残留オーステナイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/23 07:29 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動残留オーステナイト(ざんりゅうオーステナイト、retained austenite)は、鋼を焼入れする際に、完全にマルテンサイトにはならず、一部未変態のオーステナイトとして残ったもの。
鋼を焼入れをすると、冷却の特定の段階で組織がオーステナイトからマルテンサイトに変態する。変態の開始と終了温度は鋼の組成によって決まる。炭素の少ない鋼は、常温以上で変態が終わるため、焼入れをして常温まで冷却した時点で変態はほぼ完了している。しかし炭素が増えるにつれ変態の開始・終了温度は低下していき、特に炭素を約0.6%以上含む鋼では変態が終了する温度が常温以下になってしまう。このような場合は常温まで冷却しただけでは変態が終わらず、オーステナイトが残留することになる[1]。
残留オーステナイトは熱力学的的に不安定な組織であるため、長い時間をかけて他の組織に変化するが、このときに寸法変化などの問題が生じることがある[1]。また、実用的には硬さが低下するなど不都合なこともあるが、一方で優れた靭性を付与するメリットもあることから、冷間加工用途の工具鋼には積極的に使われてきた歴史がある[要出典]。残留オーステナイトを減少させたい場合は、高温焼戻しを適用したり、室温以下の温度に冷却して残留オーステナイトをマルテンサイト化させるといった処理(深冷処理またはサブゼロ処理)を施すことがある。
参考文献
- ^ a b 坂本卓『絵とき 機械材料 基礎のきそ』日刊工業新聞社、2007年、84頁-。ISBN 978-4526058479。
関連項目
残留オーステナイト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 15:55 UTC 版)
ベイナイト変態が完全に終わるためにはオーステナイトから炭化物ができることが必要である。炭化物は多量の炭素を吸収するため、炭化物周囲のオーステナイトの炭素濃度は大きく落ち込む。オーステナイト中の炭素が濃化すると、―前述のように―変態を止めることが可能となる。例えば合金元素として珪素(Si)を添加すると、炭化物を形成して変態が停止して、多量のオーステナイトが変態しなくなり、室温まで焼入れると、部分的に残留オーステナイトを得ることができる。この残留オーステナイト量は変態を終わらせたオーステナイトのマルテンサイト変態の開始温度(Ms点)に依存する。
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