特別目的事業体とは? わかりやすく解説

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とくべつもくてき‐じぎょうたい〔‐ジゲフタイ〕【特別目的事業体】


特別目的事業体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/05 14:25 UTC 版)

特別目的事業体(とくべつもくてきじぎょうたい、英:special-purpose vehicle, SPV)は、証券化プロジェクト・ファイナンスを目的とする事業。特別目的事業体やSPE (special-purpose entity) とも呼ばれる。法人格を有するものは特別目的会社(とくべつもくてきがいしゃ、英:special-purpose company, SPC)と呼ばれ、国際投信を営んだり、大口ユーロ債を発行したりする。SPCはオリジネーター等の連結対象外にする、あるいはオフバランス化する手段となる。たとえばエンロンの粉飾決算やライブドア事件、そして世界金融危機までに繰り返されたOTD金融である。シャドー・バンキング・システムは、特別目的事業体にきわめて強く依拠している[1]

主なSPV

信託型のSPV

組合型のSPV

法人格のあるSPV (SPC)

譲り受け所有する資産の種類

SPVが所有する資産は、原所有者であるオリジネーターの倒産の影響を受けないようにする(譲渡資産の真正売買)。これは信用格付けを取得する際においては かなり重要な要素である。また、これによって対象資産の収益のみに限定して投資を行うため、オリジネーターにとってはノンリコースによる資金調達が可能になる。

資金の調達方法

  • 会社を用いた場合の資金調達方法
  • 信託を用いた場合の資金調達方法
    • 受益権の売却による方法
    • 信託の受益権を担保とした社債の発行

導管体としての限界

SPVは単なる資金調達のための器(conduit)でしかないため、譲受資産から得られる収益から調達金利や必要なコスト等を差し引いて残った利益に対して、課税されずに投資家、あるいはオリジネーター(資産原所有者)へ還元する必要がある。そこで、たとえば、常に純利益を0とする、もしくは初年度に大幅な欠損金を計上し、それ以降の期においてはその欠損金を利益で徐々に埋める。

純利益を常に0とする方法では、会社の場合は匿名組合を用いて、利益を匿名組合配当として還元する方法や、特定目的会社の場合は税制優遇を利用して、社員への配当を利益の90%以上行うことで実現する方法、信託を用いる場合は常に信託会計上のP/L(損益計算書)は0になるようになっているためにこれを実現することが出来る。

SPVは単なる器に過ぎないため、例えばSPVが金銭債権をオリジネーターから譲り受けた場合であっても、SPV自体が元利金の回収を行うことは当然不可能である。そのため、通常SPVとオリジネーター間にはサービシング契約を締結し、オリジネーターが当該債権の回収業務をSPVに代わって行うことが通例となっている(債権回収会社となる)。その際、オリジネーター兼サービサーに対してはSPVからサービシング報酬を支払う事が一般的である。

しかし、サービサーがオリジネーターであると言うことは、SPVに対してオリジネーターから譲渡した資産であっても、当該資産がオリジネーターの倒産リスクに晒されることとなる。これを排除するため、通常はSPVは1人(=1社)以上のバックアップサービサーを準備することが一般的である。これにより、オリジネーターが破綻した場合であっても代わりにバックアップサービサーがサービシングを行う事でSPVが保有する資産を滞りなく回収することが出来る。ただし、その場合でも資産の劣化は否めない。

脚注

  1. ^ フランソワ・シェネ 『不当な債務 いかに金融権力が、負債によって世界を支配しているか?』 作品社 2017年 154頁

関連項目


特別目的事業体

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 21:34 UTC 版)

デリバティブ」の記事における「特別目的事業体」の解説

レバレッジ効果有するデリバティブは、会計基準緩さ良いことに、たびたび投機対象となり多額損失生じたシティコープ栄え一方でカリフォルニア州オレンジ郡などの運用セクションデリバティブによる資産運用失敗したことにより、その地方行政存続大きな影響与えたイギリスでは特別目的事業体を駆るクーツ商会(現RBS出身ディーラーデリバティブ投機ベアリングス銀行倒産させた。これらを反省して多く会社は、このようなデリバティブへの投資に対してリスクモニタリングする仕組み導入した銀行業デリバティブ投資へは、BIS規制金融検査マニュアル等が自主的な危険管理促した。 しかし特別目的事業体というのは、エンロン問題一環でもあったが、パナマ文書機関投資家金づるとなっている実態が一層あきらかとなったものであり、モーゲージ証券化MBS量産による信用創造)も担っていたので、これに関わる規制は大分手心加えられた。世界金融危機は起こるべくして起こった流動性乏しデリバティブ商品相対型の保証契約CDSなど)はマーケットメイカーから見放された。AIG連邦準備制度が尻を拭いた契約相手にかかわる信用リスクカウンターパーティリスク)が適切に記述できないといった問題点は、1980年代から何も解決されていない

※この「特別目的事業体」の解説は、「デリバティブ」の解説の一部です。
「特別目的事業体」を含む「デリバティブ」の記事については、「デリバティブ」の概要を参照ください。

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