narrative
「narrative」とは、臨床心理・医療・ビジネス・教育分野などで頻度高く用いられる物語・語り・話術のことを意味する英語表現。
「narrative」とは・「narrative」の意味
「narrative」とは、「物語」「語り」「話術」などを意味する英単語で、そもそも文芸理論上の用語として「story」などと対比して用いられてきた言葉である。名詞・形容詞としての用法があり、名詞では「物語」「談話」「話術」、形容詞では「物語風の」といった意味になる。言葉の覚え方としては、「ナレーション・ナレーター」など馴染みのある言葉と同類であることから、意味的に関連付けて記憶する覚え方と、「彼の話術なら(narra)手振(tive)りも交えた一級品だと誰もが認めるだろう」などと語呂合わせで覚える方法がある。「narrative」は、文芸理論のほかに、臨床心理・医療・ビジネス・教育分野などでも用いられる頻度の高い言葉である。根底には「ナラティヴアプローチ」という考え方がある。もともと臨床心理の分野から発生した概念で、心理的な不調の原因を専門家の所見で解明するのではなく、患者自らが語ることによって、とらわれた思い込みを自覚させ、思い違いを修正していくことで改善を図っていこうというものである。患者を主人公としたこの治療の試みはビジネスの世界にも応用され、商品やサービスの提供者がメリットを押し付けるのではなく、ユーザーが自発的に自らのニーズを見出していくようなマーケティング手法が展開されていく中で、一定の成果が見いだされ始めている。
「narrative」の発音・読み方
「narrative」の発音記号は「nǽrətiv」となり、日本語読み風にカタカナ表記した場合は「ナラティヴ」と読む。「nǽ」は、舌先を前歯の裏の歯茎につけて「ヌ」と鼻に抜けて発音し、「ア」と「エ」の中間の発声に続けて「ヌァ」というイメージ、「rə」は口のどこにも触れず「ル」と発声し曖昧に「ア」と続けて「ルァ」というイメージ、「ti」は「トゥ」と破裂させる発音で「エ」と「イ」の中間の発声に続けて「ティ」のイメージ、「v」は唇を軽く嚙んで「ヴ」と息を出す。「narrative」の語源・由来
「narrative」の語源は、「語られた」という意味を持つ「narratus」に「~の」を意味する「-ivus」が付随したラテン語である。「読み手」を意味する「narrator(ナレーター)」や「読み上げ」を意味する「narration(ナレーション)」と同じ語源を持つ言葉となる。「narrative」と「story」の違い
「narrative」と「story」の違いとは、物語を語る主体の違いである。すなわち「story」では、物語を語る主体が読者には顔の見えない作者であり、主人公をはじめとするすべての登場人物はプロットに動かされ、プロットの展開によってドラマが進んで完結する。一方「narrative」では、ドラマを展開していくのは顔の見える語り手である。ドラマは語り手によって常に動き続け、必ずしも完結している必要はない。また、「narrative」は話すことによって記される物語であるのに対して、「story」は書くことで記録される物語であるという違いもある。「narrative」を含む英熟語・英語表現
「narrative」は「声に出された話し言葉の物語」という意味を持つ。この特徴を端的に言い表した英語表現に「narrative literature(説話文学)」がある。説話とは、古くから伝承されてきた物語のことである。文字がない時代に物語は口伝えにより代々語り継がれてきた。それが「narrative literature」となる。語ることで伝えられる事象は多岐にわたる。「Narrative is everywhere. News, gossip, dreams, fantasies, reports, confessions, and so on.(物語はあらゆるところに存在する。ニュース、ゴシップ、夢、空想、レポート、告白などなどだ)」も「narrative」の語義を的確に示した英語表現である。「narrative」に関連する用語の解説
「narrative essay」とは
「narrative essay」とは、「語り型エッセイ」といわれるもので、語り手が経験した事実に関して、その出来事をありのままに書く一方で、それぞれのトピックに関してどのように感じたのか、印象や感想などを交えて書き綴る随筆スタイルのことである。
「dominant narrative」とは
「dominant narrative」とは、「支配的な物語」という意味。悩みを持つ人がとらわれているネガティブな思い込みや勘違いをさす。
「narrated」とは
「narrated」とは、「物語る」「順序だてて話す」という意味の「narrate」の過去形、あるいは過去分詞形であり、「語られた」「語られたもの」という意味である。
「narrative review」とは
「narrative review」とは、あるトピックに関して、それまでに発表された知見や研究をもとに当該トピックを説明し直すという意味で、文献の集め方も含め語り手の主観が混じる点に特徴がある考察方法である。
「narrative」の使い方・例文
「narrative」の使い方・例文としては、「His narrative was interesting.(彼の物語はおもしろかった)」、「It was his lengthy narrative that bored me to death.(私を死ぬほど退屈させたのは、彼の語る長い話だった)」、「She gave a narrative of her strange experience.(彼女は自分のおかしな経験を語った)」などを挙げることができる。ナラティブ
「ナラティブ」とは・「ナラティブ」の意味
「ナラティブ」とは、「物語」や「語ること」といった意味を持つ言葉であり、医療や看護、教育現場やビジネスシーンなど、幅広い場面で専門用語として使用される。そして、使用する場面によって、細かな意味合いが異なる。ナラティブと同じ「物語」という意味を持つ言葉としては、「ストーリー」が挙げられる。ストーリーは基本的に、あらかじめシナリオが用意されていて、様々な視点から描写される物語である。それに対してナラティブは、基本的には語り手が主人公となり、自らの体験を表現する物語という違いがある。他人ではなく、体験者本人が語ることを重視するのが、ナラティブである。医療の現場で使用されるナラティブは、主に患者が自らの治療の体験を記したものや、患者が体験談を語ることを指す。医療従事者がそれを聞き、患者の目線で治療内容を把握することが目的である。看護の現場では、ナラティブは、看護師を始めとした、実際に看護に携わった人の体験談を指す。自らの看護内容を、一人称の物語として制作し、客観的な視点で考えることが目的だ。また、看護師同士で、体験を共有するために、ナラティブを制作する場合もある。
ナラティブは、教育や社会福祉の現場でも、重要視されることが多い。教育現場では、教育をする側と教育を受ける側の両方で、ナラティブが行われる。そして、お互いの考えを明確にし、考え方の違いを減らすことが目的だ。また、教育をする側が、自らの教育内容を省みるために、ナラティブを行うこともある。社会福祉の現場では、福祉サービスを受ける側がナラティブを行うことが多い。自らの物語を作り、どういった福祉サービスを必要とするのかを明確にすることが主な目的である。
ビジネスシーンにおいて、ナラティブは、人と人の間に生まれる、考え方の違いを減らすために行われる。製品やサービスを提供する側が、顧客の希望や需要を把握するために、顧客のナラティブを参考にすることが多い。また、同じ組織内で、考え方の違いをなくすために、ナラティブを行う場合もある。
「ナラティブ」の語源・由来
「ナラティブ」の元になっているのは、英単語の「narrative」である。「声に出して読むこと」や、「話術」を指す単語であり、「物語」とは意味合いが若干異なる。しかし、他に適切な日本語訳が存在しないため、「物語」と訳されることがほとんどだ。「narrative」の語源は、「物語」や「声に出すこと」を意味するラテン語「narrativus」である。「ナラティブ」の熟語・言い回し
ガンダムナラティブとは
「ガンダムナラティブ」は、日本を代表するアニメである、ガンダムシリーズに含まれる作品タイトルだ。ナラティブの意味を「語り直す」と捉え、昭和の時代から続くシリーズの内容を、現代の視点から再解釈するという意味合いが込められている。
ナラティブアプローチとは
「ナラティブアプローチ」は、体験談を記したり語ったりするナラティブを用いて、問題を解決する手法のことである。医療や教育、ビジネスなど、あらゆる場面において、ナラティブを使って問題解決をしようとすることは、ひと通りナラティブアプローチと呼べる。
「ナラティブ」の使い方・例文
「ナラティブ」は、「物語」や「体験談」といった名詞で使用するのが基本である。「語ること」という意味で使用する場合、「ナラティブを行う」「ナラティブを実施する」といった表現になることが多い。また、「ナラティブを行うこと」を、「ナラティブアプローチ」に置き換えることも可能だ。医療の現場で使用するのであれば、「患者のナラティブを参考に、治療方針を決めることにする」「患者の意思が把握できないため、ナラティブの実施が必要である」といった使い方となる。看護の現場での使用方法は、「先輩看護師のナラティブは、私にとってとても参考になった」「看護師として、自らを客観視するため、定期的にナラティブを作成している」のような形だ。
教育現場であれば、「ナラティブによって、私の失敗の原因が明らかになった」「あの学校では、教職員を対象にしたナラティブアプローチを取り入れている」のように使用できる。福祉の現場だと、「この施設の利用者は、まずはナラティブを行うこととなっている」「カウンセリングの一環として、ナラティブを実施する」という風に使う。
ビジネスシーンであれば、「顧客のナラティブを参考にしたところ、自社の方針と市場の需要が大きくかけ離れていたことがわかった」「この事業は失敗できないため、マーケティングにナラティブを取り入れることにする」のような表現となる。
物語
(Narrative から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 01:20 UTC 版)
物語(ものがたり)とは、主に人や事件などの一部始終について散文あるいは韻文で語られたものや書かれたもののことを指す[1][2]。
- ^ 大辞泉【物語】
- ^ 大辞泉の説明では「作者の見聞や想像をもとに、人物・事件について語る形式で叙述した散文の文学作品。」
- ^ “storyの意味 - goo辞書 英和和英”. goo辞書. 2019年2月28日閲覧。
- ^ Yuan, Ye; Major-Girardin, Judy; Brown, Steven (2018-09). “Storytelling Is Intrinsically Mentalistic: A Functional Magnetic Resonance Imaging Study of Narrative Production across Modalities”. Journal of Cognitive Neuroscience 30 (9): 1298–1314. doi:10.1162/jocn_a_01294. ISSN 1530-8898. PMID 29916789 .
- ^ MD, Robert H. Shmerling (2021年6月17日). “Careful! Scary health news can be harmful to your health” (英語). Harvard Health. 2021年6月19日閲覧。
- 1 物語とは
- 2 物語の概要
- 3 ナラトロジーと物語
- 4 関連項目
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