母子加算
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母子加算(ぼしかさん)とは、生活保護の生活扶助の加算制度の一つで、一方の配偶者が欠けている状況にある者が児童を養育しなければならない場合にともなう特別な需要に対応する制度である。
概要
乳幼児を抱える母親は中程度の労働に従事していると考え、そのエネルギー分を補填する制度である[1]。1949年(昭和24年)5月創設[1]で当時月額350円が支給されていた[2]。
その後、母子福祉年金制度の発足に伴い、1960年(昭和35年)4月にこれと同額に改定する[2]。1976年(昭和51年)の福祉年金の見直しに伴い、加算額を生活扶助の一定額とし、生活扶助基準改定率で改定する方式に変更した[2]。1984年(昭和59年)より消費者物価伸び率(生活扶助1類費相当)をもって改定する方式に変更[2]。
2009年(平成21年)4月に廃止されたが、同年12月に復活した[1]。
年表
- 1949年(昭和24年)5月 - 創設[1]
- 1960年(昭和35年)4月 - 母子福祉年金発足。同年金と同額の支給に変更[2]
- 1976年(昭和51年) - 給付額を生活扶助基準改定率で改定する方式に変更[2]
- 1984年(昭和59年)より消費者物価伸び率(生活扶助1類費相当)をもって改定する方式に変更[2]
- 2009年(平成21年)
脚注
関連項目
母子加算
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 00:08 UTC 版)
一定年齢以下の子供のいる母子家庭に認められていた母子加算制度が、2005年度から段階的に縮小され、2009年4月に全廃された。それにより、子供の教育に支障が出ているとの声が一部の母子家庭から挙がっている。 生活保護を受給する母子世帯は、中卒・高校中退同士が離死別した場合が多く、その後非婚のまま出産する婚外子の出現率は25.7%と高くなっている。前夫との問題との関連性や、その子供も同じライフコースをたどる「貧困の連鎖」も指摘されている。貧困の連鎖調査では、母子世帯は、出身世帯で生活保護受給歴のある割合が3割以上となり、特に母子世帯における貧困の連鎖が強い上、母子世帯生活保護受給率(13.3%)は他の世帯(2.4%)と比較して高い(2008年比)。 諸外国との比較では、日本は母子加算がないと子供への等価尺度での評価は低いが、母子加算後では北欧諸国と比較しても生活扶助基準額は最高水準となっている。 母子加算は、2009年(平成21年)12月1日から民社国連立政権下で復活し、2010年度予算では183億円計上された。同時に50億円かけて対象が父子世帯にも拡大された。 なお、加算に際しては世帯全体の構成員は考慮されない。このため両親・その他親族などと同居している場合や、自分の母もまたシングルマザーで18歳以下の妹弟がいる場合の二世帯母子家庭であっても、各ひとり親の母ごとに母子加算は支給されている。 母子加算は次の趣旨に基づき支給される。 一方の配偶者が欠ける状況にある者等が児童を養育しなければならないことに伴う特別な需要に対応するもの。1類基準の飲食物費は、男女とも軽作業に従事する程度の就労状態を前提としているが、乳幼児をかかえる母親は中等程度以上の労働に従事しているものと考えるべきでその増加熱量分を補填する。 食料費(配偶者が欠けることによる養育への負担が片親にかかるため) 住居費(施錠の強化、防犯ベルの設置等安全維持のための費用) 被服費(ひとり親であることから、PTA、町内会等外出の機会が多く、かつ身ぎれいにすることが必要) 雑費 子供のしつけのためには、ひとり親でありながら、両親としての教養を身につけることが必要であり、その分の費用 児童の精神的負担をやわらげ、健全な育成を図るためにレクリエーション等の面で特別な費用が必要。入場料、交通費など。 近隣に託児を依頼することも多くなるがその分の費用。 家を空ける機会が多く、おやつ代等余分な費用が必要。 配偶者の供養料、墓参りのための費用。扶養相談等の交通費など目に見えない費用が必要。 この趣旨に対しては、第7回社会保障審議会生活保護基準部会において、庄司委員が「明らかにこの説明のままでは国民的な合意が得にくいのではないか」「ひとり親であるという世帯の固有性と本当にリンクしているのかどうかということでいうと、説明になっていないというようなことがあるように思います」と発言している。 厚生労働省は母子加算の打ち切りの代替措置として、母親に対する就業支援を実施している。ちなみに、2009年4月に母子加算打ち切りとなった約5万世帯のうち、約3万世帯が病気などによる就業困難世帯である。このほか、生活保護を受給する有子世帯の自立を支援する観点から、2004年4月より高等学校等の就学費用を給付することとしたが、。有子世帯の7割は母子家庭である ため、実質上は母子世帯対策も含んでいる。 母子加算の打ち切りに対し、日本全国で日本国憲法第25条の生存権の侵害を根拠とした行政訴訟が提起されている。2008年12月25日広島県内の32人が広島市などに決定取り消しを求めた訴訟の判決が広島地方裁判所であり、請求はすべて退けられ、原告控訴となった。 一方でこの問題に関して、マスコミの報道で取り上げられた加算対象の受給者の生活水準が、一般的な勤労者世帯を上回っているのではないかとインターネット上を中心に指摘されている。例として受給者が「母子加算があれば母子2人で月1回、回転寿司で40皿分食べる生活が維持できた」「水族館のために沖縄旅行に行きたがり、母子加算があれば行けた」など主張したとされることが挙げられる。 母子加算廃止の根拠とされた社会保障審議会の答申は、廃止を提案したものではないとする報道がある。また、同じく廃止の根拠とされた統計についてサンプル数が少なかったことなどを指摘され、厚生労働省が問題があることを認めたとの報道がある。 後に、厚生労働省は2011年4月、厚生労働大臣と全国生存権訴訟原告団・弁護団の両代表との間で、母子加算訴訟に係る基本合意書を取り交わした。 しかし、母子加算を廃止すると同時に新設された高校就学費用の給付は継続しているため、高校生を持つ母子世帯の給付額は以前より高くなっている。2012年基準では、もっとも保護費の高い1級地-1(東京23区、神奈川県横浜市・川崎市)において、30代夫婦と小学生と高校生の子ども世帯では月額約30万円となるが、30代母親及び小学生1名と高校生2名の母子世帯の場合では約34万円 となり、同人数でも夫婦世帯より高額支給となっている。冬季期間にはこれらに加えて冬季加算と毎年12月には年末加算も支給される。片山さつきは、これと同額を受給者に免除されている税・社会保険、NHK受信料、公立高校授業料、給食費などを支払った後で手取りとして同額残すには、収入が最低38〜39万以上なくてはならないとして批判している。 社会保障審議会生活保護基準部会の元委員である道中隆は、「貧困に関して国政レベルで調査を進める必要がある。わが国では、何の根拠もなく、気の毒だから、母子加算を復活させましょうかと言うことになる。貧困認識のぶれを少しでも小さくしないと、有効な政策を打ち出すことは難しい。」とコメントしている。
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