雲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 01:53 UTC 版)
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地球上のほとんどの雲は対流圏内で発生する。雲はその形や性質から十種雲形や種・変種などに分類される[1][3]。なお、雲が地表に接しているものは霧という[2]。
雲の粒子(雲粒)は大気中に浮かんで存在し、可視光線により人間の目に見えている[1][4][5]。同様に、大気をもつ惑星表面において気体成分と液体・固体粒子が浮かぶものを雲と呼ぶ[2]。
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物理化学的特徴
成分
雲の粒子の成分はほとんど水であり[6]、微量ながら水以外の成分、例えば土壌成分や火山噴出物、塵埃などからなる微粒子(エアロゾル)が混ざっているほか[7]、空気の成分(窒素、酸素、二酸化炭素など)が溶解して雲となっている。
地球上のほとんどの雲は対流圏内で発生し、高さごとに特徴をもつ。[1]一方、極地や高緯度地方の高度20 - 30km(成層圏)では、水のほか硫酸塩や硝酸塩から成る真珠母雲(極成層圏雲)が発生する[8]。他方、高緯度地方の高度約80km(中間圏)で見られる夜光雲(極中間圏雲)は主に水からなるという報告がある[9]。
形状
1つ1つの雲粒(水滴や氷晶)の大きさは、半径にして0.001mm - 0.01mm(1μm - 10μm)程度のものが多くを占める。このオーダーでは落下速度は約1cm/秒だが、大気中ではこれを上回る上昇気流がありふれて存在するので落下することはほとんどなく、いわば「空に浮かんだ」状態となる。雲の中での雲粒の数(密度)は、1m3あたり1000万 - 数百億程度である[10]。
詳しくは降水過程参照。また、雨粒の成長の計算はメイスンの方程式(Mason equation)などにまとめられている。
氷晶は、六角柱、六角板、針状、樹枝状などの独特な結晶を形成する。氷晶がくっついて重なり成長したものが雪の粒子(雪片)である[11]。
光学的特徴
たいていの場合、雲は白色や灰色に見えることが多い。白色に見えるのは雲粒が白色の太陽光を散乱するからだが、雲粒の大きさの粒子は可視光線領域のいずれの波長の光(色)も同じように散乱するミー散乱が起こっているので無彩色の白色となる。そして、厚みのある雲は灰色、特に雲の底の部分は黒色に近い暗い色に見えるが、これは濃度の高い雲粒により雲内で何度も太陽光が散乱・吸収された結果、雲を透過する光が弱まるためである。なお、雲からの光の反射率は雲水量が増え厚くなるとともに増加するが、ある程度で飽和のような状態となりそれ以上明るくはならなくなる。また、雲に入射する太陽光の色が赤みがかった色に変わる日の出や日の入り前後の時間は、雲の色も赤みがかかる[12][13]。
また、雲粒を通して太陽光が回折、屈折、散乱などを起こすことで生じる大気光学現象はたくさんの種類がある。氷晶にみられるのが暈(ハロ)、環天頂アーク、環水平アーク、幻日など。水滴にみられるのが彩雲、光冠など[15]。雨粒と異なり雲粒では色付いた虹はみられないが、雲粒が大きなとき白い虹(白虹)がみられる[13]。
電気的性質
上昇気流が強い場合は、上昇や落下を繰り返すうち、雨粒や雪の結晶同士が衝突してさらに大きな粒となって落下する。これが雨・ひょう・雪。また、上昇や落下を繰り返すと霰や雹などの大きな氷粒になり、氷粒同士の衝突で静電気が発生し、それが蓄積されて雷の原因になる。
雲の形成
空気中の水蒸気と、それが凝結(凝縮ともいう)されて液体(水)になるか、凍結(凝固)または昇華されて固体(氷)になったもので雲が作られる。
水蒸気量(湿度)の観点から
大気中に含まれる水蒸気の量は環境により異なるが、一定量の大気中に存在できる水蒸気の最大量を(別の表現では湿度(相対湿度)100%のとき=飽和のときの水蒸気の量にあたるが)、飽和水蒸気量と呼び、物理的に定まっている。また、飽和水蒸気量は気温により変化し、冷たい大気ほどその量は少なくなる[16]。例えば、20℃では17.2g/m3、0℃では4.85g/m3である。
水蒸気を含む湿った大気が冷やされると、湿度100%に達した(気温が露点温度に達した)ところで、その気温における飽和水蒸気量を超えた水蒸気が凝結し(低温下では昇華し)、雲粒が形成される(雲ができる)[17]。
なお、水蒸気の凝結・昇華、また水滴の凍結には、微粒子(エアロゾル)の存在が不可欠である。雲粒(水滴や氷晶)は微粒子を「芯」にして形成され、このプロセスを核形成(雲核形成・氷晶核形成)という[18]。
物理学の領域になるが、見かけ上凝結や蒸発が起こっていない気液平衡の状態にあっても、分子レベルでは、水分子が一時的に寄り集まって凝結したり、逆に離れて蒸発したりといった運動は起こっている。言い換えると、水滴が大きく成長できない状態である。水滴が自発的に成長できる大きさ(臨界半径)より大きくなるためには、不純物を含まない清浄な大気(純水)では気温0℃で相対湿度430%、-23℃で630%、17℃で350%とそれぞれ非常に大きな過飽和度が必要であることが、実験で確かめられている。実際の大気では200%を超える湿度が観測されることはないため、微粒子なしで水滴が形成(均質核形成)されるのは不可能と考えられる[19]。
実際の大気には核となる微粒子が存在するので、相対湿度100%をわずかに超え、過飽和度1%(相対湿度101%)以下のレベルで雲粒が生成される。なお、微粒子によって水滴の核形成に作用し始める(活性化する)過飽和度や温度は異なり、作用が高い微粒子が存在する場合は、過飽和度0.1%でも雲粒が生成される[19]。微粒子(エアロゾル)の種類は、海塩粒子、硫酸塩(硫酸アンモニウムなど)[19]、土壌粒子や鉱物粒子(火山灰や黄砂を含む)、有機成分(バクテリアなど)を含むバイオエアロゾル[20]など。
熱力学の観点から
大気の冷却は、主に大気の上昇(上昇気流)によって起こる。大気が何らかの力を受けて上昇するとき、その気圧は減少して膨張する(断熱膨張)とともに、外部からではなく自ら温度を下げる(断熱冷却)[21]。
このように断熱的に気温が下がる割合を断熱減率というが、飽和の有無により値が異なる。飽和していない大気の乾燥断熱減率は上昇100mにつき約1℃、飽和している大気の湿潤断熱減率は上昇100mにつき約0.6℃(温帯の地表付近における値で、気温や気圧により異なる)である。この差は、飽和した湿潤大気中では、上昇とともに凝結が進んで潜熱が放出され温められることで生じる[21]。
一方、特に霧(地表に達した層雲)のなかには違う原因で生じるものもある。夜間の放射冷却により平野や盆地で見られる放射霧は、地表付近の大気が冷やされて生じる。冷たい海に暖かく湿った気流が入ったとき見られる移流霧(混合霧、海霧)は、海面で冷やされた大気と暖かく湿った大気が混ざり合い、冷却・加湿され生じる。暖かい川に冷たい気流が入ったとき見られる蒸気霧(川霧)は、移流霧の逆で、水面から暖かく湿った大気が上昇し冷たい大気と混ざり合い、冷却され生じる。また逆転層に覆われた低い層雲の下では、冷たい下降気流と雨粒の蒸発による冷却[注 1]・加湿により、雲底が次第に低下、地表に近づいて霧になることがある[22]。
また雲粒の大きさでは核形成の限界から、層状の雲では0 ℃から -10 ℃くらいまで、対流性の雲では -25 ℃くらいまで、ほとんどが過冷却水滴で構成され、またこれらより低く -40 ℃くらいまでは氷晶と過冷却の混在、 -40 ℃以下では氷晶が多い構成になると考えられている[23]。
大局的気象の観点から
大気中において、上昇流により断熱冷却を引き起こすメカニズムはいくつかあるが、主なものを挙げる[24]。
- 対流性: 日差し(太陽放射)による加熱は、地形の起伏や雲による遮蔽の有無などによりムラがあり、周囲よりも暖かい地表に接する空気は浮力を得て、上昇する[24]。特に、加熱に起因し山岳の尾根から湧き上がるような上昇流を熱上昇気流(サーマル)と呼ぶ。
- 収束性: 低気圧の中心や収束帯(シアーライン)でみられる。地表に接する大気の下層では、集まった大気がぶつかり、行き場を失って上空へ向かう[24][25]。
- 地形性
- 前線性: 暖気と寒気がぶつかる前線では、暖気が寒気の上に乗り上げ、前線面に沿って上昇する[24][27]。
- 他の自然現象起源や人為起源
注釈
- ^ 蒸発に伴い周囲の空気から気化熱を奪う
出典
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