組織率の低下
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 22:06 UTC 版)
労働組合推定組織率年組織率昭和44年 35.2% 昭和49年 33.9% 昭和54年 31.6% 昭和59年 29.1% 平成元年 25.9% 平成6年 24.1% 平成11年 22.2% 平成16年 19.2% 平成21年 18.5% 平成26年 17.5% 平成30年 17.0% 第二次世界大戦の直後は推定組織率も60%以上に達していたものの、昭和50年以降低下傾向にあり、2003年(平成15年)には推定組織率は19.6%となり初めて20%を切った。また、従業員1000人以上の大企業においては推定組織率は41.5%にも及ぶが、100人未満の小企業においては0.9%程度である。 組織率が低下した要因としては、まず企業別組合の組織からはみ出した非正規雇用の比率の増加が大きいとされる。日本の企業別組合は正社員のみで組織されてきた歴史的経緯から、リストラ、パートタイマー・アルバイト・派遣社員・有期契約社員の増加などによる雇用形態の多様化といった、21世紀における多くの労働者が実際に直面している問題への取り組みが大きく遅れることになった。現在、合同労働組合を中心に非正規労働者の組織化が進んでいて、非正規労働者側の権利意識の向上に努めている。また、サービス業など非正規労働者の割合が多い産業では企業内に非正規労働者のみで労働組合を結成する例、大都市圏では学生アルバイトの待遇改善を掲げる「学生ユニオン」などの例もある。2007年の春闘では、連合が非正規労働者の労働条件改善を要求として掲げ、同年、非正規雇用労働者の処遇改善、ネットワークづくりをすすめる「非正規労働センター」を開設した。また合同労働組合のこうした動きに対応して、従来の企業別労働組合においても非正規労働者を取り込む動き(オリエンタルランド等)も見られる。 一方で新興企業や業績が好調な企業は組合がなくてもよい程度の賃金と労働条件が既に与えられていることも挙げられる。また、多くの人材派遣業の会社には労働組合が無い。企業にとって万一の事態が起きた場合、その企業に組合が存在していると「迅速な」リストラ策が取りづらくなってしまう、という点が嫌気されて、投資家からは労働組合の存在について「株価にマイナス」と見る向きが多い。しかし同時に、健全な組合がないがゆえのリスクの側面をも見る必要がある。すなわち、経営者の行き過ぎを戒め、ブレーキをかけるものが実質的に不在になることで、経営危機へ追いやる可能性も高めるのである(創業経営者が労働組合に厳しい態度を取ってきたため労働組合が求めてきた違法・脱法行為の是正や労働環境の改善が果たされず、結果として経営危機に陥ったコムスンやゼンショーなどがこの事例である)。 また使用者側の法令違反が常態化したいわゆるブラック企業とされる会社では、労働組合の組織を試みた者に解雇や左遷などの報復を行うケースや、入社時に組合活動をしない旨を求められる(これらは不当労働行為にあたる)ケースもある。ブラック企業対策は近年大きな社会問題となっていて、社会全体で取り組むべき課題とされ、他人・他社の権利に関心を示してこなかった企業別組合の存在意義が試されている。 ほかにも、政府・地方公共団体などの社会保障制度が組合に取って代わってきたこと、組織率の高い製造業から組織率の低いサービス業へ産業構造がシフトしたこと、組合活動に時間を割くことが避けられるようになったこと、2000年代以前からの不況などにより企業の再構築が進められ、会社・部門の統廃合・人員整理などが進んで労働組合が解散していったこと、春闘などで組合が十分な成果を挙げられないため組合の存在意義を感じにくくなったこと、一部の労働組合が労働組合の本来の目的を忘れて専従職員らが政治活動に夢中になっている等が挙げられる。 かつては労働運動が盛んに行われ、高度成長期時代の日本における賃上げ闘争などはまさにその事例のひとつである。労働者の生活レベルが現在よりもはるかに貧しかった時代には、日本人の生活水準向上(ひいては日本経済の拡大)に大いに貢献したといえる。1960年の三井三池争議までは大争議が多かったが、やがて労使交渉の合意達成の手段を労使とも学習していき、1980年代に入ると労使交渉を労働委員会に頼らず労使自治のもと自主解決を目指す民間労使関係へと転換した。こうして労使交渉をストライキなしで解決する仕組みと慣行が確立した結果、2012年の労働委員会へのあっせん等の申請件数はピーク時の10分の1以下である209件となっている。 バブル崩壊以降、正社員の解雇に対しては、当然労働組合は反対の立場・抵抗の意思を見せるが、ストライキはほとんどなく、結果として団塊世代などの雇用を守る分、新卒採用を絞ることになり、若者の就職率悪化の要因の一つを作った、という意見がある。逆に、経営合理化に協力して、正規労働者の非正規労働者への置き換えに抵抗しなかったとして批判される場合もある。しかし雇用形態の多様化は経済団体(使用者側)の主導で行われており、労働組合に主要な原因があるかのような言説は、労働者側への責任転嫁の側面がある。
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