証券化とは? わかりやすく解説

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しょうけん‐か〔‐クワ〕【証券化】

読み方:しょうけんか

[名](スル)企業金融機関保有する債権不動産などの資産信託銀行特定目的会社譲渡し、この資産をもとにした有価証券資産担保証券)を発行すること。これによって資産流動性高くなる。証券化する資産違いから不動産担保証券債務担保証券などと分類する


証券化

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証券化

読み方しょうけんか

資産流動化する方法として、最も一般的なのが証券化です。
証券化とは、ABS(資産担保証券)を利用して資産の流動化を行う方法です。

次の手順行われます
1.資産SPC売却。  2.SPC受け入れ資産担保ABS発行
3.投資家ABS代金SPC払い込む。  4.SPC資産購入代金企業支払う。
5.SPC資産管理会社へ受入資産管理処分委託。  6.SPC資産管理会社から、運用収益受け取る。
7.SPCから投資家へり払いおよび償還が行われる


証券化

読み方しょうけんか
【英】:securitization


概要

企業抱え様々な資産負債証券として市場販売する方法のこと. 例えば, 大量資金住宅ローンとして貸し出す銀行は, 将来金利変動によるリスク避けるため, ローン小口「証券化」して市場販売し, 返済される元本金利収入(から手数料差し引いたもの)を, クーポンとして投資家支払う. この証券モーゲージ担保証券呼ばれ, 安全で有利な投資対象として人気呼び, 米国では400兆円に達す市場形成している.


詳説

 証券化とは,ある特定の資産原物とそれから生じ法定果実収受する権利を,そ の権利表章する証券」に化体させることをいう.証券化の手法は,金融機関リス資産圧縮,または事業法人ノンバンクなどの資金調達の手段として,広く活用され ている.自らの信用力乏しいがゆえに,直接あるいは間接を問わず,資金調達機会限られているノンバンク存在仮定する.このノンバンクが,保有する資産活用 して,必要資金調達することを考える.その資産取引される市場存在し,当該資 産の買手をすぐに見つけることができるのであれば(つまり,当該資産流動性がある 場合),当該資産単純に買手売却することにより,容易に売却代金手にすることが できる.ところが,取引市場完備されており,流動性のある資産は,債券株式など の有価証券限られており,それら以外の資産売却することは容易ではない.このよ うな流動性乏し資産売却するためには,流動性付与する仕組み(すなわち証券 化)が必要となる.


■ 資産担保証券

 流動性乏し資産として,リース会社クレジット会社などのノンバンク保有す る金銭債権(リース債権クレジット債権)を例にとり,金銭債権証券化の仕組み説明 する.証券化の対象となる原債権債権者(本例の場合ノンバンク)をオリジネーター というが,このオリジネーターが,保有する金銭債権を束にしたものを,特別目的会社 (Special Purpose Company;SPC)などのSPV(Special Purpose Vehicle)に譲渡する(SPV としては,SPCのほかに信託銀行(の信託勘定)などが該当する.「特別目的」たるゆえ んは,流動性乏し資産を,社債信託受益権証書などの流動性のある実体に変換す るという特別な目的のみを果たしいるからである).SPVは,譲渡され金銭債権を裏 付けとして,債券発行する.このように,資産(本例では金銭債権)を裏付けとして発 行された債券を,資産担保証券という.

 SPVは,発行代金として投資家払い込む債券購入代金受領し,オリジネーター は,譲渡した金銭債権譲渡対価として,SPVからこの金額受け取ることになる.

 資産担保証券元利金原資は,金銭債権から生じキャッシュフローである.原債 務者から回収されキャッシュフローが,債権譲受人であるSPV通って,債券の元 利金として投資家支払われる.

 SPCとは,資産担保証券発行などの特定され目的を果たすためだけに設立される 会社である.一般社債発行体は,本来の主たる事業営んでおり,事業成り行き しだいで倒産する可能性はらんでいるが,SPC倒産可能性排除するために様 ざまな工夫こらして設立される.したがって,資産担保証券投資家は,投資判断 にあたっては,オリジネーター信用力ではなく,資産に伴う信用力考慮すればよい.

 資産担保証券は,投資家受け入れられやすくするために,格付け取得するのが一 般的である.前段SPC倒産隔離性より,資産担保証券格付けは,原資産キャッ シュフロー創出力により決定されるので,シングルAの格付けをもつオリジネーターで も,キャッシュフロー創出力の高い良質な資産を証券化することにより,シングルAよ りも高い格付債券発行することが可能となりうる.

 資産担保証券は,償還年限クーポンあるいは格付などの条件互いに異な複数種類(これをトランチあるいはトランシェという)に分けて発行されることが多い.


■ モーゲージ担保証券

 モーゲージ担保証券(Residential Mortgage Backed Securities;RMBS)とは,資産担保証 券のうちで,住宅ローン債権裏付けとして発行されものをいう.住宅ローン債権 は,土地の購入住宅建築のために,個人借り手貸し出され貸付債権である(住 宅ローン債権のように,分散効いた多数債務者向けの債権集合を,小口債権プール (あるいは大数プール)という).

 民間金融機関住宅ローン債権1999年にはじめて証券化されて以来,公的機関であ る住宅金融公庫含め,複数RMBS発行されている.特に,住宅金融公庫はこれま で継続してRMBS発行しており,RMBS市場規模の拡大大きく寄与している.

 住宅ローン借り手は,返済期限前に任意にローン返済できる.ローン期限前返 済されると,貸し手返済され資金の再運用リスク(これをプリペイメントリスクと いう)を抱えることになる.貸し手は,住宅ローン債権を証券化することにより,この リスク投資家転嫁することができる.逆に,RMBS投資家は,期限弁済存在 により,RMBS想定償還年限伸縮するというリスク抱えることになる.期限前弁 済は,借り換え時の金利水準景況感などの要因左右される考えられるので,投資 家は,これらの要因から期限弁済動向推定するプリベイメントモデルをつくって プリベイメントリスクの定量評価行っている.

 住宅ローン貸付期間は2030年である場合多く,金融期間の負債のデュレーショ ンと比較すると非常に長い.これは,当該金融機関ALMリスク抱えていることに ほかならない.住宅ローン債権の証券化は,ALMリスク軽減化の有効な手段としても 活用されている.


■ 不動産担保証券

 金銭債権ではなく,実物資産である不動産裏付けしたものが,不動産担保証券 である.対象となる不動産種類としては,オフイスビル,商業用施設,外国人向け高級 賃貸マンシヨン,ホテルなどがあげられる.

 金銭債権の証券化の仕組み同様に,不動産SPVへの譲渡仕組みとられるが, 移転に伴い発生する不動産取得税登録免許税などの税コスト削減のため,いったん信 託設定をしたうえで,その信託受益権SPC譲渡されることが多い.

 不動産担保証券信用力は,裏付けとなつている不動産キャッシュフロー創出力で ある.不動産担保証券クーポン原資は,当該不動産からの賃貸料収入であるから, 証券化の対象としては,テナントづきがよく,安定した賃貸料収入期待できる良質な 不動産であることが求められる.不動産担保証券元本原資は,当該不動産売却し て得る代金か,もしくはその不動産裏付けとして新たに発行する不動産担保証券の発 行代金あるから,やはり,証券化の対象としては,将来的価値増大期待できる 良質な不動産であることが望ましい.


参考文献

[1] 大垣尚司(1997), ストラクチャード・ファイナンス入門, 日本経済新聞社.

[2] 不動産証券化協会(2003), 不動産証券化ハンドブック, 不動産証券化協会.


証券化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/06 04:32 UTC 版)

証券化(しょうけんか、: Securitization)とは、帰属主体(オリジネーター)から原資産を特別目的事業体(SPV)等へ移転させ、原資産から生じるキャッシュフローを裏づけとした、資産担保証券などの流動性が高い金融商品を発行する技術である[1][注釈 1]

概要

証券化では、売却した資産を、関連会社にとどめるのではなく、その会社から完全に切り離すことが重要となる。またその背景には、この資産売却についてこれまでと同様の財務内容の急迫を脱する一時的な方策としての側面だけでなく、

  1. 戦略的に財務内容のスリム化、つまりより小さな資産での効率的経営を追求する側面が強調されること、
  2. 資産保有がリスクアセットの保有であることが注目され、リスクアセットを売却によりバランスシートから外すことの積極的意義が強調されるようになっていること
など、企業の財務戦略としての継続的・積極的手法としての側面が強調されていることを挙げることができる。これらの現代的な特徴は、オフバランス化の効果と呼ばれることがある。

これは逆に考えると資産を第三者である投資家に売却することが可能になったということであり、そこにはそれを可能にした証券化の技術といわれる問題がある。またこのような資産を購入する投資家がいかに形成されたかという問題も検討されなければならない。

証券化の法律的技術としては、原資産を売却したオリジネーターが倒産した場合の影響をスキームに影響させないため、オリジネーターと証券化の母体となる導管(SPV)との間の倒産隔離(bankruptcy remoteness)をいかに確立するかが重要である。

また証券化では証券化で生み出された資産が、原資産に比べてより安全な資産に変換されていることも重要である。

証券化の実施にあたっては、各当事者の利益を確保するため厳格な手続が履践される。原資産は必ず厳しいデュー・ディリジェンスを受けてから倒産隔離のため真正売買される。その売買にも法律的、会計的見解が必要とされる。それにより証券には格付け機関による信用格付けが付与される。また、証券の信用補完のために損害保険会社等による保険(債務保証)が掛けられる場合もある[3]

投資家保護措置

証券化するとき投資家保護のため、オリジネーターが対象資産を処分することができないように、対象資産をオリジネーターおよびその利害関係者から分離する必要がある。そのため、オリジネーターが自ら証券を発行するのではなく、オリジネーターから資産を譲り受けた上でSPVが証券を発行する。この仕組みを倒産隔離という[注釈 2]

この倒産隔離を法的にどのように実現すべきかについては諸説があるが[注釈 3]、原資産の売却が真正売買(true sales)となっているかが問題だといえる。

真正売買の要件としては、
  1. 当事者の意思、
  2. 第三者対抗要件の具備、
  3. 価格の適正性、
  4. 会計上のオフバランス
などが挙げられる。

具体的な手法としては以下のようなものが用いられる[4]

SPV方式
証券化対象資産を保有することのみを目的とする法人(Special Purpose VehicleSpecial Purpose Companyとも。)を設立し、その出資者に議決権を与えないことで、対象資産とオリジネーターを切り離す。これをより徹底するため、出資者をケイマン諸島などに設立する持株会社とすることもある[注釈 4]
信託方式
オリジネータが信託委託者、信託免許をもつ信託会社または銀行が受託者として、委託者が当該金融資産を受託者に譲渡し、それが信託勘定に組み入れられる。信託勘定に設定された譲渡資産は、受託者自体の破産から法律により分離されなければならないとされている。ただし、破産してやっと分離されるのであり、受託資産は受託者が運用できる。この点で信託方式は倒産隔離として不完全であり、発行債券の価値が損なわれない場合であっても運用によっては投資家と利益相反する可能性が残る。信託受益権は、受託者が発行し、紙の形で保有される。
信託業法の2004年12月改正以降は、節税効果も期待されている。
知的財産権の証券化では信託会社が自ら知的財産の活用等を図ることもできる。

その他、組合を用いる方法もあるが割愛する。

資産を譲り受けたSPVが破綻することを防ぐため、SPVには証券発行以外の役割を与えないことも倒産隔離の一手法として用いられている[注釈 5]

リスクを証券化した場合は原資産が現物の場合と異なり、特別目的事業体が債務を負うため、倒産隔離は不完全なものとなる[4][注釈 6]。また、信託方式で利益相反を防ぐために国債へ投資をしていた場合は元本割れのときに原資産を目減りさせることとなる。

優先劣後構造

同一の原資産を優先劣後構造に証券化すると、優先度の高い順に、シニア債、メザニン債、ジュニア債が発行される[5]。原資産の価値が目減りしたとき、まず株式から損害を受ける。目減りがさらに多いときは、ジュニア債、メザニン債、シニア債にも順に被害が出る。ただし、この債権部分は先取特権との優先関係が問題となる。証券化の優先劣後構造は、企業金融だけでなく、一般の資産担保証券および信用リスク担保証券の発行に加え、不動産証券化でも採用されている[6]

これは証券化の経済的な技術といえるだろうが、具体的には、まず購入する債権が選別されていること、次に債権が集合されて破綻割合が統計的に予測されるものに性格を変えていることが注目される。そして、それに加えて内部的な信用補完(internal credit enhancement)として、超過担保(資産から生み出される収益の一部を支払いの担保として留保すること)などが、また外部的な信用補完(external credit enhancement)としては、損害保険会社による支払い保証や、格付け機関による信用格付けなどが加わり、証券化資産の安全性が高められている。そして債券を信用リスクの違いによって階層化し、投資家のリスク許容力に応じた債券が用意されていること(優先劣後構造という)も重要で、内部的信用補完ともいえる優先劣後構造の点も外部の投資家からみれば、安全性を高める仕組みである。

この優先劣後構造における劣後部分、つまりエクイティにあたる部分のリスクを誰が負担するか、誰が保有するかは証券化で注目される点である。このリスクをオリジネーター、つまり資産証券化を仕組む側が保有したままでは、証券化は徹底されていないともいえる。しかしリスクに見合った収益が設定されることで(これを証券の構造を階層化するという)、このリスクの高い部分についてもリスク負担を合理的に判断した第三者による投資が成立する(つまりリスクの第三者への転嫁は可能)と考えられる。

この場合のリスクはクレジットリスクである。このリスクをさらに別の投資家に転嫁する仕組みとしてクレジット・デフォルト・スワップ(CDS (credit default swap))がある。これはデフォルト時の債務支払いと、プレミアムとを交換するもので、支払い保証保険とよく似ている。問題は、CDSのリスクをいかに軽減するか、予測可能なものに変化させてゆくかである。そこで登場したのがSCDO(synthetic collateralised obligation)合成債務証券(あるいは合成担保債務証券)と呼ばれる証券である。CDSで払い込まれたプレミアムは、実際に偶発債務が生ずるまでは、安全な適格資産で運用され、偶発債務発生(イベントリスク)に備えるのだが、この仕掛けそのものを証券化し、第三者による投資を可能にする(つまりリスクを社会的に分散する)仕組みが合成債務証券なのである。

劣後部分はそのリスクの高さゆえに市場で余剰となるようにも思われるが、実際には市場構造が一定の歯止めをかけている。オリジネーターとしての銀行は、BIS規制対策として証券化を利用している。バランスシートで保有している貸出債券を証券化するとき、劣後部分はオリジネーターである銀行が保有するのが普通である。また、自己資本のさらなる活用と株主資本利益率向上を目的としても、銀行は証券化を活用している[4]

歴史

民間MBSの始まり

1968年、ファニー・メイからジニー・メイが分離した。ジニー・メイは1970年に、民間金融機関から買い取った連邦住宅局(アメリカ合衆国の経済史#世界恐慌: 1929年-1941年下部参照)保証付のモーゲージのプールを裏づけとして不動産担保証券(MBS)を発行した。1971年からはフレディ・マックが連邦住宅局等に保証されないモーゲージを買い取りMBSを発行するようになった。1977年、ソロモン・ブラザーズで働くジニー・メイ債トレーダーの考案で、グランター・トラスト(委託者課税信託)を特別目的事業体に用いた民間MBSが発行されたが、普及には課題があった。第一には、各州の証券法(青空法)に規定がないという問題があり、また、機関投資家側の会計処理が独特の入金パターンについていけないという技術的問題もあった。原資産のモーゲージが金利低下局面などに期限前弁済されると、MBSも期限前償還されたのである。そこでソロモン・ブラザーズは、オリジネータである貯蓄貸付組合との関係構築や、投資家へ情報を提供できる体制整備などを図った[1]

アービトラージ(裁定取引)目的での利用

その後、世界的なドル不足が慢性化した。このため世界で証券が氾濫した。国際機関や多国籍企業の金融ではユーロ市場が盛況となってゆくが、住宅ローンや公社債は地場金融を利用するのが普通であった。後者はユーロ市場と比べて一件の起債規模が小さかったので、それらの合理化は証券化の役割であった。これも銀行離れと関係が深い。

それはたとえば、既存のパススルーMBSを束ねて償還期間の異なる複数のクラスの債権に組み替えたものとか、雑多な債権を買い集めて優先劣後構造に組み替えたものである。後者の典型がジャンク債を束ねたものである。仕入れた証券の利回りよりも、組み替えて作り上げた証券化商品の金利払いが少なくて済むようにした。もう一つのパターンは、オリジネーターとは関係のない外部の不良債権ファンド等が、銀行の不良債権処理に参加して、買い集めた不良債権を証券化する場合である[4]

原資産のリスクは隠され不相応に高格付けされた。1985年にはブルーチップが大量に格下げされ、堕天使と呼ばれた。

MBSと信用創造

セカンダリー・バンキング商戦においては、現金の絶対量が必要とされた。USドル高とニクソン・ショックが起こり、管理通貨制度信用創造の道を拡げた。住宅ローンをMBSに証券化するとき、実は信用創造が行われていた。この場合で、OTDという規制の緩い方法が存在した。現金の絶対量は確保されたが、しかしアメリカ合衆国で流通する交換手段に現金の占める割合は極端に落ち込んだ。世界金融危機の序盤でOTDを利用した副作用がおこって、銀行で縮小したはずのバランスシートが膨れて不良債権が累積した。

証券化の種類

証券化の種類(総論)

証券化のスキームには色々なものがあるが、特別目的会社(SPC Special Purpose Companies)が資産の買い手になって、資産担保証券(ABS Asset Backed Securities)を発行するSPC方式や、資産を信託形式で信託銀行が預り小口化した受益権証券を発行する信託方式などが代表的な手法である。証券化の対象となる資産はリースやクレジットの債権、銀行の貸出債権、不動産、さらには事業収入など様々である。

財務的に困窮した企業がその資産、それも売却を予定していなかった資産を売却して当座の運転資金を確保することはかなり前から見られる。そうした以前から見られる売却と今日の証券化とは幾つかの違いがある。かつての資産売却では、売却は見かけだけで購入者は、その企業の関連会社などのことが多かった。売却の目的は期末の決算の数値を良くするためということがあった。昔からあるこうした手法の一つは セール・アンド・リースバック(sale and leaseback)と呼ばれるもので、売却した資産を相手方から借りて使用を続けるものである。その後、会社の財務内容が改善されたとき、その資産を買い戻すことも見られた。

原資産の原因を相対取引に限らなければ、投資信託も証券化である[4]

また、不動産を原資産とする不動産証券化[注釈 7]住宅ローンを原資産として発行するRMBS、債権を原資産として発行する債務担保証券といった、原資産によるバリエーションもある。

債務担保証券の典型はシンジケートローンを原資産として発行するユーロ債である[7]

事業も原資産とすることができる(Whole Business Securitization)[注釈 8]

仕組債の発行も証券化にふくめるときがある[4][注釈 9]

広義の証券化は金融市場の重心が直接金融に移ってゆくことをさすので、この場合はいわゆる銀行離れ英語版: Disintermediation)とほぼ同義である[8]

アセット・ファイナンス

アセット・ファイナンスとは、原資産の信用力を活用して、間接金融より低コストでの資金調達を実現する金融技術である。

アセットとくに事業資産を活用して、資金を調達することも証券化と密接につながっている。特定事業を会社の資産に見立てると、その事業から生み出される将来の収益を担保に貸付を行うプロジェクト・ファイナンスも、証券化の一つの形態とみることができる。

アセット・ファイナンスの一般的なストラクチャーは以下のとおりである。

証券会社等のアレンジャーが立案した証券化の仕組みに基づいて、原所有者であるオリジネーターの原資産を、信託会社信託銀行ないしは特別目的会社などのSPVに移転し、当該SPVを発行会社として証券化証券を発行し、当該証券をアレンジャーが引き受け・販売し、販売代金をオリジネーターに引き渡す。原資産から得られるキャッシュ・フローをSPVが委託したサービサーが回収し、証券化証券の弁済に充当するものである。オリジネーターは原資産を処分して対価を得ていることになる[3]

リスクの証券化

クレジットデリバティブを組み込んだ証券発行は、クレジットデリバティブを裏づけとした証券化である。リスクだけを切り離して移転させる取引である。オリジネーターである銀行は、自行ポートフォリオで信用リスクをはずしたい債権についてクレジット・デフォルト・スワップ契約を特別目的事業体との間で結ぶ。契約内容は、対象債権が不履行となった場合、損失を特別目的事業体から補償してもらうが、その代わりオリジネーターは特別目的事業体に契約期間中プロテクション料を支払うというものである。機関投資家は、特にカバーしたいリスクを選んで防御することもできるのである。特別目的事業体は投資家向けに債券を発行するが、補償支払に備えて、債券の売り上げは国債等で運用される。投資家に対する金利の支払は、オリジネーターからのプロテクション料と国債の利子で行われる。対象債権が不履行となって補償金を支払った場合、発行債権全体としての元本償還は減額する。これを見越した投資ができるように、やはり債権は優先劣後構造をとることが多い[4]

OTH金融

伝統的なモーゲージ金融を指して、OTH(Originate to hold)と呼ぶことがある。この性質について、かつては鋳貨融通のイメージにとらわれた金融仲介説が主張されていた。しかし管理通貨制度が通用する現在では、モーゲージ貸出をすると銀行の帳簿にモーゲージ債権と預金債務が生まれると考える(信用創造説)。信用創造によって銀行は三つの変換を遂げる。銀行は貸付債権と預金債務を両建てで創出し、信用力の低い借り手の債務を自行の信用力の高い債務へ変換する(信用変換)。銀行は長期債権と短期債務を両建てで創出し、借り手の長期債務を銀行の短期債務に変換する(満期変換)。銀行は流動性の低い債権と流動性の高い債務を両建てで創出し、流動性の低い借り手の債務を流動性の高い銀行の債務に変換する(流動性変換)。信用変換と流動性変換については、連邦預金保険公社連邦準備制度がそれぞれの安全装置となっている。満期変換に対する保護はとりわけ厚く、ファニー・メイがモーゲージを買い支えたり、エージェンシー(政府=ジニー・メイ)と政府支援機関(GSEs)がモーゲージを証券化したりした(これは次節であつかうOTD金融の一つである)。邪魔といえば支払準備率だけであった[9]

OTD金融

現代型のモーゲージ金融を指して、OTD(Originate to distribute)と呼ぶことがある。証券化ありきを表現したネーミングであるが、モーゲージをMBSへ証券化する金融である。OTDの特徴は、貸出債権の証券化と、預金通貨の変質(MMFとかレポ債権)である。前者の動機は、金利急騰時の逆ザヤ防止と、1991年導入された自己資本比率規制に対応するためのバランスシート縮小である。預金通貨の変質には預金者、特に機関投資家の意向が働いたとみられる[9]

OTD金融には二種類ある。エージェンシーと政府支援機関が行うものと、民間で行うものである。民間の場合、金融持株会社を利用するか、ブラックロックなどのシャドー・バンキング・システムに頼るかを選ぶ[9]

レポ債権と資産担保コマーシャルペーパー

政府系OTD

エージェンシーと政府支援機関が行うOTDは1970年代に始まり、1980年代から本格化した。仕組みを順に追ってみる。前節のごとく、モーゲージ貸出をすると銀行の帳簿にモーゲージ債権と預金債務が生まれる。銀行の預金債務は、借り手の預金通貨であるが、すぐに物件の代金として支払われて売り手の預金通貨となる。売り手は預金通貨をMMF等で運用する。ここから4通りに分かれる。①連邦住宅貸付銀行がオリジネーターの銀行からモーゲージ債権を購入する(三つの変換)。②GSEsが購入し、エージェンシーMBSを発行する。③投資銀行がレポや資産担保コマーシャルペーパー(以下ABCP)で資金調達し、MBSを在庫保有する。④GSEsがモーゲージ債権とMBSの在庫を資産側に保有し、エージェンシー債・割引手形を発行する(三変換)。①から④いずれの場合も、銀行はモーゲージを売却しバランスシートを相殺・消滅させる。こうして銀行は準備金と自己資本を積むことなく信用創造ができる。1980年代後半以降、①から④の手法が広まった。これらを可能とするためにMMF等の機関投資家は、エージェンシー債・手形割引、エージェンシーMBS、ABCPへ投資したり、レポ融資を行ったりしている(三変換)[9]

持株会社OTD

今度は金融持株会社を利用するOTDの仕組みをみてみよう。前節のごとく、モーゲージ貸出をすると銀行の帳簿にモーゲージ債権と預金債務が生まれる。銀行の預金債務は、売り手の預金通貨となり、MMF等で運用される。この後3通りに分かれる。①証券子会社の管理する導管体がABCPを発行し、モーゲージ債権の購入と在庫保管を行う。②証券子会社がモーゲージ債権をSPV勘定へ移転し、ABCPやレポ債務で資金調達する。③証券子会社がSPV勘定でモーゲージを原資産にMBSを発行する。金融持株会社傘下の投資部門(SIV)やヘッジファンドはABCP発行、レポ債務等で資金調達し、MBSを保有する。MMF等の機関投資家はABCP、レポ債務等の債券を保有する。①から③いずれの場合も銀行子会社のバランスシートは相殺される。①から③で発行されたABCPは、銀行子会社が割引に対応する。これは、たとえばABCPの借換ができなくなると銀行子会社のバランスシートが復活するということである。ユニバーサル・バンクの弱点は、世界金融危機で露呈した[9]

機関型OTD

シャドー・バンキング・システムによるOTDは三類型が存する。しかしここでは「多角的ビジネスを行う独立系投資銀行による証券化」だけにしぼって仕組みを書くことにする。まず、投資銀行の金融子会社がコマーシャルペーパーや借入金等で資金を調達し、モーゲージ貸付をする。金融持株会社傘下のマルチセラー導管体がABCPを発行してモーゲージ債権を在庫保有する。ABCPは金融持株会社傘下の銀行子会社がいつでも割引を受け付ける。そのモーゲージ債権を証券子会社は購入し、SPV勘定で保有して、それを原資産にMBSを組成・発行する。資産担保証券や債務担保証券の発行も行う。導管体や証券子会社取引勘定などがABCP発行とレポ債務によって資産担保証券を在庫保有する。資産担保証券は金融持株会社傘下の銀行子会社がいつでも売りつけに応じる。MMFがABCPやレポ債権を保有する。内外信用ヘッジファンド、自己勘定取引デスクが、レポで資金を調達、資産担保証券・債務担保証券を保有する。ABCP市場で流動性が失われ、銀行子会社で買うことになると、銀行子会社の信用創造が失われ、銀行子会社のバランスシートが拡大する。この仕組みを信用創造の観点から整理する[9]

  • 独立系投資銀行は商業銀行子会社をもたないので、モーゲージ貸付のとき預金通貨の創造は行われない。
  • モーゲージ債権を在庫保有するとき導管体が発行するABCPは銀行の偶発債務を拡大させる。
  • 投資銀行の証券化を支えるのは金融持株会社傘下の銀行子会社である[注釈 10]
  • 投資銀行は、傘下・非傘下のヘッジファンドに対して資産/債務担保証券を担保にレポ貸付を行い、その一方で、MMFや金融持株会社傘下の銀行子会社からレポ借入を行っていた。借入が貸付を上回ったので、投資銀行はネットでレポ債務を負っていた。レポ市場で流動性が失われると、グループ内銀行子会社の信用創造に頼れなくなった。
  • 投資銀行には連邦準備制度からの借入経路が存在しない[9]

2007年6月12日、ベアー・スターンズ傘下の2つのヘッジファンドが計上した損失が報じられた。そのうちの1つは(High-Grade Structured Credit Strategies Enhanced Leverage Fund)、投資家の出資金6億ドルを元手に借入をして60億ドルの資産運用を行っていた。借入の形態は、保有する資産担保証券の買戻し条件付売却(レポ借入)であり、主要な債権者はメリルリンチシティグループJPモルガンなどであった。メリルリンチは担保にとっていた債務担保証券の1/4も売却できなかった[9]

2010年からボルカールールが自己勘定取引やヘッジファンドへの投資等を原則禁止した[注釈 11]

脚注

注釈

  1. ^ 資産担保証券は、たとえば社債特定社債株式、あるいは知的財産権を裏づけとしたボウイ債などをいう。有価証券または動産担保融資の発行による資産流動化は、狭義のアセット・ファイナンスである[2]REIT発行も狭義にあたるときがある。広義には、担保付借入れ・担保付社債から、保有資産の単純な切り売りまでをふくむ。
  2. ^ オリジネーターが破産しても、過去に譲渡した資産が破産財団に組み入れられることを防ぎ、破産債権者等の弁済の引き当てとされることを防ぐ仕組みである。
  3. ^ 2021年現在の日本においては、倒産隔離について正面から判示した裁判例は知られておらず、確たる基準がない状態である。
  4. ^ ケイマン持ち株会社の普通株は、英国法に基づく慈善信託において慈善団体が受益権という形で保有するが、議決権を行使しないことを遵守する。これにより、ケイマン持株会社には、議決権を行使する株主が存在しない。
  5. ^ 回収業務について、SPV自身が行うのではなく、委託を受けたサービサーが行うのはこのためである。
  6. ^ たとえばユーロ危機は致命的となった。機関投資家が諸国の財政に干渉する動機の一つである。
  7. ^ CMBSREITを発行。賃料収入など不動産から上がる収益を裏づけとする。いわゆる自社ビルの不動産証券化の場合には、証券化した対象資産をそのまま当該オリジネーターに対して賃貸することが多く行われる。
  8. ^ 事業者の営む特定の事業について、その将来キャッシュフローを見合いに証券化する資金調達手法。日本国内では、ソフトバンクモバイルの携帯電話事業をはじめ、ゴルフ場事業、レジャーホテル、インターネット事業等で証券化の事例があるが、件数は少ない。イギリス等海外の国々では、輸送、パブ水道事業等の各種事業で多数実施されている。
  9. ^ キャップつき変動利付債など。
  10. ^ 銀行子会社はABCPのため信用枠を用意し、投資銀行のレポ借入を信用創造で支えていた。
  11. ^ 財務省証券やエージェンシー債等の取得・処分・引受、マーケットメイク、ヘッジ業務は例外となった。

出典

  1. ^ a b 高橋正彦 2006, p. [要ページ番号].
  2. ^ 高橋正彦2009, p. 8.
  3. ^ a b 木下正俊 2004, p. [要ページ番号].
  4. ^ a b c d e f g 北原徹 2002, p. [要ページ番号].
  5. ^ 野澤澄人 2008, p. 152.
  6. ^ 伊藤信雄 2011, p. 54.
  7. ^ 楠本博 1987, p. 77.
  8. ^ 高橋正彦2009, p. 5.
  9. ^ a b c d e f g h 柴田徳太郎 2016, 第1章.

参考文献

学術論文

専門書籍

  • 高橋正彦『証券化の法と経済学』(増補新版)NTT出版、2009年12月。ISBN 9784757122529 
  • 木下正俊『私の「資産流動化」教室』西田書店、2004年。ISBN 4888663823 
  • 柴田徳太郎『世界経済危機とその後の世界』日本経済評論社、2016年。ISBN 978-4-8188-2412-6 

一般書籍

  • 楠本博『セキュリタイゼーション』有斐閣〈有斐閣新書〉、1987年7月。ISBN 9784641090811 
  • 野澤澄人『図解入門ビジネス最新投資銀行の基本と仕組みがよーくわかる本』秀和システム、2008年。ISBN 9784798018737 
  • 『図解入門ビジネス最新ハイブリッド証券の仕組みがよーくわかる本』秀和システム、2011年。ISBN 9784798028415 

関連文献

  • 大垣尚司『ストラクチャード・ファイナンス入門』日本経済新聞社, 1997. ISBN 978-4532131425
  • 湯野勉『金融の証券化』晃洋書房, 1999.
  • 岡内幸策『証券化入門』日本経済新聞社, 1999.
  • 福光寛「資産証券化の意義について」『金融構造研究』21, May 1999.
  • 福光寛「新たな段階に入った日本の資産証券化」『成城大学経済研究』145, July 1999.
  • タクトコンサルティングほか『守りから攻めへの企業再構築実務Q&A』ぎょうせい, 2000.
  • 山田雅章「わが国における証券化の進展と展望」『証券アナリストジャーナル』39(2), Feb.2001.
  • 長谷川英司ほか『バランスシート効率化戦略』中央経済社, 2002.
  • 無署名「問い直されるオフバランスシートの経済効果」『金融財政事情』2499, April 1, 2002.
  • 北原徹「ストラクチュアードファイナンスと証券化の展開」『立教経済学研究』56(1), June 2002.
  • 笠木祥人「資産証券化の意義及び課題」『龍谷ビジネスレビュー』4, 2003.
  • 松澤和彦「資産証券化による減損会計への積極対応」『旬刊経理情報』1044, Mar.10, 2004.
  • 大垣尚司『金融アンバンドリング戦略』日本経済新聞社, 2004.
  • 大垣尚司「証券化市場の現状と今後の課題(1)〜(4)」『住宅金融月報』632~635, Sept.2004~Dec.2004.

証券化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 03:19 UTC 版)

世界金融危機 (2007年-2010年)」の記事における「証券化」の解説

1970年代アメリカから、住宅ローンの証券化が始まった。これは地域金融弱点である各地域リスクを補うために考えられ国策会社である政府支援機関(GSE)によって進められた。地方銀行地域リスクから守るために住宅ローンを証券化してGSEに売った。GSEは証券化された住宅ローンを買うために、プールし住宅ローン担保にして債券売った。これが不動産担保証券MBS)であり、GSEに多大な利益もたらした。GSEの発行ではないプライベート・ラベルMBS1990年代急増し、質の低いローンを証券化する方法としてトランチング(英語版)が考案された。トランチングとは、住宅ローン細分化し、リスク異な債券分けてローン対す優先順位定め方法を指す。トランチングが繰り返され大量MBS作られ安全な証券として投資家販売された。投資家リスクが低いと考え格付け機関保証していたが、実際には質が低くリスクの高い住宅ローンから作られていた。

※この「証券化」の解説は、「世界金融危機 (2007年-2010年)」の解説の一部です。
「証券化」を含む「世界金融危機 (2007年-2010年)」の記事については、「世界金融危機 (2007年-2010年)」の概要を参照ください。

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