『世界の多様性』とは? わかりやすく解説

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『世界の多様性』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 22:57 UTC 版)

エマニュエル・トッド」の記事における「『世界の多様性』」の解説

トッドその後1983年に『第三惑星』 (La Troisième Planète)、1984年に『世界幼少期』 (L'Enfance du monde) を著した。後にこの二作は『世界の多様性』 (La Diversité du monde) として一冊にまとめられた。トッドこの中で世界家族制度分類し大胆にかつての家族型と社会の関係を示した。ピエール・ショーニュ(フランス語版)、エマニュエル・ル・ロワ・ラデュリ、アンリ・マンドラーズ(フランス語版)、ジャン=フランソワ・ルヴェルフランスの歴史学者社会学者支持され、非常に活発な議論引き起こしたトッド示した家族型は以下のとおりである。 絶対核家族 (la famille nucléaire absolue)子供成人する独立する親子独立的であり、兄弟平等に関心である。遺産遺言に従って分配されるイングランドマン島オランダデンマークノルウェー南部イングランド系アメリカ合衆国カナダ (ケベック州を除く)、オーストラリアニュージーランドに見られる基本的価値は自由である。世界他の地域比べ女性の地位は高い。これは、核家族本質的に夫婦中心にするため、夫と妻対等になるからである。一方基本的価値が自由であることから、子供教育には熱心ではない。個人主義自由経済を好む。移動性が高い。 平等主義核家族 (la famille nucléaire égalitaire)子供成人する独立する親子独立的であり、兄弟は平等である。遺産兄弟均等に分配されるパリ中心とするフランス北部スペイン中南部ポルトガル北東部ギリシャイタリア南部ポーランドルーマニアラテンアメリカエチオピア見られる基本的価値自由と平等である。女性の地位は、娘が遺産分割に加わる社会フランス北部)では高いが、そうでない地域ではやや低い。絶対核家族と同様、個人主義であり、子供教育には熱心ではない。核家族絶対核家族平等主義核家族分け、平等への態度が全く異なることを示したのはトッド最初である。 直系家族 (la famille souche)子供のうち一人一般に長男)は親元に残る。親は子に対し権威的であり、兄弟不平等である。ドイツスウェーデンオーストリアスイスルクセンブルクベルギーフランス南部 (地中海沿岸を除く)、スコットランドウェールズ南部アイルランドノルウェー北西部スペイン北部バスク)、ポルトガル北西部日本朝鮮半島台湾ユダヤ人社会ロマカナダケベック州見られるイタリア北部にも弱く分布し、また華南痕跡影響がある。多くはいとこ婚を禁じるが、日本ユダヤはいとこ婚が許されロマにおいては優先される基本的価値権威不平等である。子供教育に熱心である。女性の地位比較的高い。秩序安定好み政権交代少ない。自民族中心主義見られる外婚制共同体家族 (la famille communautaire exogame)息子はすべて親元残り大家族作る。親は子に対し権威的であり、兄弟は平等である。いとこ婚禁止される少ない。ロシアフィンランド旧ユーゴスラビアブルガリアハンガリーモンゴル中国インド北部ベトナムキューバフランスリムーザン地域圏およびラングドック=ルシヨン地域圏コートダジュールイタリア中部トスカーナ州ラツィオ州など)に見られる基本的価値権威と平等である。これから共産主義との親和性が高い。トッドそもそも家族型と社会体制の関係に思い至ったのは、外婚制共同体家族共産主義勢力分布がほぼ一致する事実からである。子供教育には熱心ではない。女性の地位一般に低いが、ロシア共同体家族の歴史浅く例外的に高い。 内婚制共同体家族 (la famille communautaire endogame)息子はすべて親元残り大家族作る。親の権威形式的であり、兄弟は平等である。父方平行いとこ(兄と弟の子同士)の結婚優先される権威よりも慣習優先するトルコなどの西アジア中央アジア北アフリカフランス領コルシカ島見られるイスラム教との親和性が高い。子供教育には熱心ではない。女性の地位は低い。 非対称共同体家族 (la famille communautaire asymétrique)母系のいとこの結婚優先される。親は子に対し権威的であり、兄弟姉妹兄と妹、または姉と弟連帯する同性では連帯しない。インド南部見られる子供教育に熱心である。女性の地位は高い。カースト制度において自らを下位位置づけるアノミー家族 (la famille anomique)基本的に核家族に近いが、はっきりした家族規則見出しにくい。東南アジア (ベトナムを除く)、太平洋マダガスカルアメリカ先住民見られる社会結束が弱い。宗教寛容であり、上座部仏教中心としてイスラム教カトリック存在する。 アフリカ・システム (le système des familiaux africains)一夫多妻普通に見られる。この一夫多妻母子家庭集まり近く父親の下に統合されるものではない。女性の地位不定だが、必ずしも低くはない。離婚率が高い。それ以外多様であり、民族により共同体家族的でも直系家族的でもあり得る北アフリカエチオピアを除くアフリカ見られるトッドはこれら家族制度こそが、社会価値観生み出すのだと主張した。これを先験的アプリオリ)と表現する。すなわちこれらの価値観は、特定の家族制度のもとに生まれることで自動的に身につけるからである。 例えば、多民族からなる帝国を築くには平等を基本的価値として持ってなければならないとする。ローマ帝国イスラム帝国、唐帝国は、それぞれ平等主義核家族内婚制共同体家族外婚制共同体家族帝国であり、先験的な平等意識支えられている。一方直系家族であるドイツ日本、かつてのアテネは、どれも自民族中心主義から脱することができず、帝国を築くのに失敗している。イングランド大帝国築いたが、間接統治であり、他の民族自国統合するものではなかった。 トッド理論様々な疑問説明する例えば、なぜ共産主義体制マルクス予想したような資本主義先進国ではなくロシア中国実現したのか、なぜ遠く離れたドイツ日本社会制度似ているのか、なぜアメリカ人は自由と独立重視するのか、などである。説明あまりに明快決定的だったため、マルクス主義失墜しつつある当時にあって新たな決定論であるとして激し攻撃を受けることとなったトッドはこれを、倫理的な判断によって事実否定するのであるとし、事実事実として認める者だけが事実乗り越えられる述べている。 またマルクス代表される経済下部構造とするモデル説明能力が無いとし、家族構造から識字率経済説明するべきであるとした。これより、直系家族ある日本がヨーロッパ追い付くが追い越しはしないこと、東南アジアおよび南インド近いうちに中南米追い越すこと、女性の地位が低い西アジア中央アジア北インド世界で最も遅れた地域となり、いずれギニア湾諸国抜かれること、などを予想した

※この「『世界の多様性』」の解説は、「エマニュエル・トッド」の解説の一部です。
「『世界の多様性』」を含む「エマニュエル・トッド」の記事については、「エマニュエル・トッド」の概要を参照ください。

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