母子家庭の就労
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 00:52 UTC 版)
母子家庭の貧困について内閣府は、「税制・社会保障制度の影響による就業調整の影響もあり、女性は、相対的に低収入で不安定な非正規雇用につきやすい就業構造がある。さらに、このような若い時期からの働き方の積み重ねの結果として女性の年金水準等は低く、高齢期の経済的基盤が弱いという問題もある」とし、また、多くが母子家庭であるひとり親世帯の貧困率をみると、有業者であっても貧困率が高いという日本特有の状況があるとして、「この背景には、育児等との両立等の理由により、選べる職種が臨時・パート等非正規雇用が多くなりがちであることが影響していると考えられ、母子家庭の就労率は85%と高いにもかかわらず、約7割が年間就労収入200万円未満という状況がある(平成17年)」と 内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書(概要版)平成22年版で分析している。平成19年就業構造基本調査によると、母子家庭の就労している母は有業者507,300人(83.7%)、無業者98,800人(16.3%)となっている。東京都福祉保健局の「東京の子供と家庭」によると、母子家庭の常勤雇用率は平成9年度には71.4%、平成14年度で35.9%であり、平成19年度で32.8%(常勤30.9+役員等1.9%)、平成24年度で38.5%(常勤37.0+役員1.5%)、となっている。以前は行政に置いても給食調理などの現業公務員などの職に就けていた一人親世帯の母が、行政改革により非正規職員または民間委託によって現業職などの正規職員になることが難しい現状及び景気の悪化による正社員の非正規雇用置き換えなども影響している可能性もある。なお貧困の子どもの約2割から3割は独立または祖父母などと同居する母子世帯の子どもだとする推計値もある。 ところで、女性が結婚や出産を機に仕事を止める就業率のいわゆるM字カーブは近年、一見改善されているが、その内訳を配偶者・子どもの有無別にみると、主に20代後半から30代の無配偶(主に未婚者)の女性の増加によるものであり、現在も、出産1年前に有職であった女性の7割が出産半年後には無職となっていること等、出産した女性は離職してその後正規職に就けないという女性にまつわる労働スタイルの問題を抱えているうえ、同時に出産後にも保育所では定員数が増加しているにもかかわらず、景気の低迷を受けて就業を希望する母親が増加していること等により、2008年から待機児童数は増加に転じているという保育所問題も存在する。しかし母子家庭の就業状況については、諸外国と異なりパートタイム雇用と正規職員雇用のひとり親の貧困率の差が明らかになるデータがなく、国際的には就労状況による貧困率を比較できないという問題点がある。一方、国内の調査では、非正規就業者の割合は、2004年から2009年にかけてのいずれの調査年においても、シングルマザーの方が有配偶者の母よりも多い。全体として、相対的貧困率はシングルマザーが48.6%で有配偶者の母(13.7%)より高い。シングルマザーの相対的貧困率は非正規就業者のグループが52.9%、正規就業者のグループは33.6%、また無業者のグループが24.5%だった。次に、シングルマザー、有配偶者の母とも、就業形態によって相対的貧困率が異なっているが、いずれの就業形態で高いかは、シングルマザーと有配偶者の母とで異なっている。シングルマザーについては、相対的貧困率は非正規就業者(52.9%)が一番高い。一方、有配偶者の母における相対的貧困率は無業者(17.9%)が一番高い。有配偶者の母のグループの場合、非正規就業者の大多数は家計補助者として就業しているため、相対的貧困率が比較的低いと考えられる。非正規就業における相対的貧困率の問題を見る限り、シングルマザーのグループ(非正規就業者として就業している者の約5 割が貧困者)の方が、ワーキングプアの問題はより深刻であることがうかがえるとの分析がある。 就労状況については、「平成20年度大阪市ひとり親家庭等実態調査報告書」によると、母子家庭の就労時間は日6-8時間が56.7%と最多であるが、6時間未満も27.5%となっており、釧路市調査では、生活保護受給者と非受給者に分けて集計しているが、週30時間未満で働く母親は生活保護で2/3を占め、非生活保護で36.9%となっているとフルタイム就労者に比較して短時間勤務者も3、4割程度存在している。就労時間・日数については、全国の一般労働者が月平均19.9日、165.6時間に比して多くの母子家庭の雇用形態となっているパートタイム労働者では月15.3日、89.6時間となっている就労日数および勤務時間の短さの違いも給与所得の開きを生む要因の一つとなっている可能性がある。2001年日本労働研究機構が単発的に行った「母子世帯の母への就業支援に関する調査」の就労時間項目では、残業を含めた1週間の平均就業時間は「40-45時間未満」が29.7%と最も多く、次いで「45-50時間未満」(16.3%)、「35-40時間未満」(12.6%)とする結果より、釧路調査では就労時間は短いとしており、年次や地方によっても就労状況が異なってくる可能性がある。母子家庭等の自立支援策である「母子家庭及び寡婦自立促進計画」は、国の指針に従い各自治体で任意策定されており、定期的に進捗状況の確認も行われている。約10万人の児童扶養手当受給者を抱える大阪府では、様々な支援を行っているものの、平成17 - 23年度間では受給総数の増に対して、所得制限限度額が超えたことにより児童扶養手当の支給が全額停止となった者は7千人台で微増減した横ばいの推移が続いている。母親の就労別分析では、母親が 家族従業員、自営業(雇用人なし)の貧困率は男性と同様に突出して高く、母親が非正規雇用である場合に比べても二倍近くとなっている。利益の出ていない自営業者については、他への適正就労に転換させることが有益な可能性がある。非常勤等の被雇用者の場合には乳幼児の病気欠勤によって首になるなどの問題があるが、NPO法人ノーベルのひとり親向け病児保育「ひとりおかんっ子パック」NPO法人フローレンスの病児保育「ひとり親支援プラン」、宇都宮市のひとり親病児保育支援などの支援が始まっている。富山市では共働きやひとり親世帯子育て支援策として10月をめどに、保育所で園児が体調を崩した場合、市の保育士らが保護者に代わって迎えに行き、拠点施設で引き続き預かる「お迎え型」の病児保育を始める。
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