こつ‐ずい【骨髄】
骨髄
骨髄は骨の内部、すなわち長骨の髄腔や骨端およびその他の骨の海綿骨の小柱骨の間を満たす組織で、血球を賛成する造血組織である。発育期にある幼小児の骨髄はすべて赤色骨髄で占められているが、成長ともに長骨の骨髄には黄色骨髄が次第に増加する。7歳以後、黄色骨髄は上肢の長骨の遠位側から近位側に向かって次第に増加し、成人では、赤色骨髄は主として体幹の骨(頭蓋骨・椎骨・胸骨・肋骨)および上肢帯・下肢帯の骨(寛骨など)と上肢・下肢では上腕骨・大腿骨の海綿質の近位端に限られる。骨髄は骨髄腔および海綿質を満たす軟らかい組織で血球をつくる大切な場所である。胎生期や乳児期にはほとんどすべてが赤色骨髄であるが、成長とともに黄色骨髄におきかわり、成人では半量に達する。赤色骨髄は造血(血球新生)が行われる場所であるが、黄色骨髄は赤色骨髄が脂肪化して造血能力を失ったものである。さらに年をとると、黄色骨髄の脂肪組織は変性、萎縮し、骨髄はゼラチン様になる。これを膠様骨髄という。また、結合組織繊維におきかわったものを線維骨髄という。骨の栄養孔から入った動脈は何回も枝分かれし赤色骨髄のなかで洞様毛細血管(sinusoid capillary)となる。この血管は内腔が広いこと、内皮を血球が通りぬけること、内皮細胞に食作用の能力(phagocytic activity)があることを特徴とする。洞様毛細血管の外は造血組織になっており、ここでつくられた血球のうち、完成した血球だけが内皮をくぐりぬけ血管内にでるが、そのメカニズムはよくわかっていない。洞様毛細血管は集まって中心静脈となり栄養孔から外へ出る。造血組織は細網細胞と細網線維の網からなる細網組織であり、その網眼を数多くの種々の段階の造血細胞が満たしているのである。骨髄とは血液疾患の診断に際してきわめて大切で、骨髄穿刺によって骨髄をとりだして観察することが行われている。胸骨穿刺が最もよく用いられる。骨髄は骨の本質的構成要素ではない。骨髄のない骨は小型動物(ことに魚類)には至る所にみられ、造血は脾臓や肝臓で行われる。また人体でも、耳小骨のような小骨や鼻腔壁の薄い骨片は骨髄を欠いている。大きな骨でも、頭蓋骨では骨髄の代わりに空気をいれているものがある(含気骨)。これは骨格を軽くするためと考えられ、鳥類では体幹にも含気骨がよく発達している。赤色骨髄は造血組織が仮に骨の中の空間を利用して占拠しているのに過ぎないのである。
骨髄
【概要】 骨の中の海綿状の空間。ここにある一連の細胞群が分裂増殖して、血液細胞、すなわち赤血球・白血球・血小板になっていく。つまり骨髄は血液細胞の製造工場のようなところ。
【詳しく】 HIV感染症ではしばしば白血球減少や血小板減少がみられるが、骨髄を検査すると過形成である。つまり生産が低下しているのではない。エイズでは悪性リンパ腫やいくつかの感染症が骨髄をおかすことがある。抗ウイルス剤のAZTを使用すると、副作用として貧血や白血球減少症(好中球減少症)が発生することがある。定期的な検査でいつ中止するか、続行するべきかを決める。

骨髄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/24 13:27 UTC 版)

骨髄(こつずい、英語:bone marrow)は、骨の中心部に存在する柔組織である。[1]骨髄には、大きく分けて2種類の細胞がある。血液の細胞とそれを支持する間質細胞である。
造血器官として
骨髄間質細胞は、骨髄中に存在し骨髄穿刺で容易に採取でき造血を支持する細胞として知られ[2]、間葉系の細胞と同じかたちをしており,骨髄の中で細網構造をとっている。
骨髄は血液に富み、あらゆる血球系細胞(赤血球、白血球、リンパ球、血小板のもとになる巨核球など)に分化できる造血幹細胞が存在する。マウスにおいては一個の造血幹細胞を移植することによって、すべての造血系細胞を再構成させることができることが証明されており、ヒトにおいても骨髄移植は白血病など造血系の疾患の根治的治療として有効である場合がある。
- 赤色骨髄(赤色髄)
- 造血機能を営んでいる骨髄は赤色を呈するため赤色骨髄。
- 黄色骨髄(黄色髄)
- 造血機能を失い脂肪化している骨髄は黄色を呈するために黄色骨髄。通常、赤色骨髄に戻ることはないが、大量出血や放射線治療で赤色骨髄の能力が低下した場合などに赤色骨髄に置き換わる場合がある[3]。
造血を行う赤色骨髄は幼児期は全身の骨に存在するが、加齢と共に四肢の骨の造血機能は失われ、黄色骨髄に置き換わる。 25歳を過ぎた成人では体躯の骨にほとんどの赤色骨髄が存在する。特に腸骨と胸骨に大量の赤色骨髄が存在する。
病気・副作用・骨髄毒性
利用

食品としての骨髄
ラーメン等では「ガラ」としてよく煮込みスープのベースとする。moelleとしてフランス料理ではスープやソースに用いる他、大腿骨などを切りオーブンで焼いてプディングの様にすくって食べる。
ハイエナなどの腐肉食動物にとって、骨髄は貴重な栄養源となる[4]。人類も、肉食動物の食べ残した骨髄をすすって食べていたと推定され、長管骨の硬組織を破壊するのに石器を用いる様になると共に、骨髄の豊富な栄養が大脳の発達を促し、これが人間の進化と関係があったとする説がある[5][6]。また、骨と皮によってパッケージされた骨髄は、保存食となった[7]。
油
骨髄には油が含まれることから、骨炭や獣膠を作る際の副産物として骨脂(こっし)が得られた。石鹸、潤滑油、整髪料などに使われた[8][9]。
脚注
- ^ “骨髄”. 2021年10月18日閲覧。
- ^ 監修山田敬喜、肥田岳彦『ぜんぶわかる 骨の名前としくみ事典』成美堂出版、2012年、15ページ、ISBN 978-4-415-31001-5
- ^ 『放射線生物学』著:窪田宜夫, 岩波茂 2008年 p37
- ^ “「大地のハンター展」に行ってみた。 絶滅したあの動物の超貴重な標本も! 写真15点”. natgeo.nikkeibp.co.jp. 2023年5月1日閲覧。
- ^ 親指はなぜ太いのか ISBN 978-4121017093
- ^ Bruce Bower. "Hunting ancient scavengers – some anthropologists say early humans were scavengers, not hunters". Science News. 9 March 1985. Retrieved 16 February 2013. Archived December 22, 2010, at the Wayback Machine.. Retrieved March 23, 2019.
- ^ “先史時代の人類は「動物の骨髄」を保存食にしていた”. GIGAZINE. 2023年5月1日閲覧。
- ^ 骨脂. コトバンクより2023年5月1日閲覧。
- ^ “Hair”. The Scientific American Cyclopedia of Receipts, Notes and Queries. New York: Munn & Company. (1892). p. 255 18 December 2022閲覧。
参考文献
- 貴邑冨久子、根来英雄 『シンプル生理学 改訂第6版』 南江堂 ISBN 4-524-24733-5
関連項目
外部リンク
- 『骨髄』 - コトバンク
- 『赤血球の誕生-エリスロポエチンと造血の場-』(1989年) - キリンビールならびに三共(現・第一三共)の企画の下でヨネ・プロダクションが制作。骨髄内部に於ける造血の様子をその外に取り出して観察する場面が作品後半あたりに存在。『科学映像館』より
「骨髄」の例文・使い方・用例・文例
- 彼は8歳のときに骨髄炎という名の病気になった。
- 彼らは3年前息子を急性骨髄性白血病で失った。
- 造血組織は骨髄の中に位置している。
- 同種骨髄移植
- 彼女は赤の他人に骨髄を提供するような利他主義者だ。
- 骨髄移植.
- 無念骨髄に徹す
- 彼は侮辱を受けて無念骨髄に徹している
- 彼は無念骨髄に徹している
- 寒気骨髄に徹す
- 怒気骨髄に徹す
- 彼の無礼は骨髄に徹した
- 寒さが骨髄に染み込む
- 骨髄の造血幹細胞
- 骨髄を含む、骨髄から成る、または、骨髄に似ている
- 大きな骨髄細胞に関するまたはそれの
- 骨髄の、または、骨髄に関する
- 多発性骨髄腫やその他の悪性腫瘍の治療に使われる抗腫瘍薬(商標名アルケラン)
骨髄と同じ種類の言葉
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