育成環境と違う世界との関わりの重要性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
「貧困の悪循環」の記事における「育成環境と違う世界との関わりの重要性」の解説
「生活保護を長期間受給している家庭の場合、そこで育った子供は『就職して働いて社会の一員になる』という感覚が薄いと感じることもある。親と価値観の違う大人が関わることが大事だと思う」と現場の生活保護ケースワーカーは語っている。 茨城県高萩市元市長の草間吉夫は、生活保護を受けていた母と離れて児童養護施設で暮らしていたが、施設長、指導員、季節ごとに里親として自宅に迎え入れてくれた元高萩市長について「他人の縁に恵まれた」と語っている。 児童養護施設の退所者などが共同生活を送りつつ社会に歩みだす支援をする児童自立援助ホームでは、人という財産が少ないという現実が社会的養護の元にある若者の抱える貧困だとの指摘もある。このような施設の利用者が「辛い環境にあったのだから周りに何かを与えてもらうことが当然である」といった感情を持っているように施設職員は感じていたが、東北震災ボランティアを通じて周囲に感謝される経験が大きな体験だったのではないかという。 貧困の状態で育っていても、大人になって貧困を脱する子については、「成長過程で積極的な行動方法を学び,身につけていることが分かる。子どもたちに積極的な行動方法を学ばせるためには,今置かれている家庭環境とは別の世界・別の行動パターンがあることを提示する必要がある。これは,物質的な金銭給付では提供できない。」と金銭給付以外の支援の重要性について日本弁護士連合会は述べている。 生活保護母子家庭の母自身も、厚生労働省が行った母子加算復活後のアンケートにおいて、加算復活が将来の生活に対する悩みや不安を軽くしていないことを回答している。 アメリカの発達心理学者Emmy Wernerは、ハワイ・カウアイ島で1955年に出生したすべての赤ん坊698人を40年間にわたって追跡調査した。その研究で、未熟児として生まれたことや精神疾患の親、不安定な家庭環境など、さまざまなリスクが子どもの精神保健の問題の率を高めるが、そのようなリスクをもった子どもの1/3が良好な発達、適応をとげたのであり、それは親以外の養育者(おば、ベビーシッター、教師)などとの強い絆や、教会やYMCAなどのコミュニティ活動への関与が重要であることを示した。このような「リスクや逆境にもかかわらず、よい社会適応をすること」をリジリエンス(レジリエンス)という。欧米では1970年代よりリジリエンス研究がはじまり、近年では児童精神医学、発達心理学、発達精神病理学などの分野で活発に研究が行われている。
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