行した。 ヨーロッパでは、1969年に成立した西ドイツのブラント政権が東方政策を進め、東側との関係改善に乗り出した。また1972年に、かねてからソ連が提案していたヨーロッパ全体の安全保障を協議する「ヘルシンキ・プロセス」が始まり、1975年に欧州安全保障協力会議の成立に繋がった。しかし核を削減する一方、ソ連は1977年から中距離弾道ミサイルを配備した。これに対抗し、アメリカは1979年12月に中距離核戦力(INF)を西欧に配備すると発表した。また同じ月にソ連がアフガニスタンに侵攻したため、東西はまたも緊張し、デタントの時代は終焉した。 中東では、第四次中東戦争が起き、主にソ連の支援するアラブ諸国が政治的な成果をおさめ、石油危機によって西側先進国に深刻な打撃を与えた。しかし、四度にわたる中東戦争を主導してきたエジプトは戦争前にソ連の軍事顧問団を追放し、戦争後はソ連と関係断絶し、ソ連と対立するアメリカや中国から軍事的経済的援助を受け始め、アメリカの主導でキャンプ・デービッド合意が成立し、さらにアメリカは西側に対する石油禁輸を主導したサウジアラビアがドル建て決済で原油を安定的に供給することと引き換えに安全保障を提供する協定(ワシントン・リヤド密約)を交わしてオイルダラーを確立することでドル防衛に成功し、単純な米ソ対立が反映されてきた中東でも新たな冷戦の構図が生まれつつあった。 アフリカでは、1978年からエチオピアとソマリアの間でオガデン戦争が起こっていたが、エチオピアが1974年の軍事クーデターで社会主義を宣言したため、ソ連とキューバがエチオピアを、ソマリアをアメリカと中国とエジプトが支援した。アンゴラは1975年の独立直後から3つの武装勢力が対立し内戦となり、これに南アフリカとザイールとキューバが介入、間接的にソ連・中国・アメリカが援助を行い、泥沼となった。 東南アジアでは、共産主義国家同士のカンボジア・ベトナム戦争が起き、ソ連寄りのベトナムの侵攻で親中国の民主カンプチアが崩壊するも民主カンプチアの亡命政府は中国・ASEAN・日本・アメリカの支援で国連総会の議席を保ち続け、タイとの国境でゲリラ活動を行ってカンボジア内戦は泥沼化した。 ラテンアメリカでは、チリにおいて民主的な社会主義政権を転覆したクーデターで成立したアウグスト・ピノチェト政権が中国とルーマニアを除く共産圏と断交し、親米軍事政権の南米諸国は共産主義勢力の排除で連携するコンドル作戦を立ち上げた。 ソ連は1970年代に世界的に勢力を伸ばし、統一ベトナム、カンボジア(親ベトナム政権)、ラオス、エチオピア、南イエメンの共産主義政府と協力関係を築き、アンゴラ、モザンビーク、ニカラグアなどで共産主義勢力に加担して紛争に介入し、シリアやイラクなどアメリカが近づきにくい国に接近し、友好関係を築いた。ソ連の影響力は1980年代にかけて第三世界に広がった。
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