核生成とは? わかりやすく解説

核生成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/05 14:19 UTC 版)

Rock candy。過飽和の砂糖水につけた棒の表面で核生成が起こり、大きな結晶が成長する。

核生成(Nucleation)とは、非常に局所的な領域で、異なる熱力学的相が出現することである。核形成とも呼ばれる。例えば、液体中では結晶ガラス領域・気体のなどの発生が実例として挙げられる。一般に知られている例としてはメントスガイザーがある。空孔クラスタの発生にも関わっており、半導体産業などで重視される。飽和水蒸気から液滴が形成される現象も核生成の一種であり(雲凝結核)、人工降雨のプロセスや泡箱霧箱のような実験器具とも深く関連している。例外は存在するが(電気化学的核生成)、ほとんどの核生成過程は物理的な現象であり、化学的現象ではない。

通常、この現象は核生成部位と呼ばれる、流体と表面が接している場所で起こる。懸濁物や微小な気泡の表面でも発生する。このようなタイプの核生成は不均質核生成 (heterogeneous nucleation) と呼ばれるが、明確な核生成部位のない均質核生成 (homogeneous nucleation) も存在する。均質核生成は自発的・ランダムに起こるが、これには過熱過冷却が必要である。

  • 高層大気では雲凝結核の供給量が少ないことなど、気象学では重要な概念である(人工降雨も参照)。
  • ナノ粒子の結晶化過程に関連しており[1]、気相プロセスでの合成において重要である。
  • 天然・人工を問わず、均質な溶液からの結晶化プロセスは核生成から始まる[要出典]
指に付いたCO2の泡。
  • 炭酸水が常圧下に置かれると、すぐに核生成により二酸化炭素の泡が発生する。このように核生成は界面の存在によって促進され(不均質核生成)、沸騰石やRock candy(上の写真)などの例がある。メントスガイザー(メントスコーラ)は劇的な事例である。
    • シャンパンステアラーにはこれを応用した製品があり、表面積や角の多い形状によって炭酸を効率的に逃すことができる。
  • 液体の圧力が減少した場合、沸点が低下して過熱状態となり、液体のバルク部分で核生成が起きることがある。だがこれよりも、濡れ性の低い容器の表面の亀裂などに小さな気泡が付着し、ここが核生成部位となることが多い。このため、過熱を起こすには容器の表面が滑らかで濡れやすく、液体が脱気されていることが必要になる。
  • 重合体[2]合金セラミックスなどで重要な概念である。
    • 化学生物物理学では、重合過程の中間体としての多量体の形成にこの言葉が用いられる。これは結晶化アミロイド形成を説明するモデルとして有用である。
    • 分子生物学では、単量体の小さなクラスタから急速な重合が起こり、ポリマー構造が生成される際の用語として用いられる。 例えば、2分子のアクチンの結合は緩いが、3分子目が結合することで安定化する。この三量体にさらに分子が結合し、核生成部位ができる。これは微小繊維の重合過程において律速段階となっている。

機構

均質核生成

均質な溶液中での核生成は起こりにくい過程であるが、均質核生成と呼ばれる。形成された核は新しい相との境界面を提供することになる。

液温が不均質核生成温度(融点)を下回るが、均質核生成温度(純物質の凝固点)を上回っている状態のことを、過冷却という。これはアモルファス固体のような準安定状態の構造を作る時に役立つが、プロセス化学や鋳造においては望ましくない状態である。過冷却により過飽和状態が生じ、核生成の駆動力となる。これは形成された固体内の圧力が液体の圧力より小さい場合に起こり、液体と固体間での単位体積あたりの自由エネルギー

横軸は半径、縦軸は自由エネルギー変化。臨界半径は r*で示されている

臨界半径より大きいクラスタへの分子の付加では自由エネルギーが獲得されるため、これ以降のクラスタの成長は核生成ではなく拡散によって制限されることになる[5]

臨界半径のクラスタの生成に必要な自由エネルギーは

エネルギー障壁の差

エネルギー障壁が低下しているため、必要な過冷度も小さくなる。接触角がクラスタ形状に影響するために、臨界半径は変化しないがクラスタの体積は小さくて済む。

不均質核生成の場合は、壁と流体が離れることで解放されるエネルギーも重要である。例えばペットボトルの表面にCO2の泡が形成されるような場合、水とボトルの接触面が離れることで解放されるエネルギーは、泡と水・泡とボトルの接触面を形成するエネルギーとなる。同じ現象が沈殿粒子の結晶粒界の形成で見られる。また、これは均質核生成に依存する現象である、金属の時効を妨げる。

核生成速度

核生成速度 I は臨界クラスタの平均数 n* とクラスタの拡散速度

核生成速度

温度が低すぎると拡散速度が低いため、核生成部位に到達する粒子も少なくなり、核生成速度は遅くなる。だが、温度が高すぎると分子が核から抜けだしてしまい、やはり核生成速度は遅くなる。

定常状態での核形成に要する時間


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核生成

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 15:55 UTC 版)

ベイナイト」の記事における「核生成」の解説

ベイニティックフェライトラス(の束・シーフ)は厚い側の端となっているオーステナイト粒界起点として長く伸びた板状をしている。その内部は図2に示すように、炭化物残留オーステナイト区切られフェライトサブユニット含んでいる。互いサブユニットぶつかった場所は小傾角境界と、細い板或いは板状の形で観察されナバロ(Nabarro)の観察結果によるとこれらの領域では引張応力働いている(図3に電子顕微鏡像を示す)。プレーン亜共析鋼及び含珪素過共析鋼下部及び上部ベイナイト生成が、炭素過飽和したフェライトから起きることが認められている。珪素含まないプレーン過共析鋼のみは、高い変態温度においてセメンタイト変態起点となる。その一つが逆ベイナイトである。 ベイニティックフェライトの核生成は熱格子振動格子欠陥のために大抵オーステナイト粒界にて起きる。臨界半径以上に成長すると、サブユニット成長する新たな二次的な)核生成は最初のベイニティックフェライトとの界面起きる。オーステナイト中の核生成は、そこで核生成に必要なエネルギー炭素濃化があるにも拘わらず、高いエネルギーのα-γ界面から低いエネルギーのα-α界面置き換えられる。ベイニティックフェライトの成長速度平衡温度低下に伴い増加する。これは、サブユニット成長止まり、すぐに相界面新たな生成するために、サブユニット小さくかつ数がより多くなるためである。サブユニット大きさは元のオーステナイト粒径及びベイニティックフェライトプレートの成長と関係がある。これはオーステナイト粒界既存のベイニティックフェライトにより制約されるためである。他方オルソン(Olson)及びバーデシア(Bhadeshia)、コーヘン(Cohen)らの最近の研究では、存在を基に、ベイナイトの核生成はマルテンサイトのそれと似ている報告している。核成長を可能とする臨界半径存在することは受け入れられており、核生成の問題核成長帰着することになる。二次的な核生成は、ベイニティックフェライトプレートの成長において、ベイニティックフェライトプレート先端近傍オーステナイト中にひずみを引き起こすことを説明する

※この「核生成」の解説は、「ベイナイト」の解説の一部です。
「核生成」を含む「ベイナイト」の記事については、「ベイナイト」の概要を参照ください。

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