機械的性質に及ぼす残留オーステナイトの影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 15:55 UTC 版)
「ベイナイト」の記事における「機械的性質に及ぼす残留オーステナイトの影響」の解説
残留オーステナイトの高い延性と変態能のために、残留オーステナイトの量が多く独特の形態を持つ高珪素鋼の靱性は異なった特徴を示す。変形状態において、炭素が強く濃縮した残留オーステナイトはマルテンサイトに変態し、同時に炭素量の低い双晶がオーステナイトから生成する様子が観察される。最大の破断伸びとなる残留オーステナイト量は33から37 vol%と報告されており、それより高い残留オーステナイト量(50 vol%まで)では靱性が低下する。その理由は残留オーステナイトの形状に起因しており、少量の残留オーステナイトが針状のベイニティックフェライト中に存在する場合には、残留オーステナイトが硬いベイニティックフェライトの潤滑膜として働いて延性を改善する。この残留オーステナイトの延性への寄与(英: transformation induced plasticity、TRIP効果)は、その加工誘起マルテンサイトを非常に生じやすい性質のためであり、ある程度の残留オーステナイトの存在は引張試験の破断伸びを大きくする。残留オーステナイトが多く存在するようになると、残留オーステナイトがブロック状になっていき、変形機構が加工誘起マルテンサイトの生成から変形双晶の生成へ変化する。更に残留オーステナイト量が増加すると、ブロック状の残留オースナテイトの割合が大きくなり、残留オーステナイトの量が37 vol%を越えたところで破断伸びが減少に転じる。この関係は変態温度の上昇により破壊靱性値(KIC値)が低下することと対応する。
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