ファシリテーター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/21 01:30 UTC 版)
活用の場
堀公俊・日本ファシリテーション協会は、「個人的⇔社会的(組織・集団的)」という軸と、「学習的(受容的)⇔創造的(能動的)」という2つの軸で、ファシリテーションが活用される分野を整理し、(1)問題解決型(創造的・社会的)、(2)合意形成型(社会的)、(3)教育研修型(個人的⇔社会的・学習的⇔創造的の軸の中心に位置する)、(4)体験学習型(社会的・学習的)、(5)自己表現型(創造的・個人的)、(6)自己変革型(学習的・個人的)の6つの分野に分けて提示している[4][3]。ワークショップ企画プロデューサーの中野民夫は、「個人的(個人の変容・成長)⇔社会的(社会変革)」「学ぶ(感じる・理解する・プロセス)⇔創造する(生み出す・アウトプット)」の2つの軸で、(1)まちづくり系(創造する・社会的)、(2)社会変革系(社会的)、(3)教育・学習系(個人的⇔社会的、学ぶ⇔創造するの軸の中心に位置する)、(4)自然・環境系(学ぶ・社会的)、(5)アート系(創造する・個人的)、(6)精神世界系(学ぶ・個人的)、(7)統合系(学ぶ)に分けており、堀の分類に近いが、まちづくりの位置づけが異なり、統合系を加えた形で分類している[39]。
彼らがワークショップ活動の分類に採用した座標軸は、近代社会を支える基本原理であり、真壁宏幹は、ワークショップが具体的に対象にしているものは、「まちづくり」など極めて近代的なものであり、「現代における近代システムへの『近代的な』問い直し」が、根本的なテーマとして共通しており、「古典的近代が生み出したさまざまな弊害や危機を何とか回避しつつ、よりよく近代を生き抜くための方策の模索」と言っていいかもしれない、と述べている[9]。以下に、堀と中野の分類をベースに、活用される分野を示した。
- 社会的・創造的(能動的):ビジネス・政治分野[4]。まちづくり、合意形成による政策作り[39]。組織開発、ビジネスにおける課題解決を目指したチーム活動、プロジェクト。意思決定に向けたプロセスの設計、チーム内のコミュニケーションなどチーム全般の活動推進[4]。アジャイルソフトウェア開発、KPI(重要業績評価指標)の検証・改善、医療の現場[40]、介護・社会福祉の現場[41]等。
- 社会的:社会活動・学術分野[4]。地域づくり、まちづくり[4][42]、複雑な問題を持つ子どもや若者の支援・ラップアラウンド[注釈 1]、参加型農村調査(PRA)[45]等の参加型開発、紛争解決等。災害復興におけるまちづくりでも活用される[46]。
- 個人的⇔社会的と学習的(受容的)⇔創造的(能動的)の軸の交点:ビジネス・社会教育・学校教育分野[4]。自律的な学習を促すことを目的とする[4]。アクティブ・ラーニング等の教育の現場[4][47]、キャリア形成支援[48]、企業の研修などのトレーニング等。
- 社会的・学習的(受容的):自然・環境分野[4]。同じ体験を共有する事で学習を促していく分野である。[4][49]
- 個人的・創造的(能動的):アート・芸術分野[4]。様々な参加者同士の相互作用を促し、新しい芸術作品の創造を目指す[4]。
- 個人的・学習的(受容的):ビジネス・生活分野[4]。メンバー相互のグループ・ダイナミクスを活性化させ、潜在的な能力を引き出し、気付きを与えて自己変革を促す[4]。競争社会におけるルサンチマンの処理[50]。自己成長、心と体、心理学、精神世界、自己啓発セミナー、ニューエイジ、癒し[39]。個人に働きかけて自己変革を促すコーチングに類似する[4]。
- 学習的(受容的):精神世界と社会変革の統合、個人と社会の癒しと変革など[39]。
注釈
- ^ ラップアラウンドとは、アメリカ、カナダ等で行われているソーシャルワークのアプローチの一種。児童福祉、少年司法、精神保健、教育などの分野において、行動面・情緒面・精神面に深刻で複雑な問題を抱える子どもや若者に対して、コミュニティを基盤として子どもと家族を支援するチームを組み、クライエントの自己決定を重視した、柔軟で包括的な支援やサービスを行うチームアプローチ。1年半 - 2年程度集中的に関わって支援し、エンパワーすることで、彼らが自らの周囲の環境や問題に目を向け、理解し、その意味をリフレーミングすることを重視しており、クライエントが地域をまきこんだ(ラップアラウンドした)形でつながりを作り、成長し、自分たち自身で必要なものに手を伸ばし、生活していく力を身につけることを目指す。[43][44]ラップアラウンド・ファシリテーターは、この支援チームの会議を主導、管理し、必要な支援を行うことができるよう議論を援助する。
出典
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