せいしん‐びょうりがく〔‐ビヤウリガク〕【精神病理学】
精神病理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/02 20:15 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動精神病理学(せいしんびょうりがく、英: psychopathology 独: Psychopathologie)とは、主として精神疾患の精神症状を記述・分類して、その機構を明らかにし、その経過を究明する学問である。精神疾患の心理的側面を明らかにするのが目的で、異常心理学、病跡学とも関係が深い。精神医学の基礎領域。
精神症状の記述、命名、分類を行って精神疾患の疾病分類に寄与する記述的精神病理学と、症状内容や患者の内的心理を考察する力動的、あるいは人間学的精神病理学に分かれる。
4つのD
異常を定義するときの4つのDは下記の通り。
逸脱(deviance)
この用語は、特定の思想、行動、感情が社会で受け入れられない、または一般的でない場合、逸脱しているとみなされるという考えを表す。ただし、臨床医は、マイノリティグループが他のグループとの共通点がない可能性があるという理由だけで、必ずしも逸脱しているとはみなされないことを覚えておく必要がある。したがって、個人の行動が、所属する文化によって容認できないとみなされた場合、その行動を逸脱または異常と定義する。ただし、多くの精神障害では逸脱のパターンとパターンとの間に関係があるため、鑑別診断モデルで評価する必要がある。
苦悩(distress)
この用語は、精神障害を持つ個人による否定的な感情を表す。彼らは自分たちの病気について深く悩み、影響を受けていると感じているのかもしれない。ある状況を体験している人が動揺している場合、その体験をした個人またはその周囲の人に苦悩を引き起こす行動および感情は異常であるとみなされる。苦悩は、機能障害に関連するが、個人の生活の中で機能障害を正確に認識するために有用と評価することもできる。しかし、苦悩と機能障害は常に関連しているわけではない。というのは、極めて機能不全となっているが、同時に最小限のストレスしか経験していないという症例もある。苦悩の重要な特徴は、機能障害でなく、抱えている問題によって個人が感じるストレスには限界があるという点にある。
機能不全(disfunction)
この用語は、朝、仕事に行くときの準備とか自動車の運転など、通常の日常を営む機能を実行する個人の能力を損なう不適応行動を含む。この不適応行動は、診断するのに十分に大きな問題でなければなりません。個人の生活体験全般で機能障害を探すことに注意する。というのは、はっきりと観察できる領域で機能障害が現れることもある一方、分かりずらい領域で機能障害が現れる可能性もある。このような不適応行動は、個人が正常に健康的に生活することを妨げる。ただし、機能不全の行動は必ずしも精神障害によって引き起こされるわけではなく、ハンガーストライキのように自発的な場合もある。
危険(danger)
この用語には、個人または周囲の他の人に向けられた危険または暴力的な行動が含まれる。危険には2つの重要な特徴があるが、これらは、自己への危険と他人への危険である。個々の診断にいくらかの危険があり、これらの診断における危険の重症度に連続性がある場合、危険という診断に大きな脆弱性がある。精神障害を示唆する可能性のある危険な行動の例として、自殺に関する行動があげられる。個人またはその周囲の人に潜在的に有害な行動や感情は異常とみなされる。
参考文献
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- カール・ヤスパース『精神病理学研究 I』みすず書房、1969年1月。ISBN 9784622022121。
- カール・ヤスパース『精神病理学原論』みすず書房、1971年6月。ISBN 9784622022244。
- エルンスト・クレッチマー『新敏感関係妄想 ―パラノイア問題と精神医学的性格研究への寄与』星和書店、1979年4月。ISBN 9784791100316。
- 松本雅彦『精神病理学とは何だろうか』星和書店、1996年9月。ISBN 9784791103300。
- クルト・シュナイダー『臨床精神病理学序説』みすず書房、2000年12月。ISBN 9784622049920。
- クルト・シュナイダー『新版 臨床精神病理学』文光堂、2007年8月。ISBN 9784830636202。
関連項目
外部リンク
- 日本精神病理学会 2012年9月28日閲覧。
精神病理学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/19 06:42 UTC 版)
意識混濁のコンセプトモデルは、自分自身と環境の認識に責任をもった脳の意識部分について、その「全体レベル」(英: overall level)を調節している脳の一部という考えである。さまざまな病因がこの脳の調節部分を妨害し、それが意識の「全体レベル」を乱すことがある。このような、意識の一般的活性化のある種の仕組みは、「覚醒」(英: arousal)あるいは「覚醒状態」(英: wakefulness)と呼ばれている。 ただし、必ずしも傾眠 (英語版) を伴うものではなく、患者は覚醒している(眠くない)にもかかわらず、意識が混濁している(覚醒障害)ことがある。患者は逆説的に「目覚めているが、別の意味ではそうでない」と明言する。リポウスキーは、ここで言われている「覚醒」の低下は、正確には眠気と同義ではないことを指摘している。1つは昏睡状態に向かう段階であり、もう1つは全く異なる睡眠に向かう段階である。 患者は、自らの言葉で「もやもやする」と表現するような意識混濁の主観的な感覚を経験する。ある患者は、「どういうわけか、靄(もや)がかかったようになったと思った…輪郭がぼんやりしていた」と表現した。「ぼーっとなった」と表現する患者もいる。夢と同じように、意識、注意、時間や場所の見当感、知覚、意識が妨げられるため、患者は自身の全体的な経験と夢を比較する。ハーバード大学医学大学院の精神科医であり、精神科の臨床指導医でもあるバーバラ・シルドクラウト医学博士は、国を横断する自動車旅行中に、ヒロハハコヤナギのアレルギーのために抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンを単回服用した後、意識混濁を起こした主観的な体験(「メンタル・フォグ」とも彼女は呼んだ)について説明した。彼女は「頭がぼーっとする」感じと「夢のような状態」になったと述べた。彼女は、自身の判断が信用できない感覚と、意識が鈍ってどれだけ時間が経ったのかわからなかったと述べた。意識混濁の患者と離人症の患者のどちらも、自らの体験を夢の中の経験とたとえたとしても、同じ疾患ではない。計量的心理テストでは、意識混濁と離人症との関係を示す証拠はほとんど見られない。 これは、事実上あらゆる認知タスクの実行に影響を与える可能性がある。ある著者は、「言うまでもなく、道理に通じた覚醒がなければ認識は不可能である。」と述べている。認知には、知覚、記憶、学習、実行機能(英語版)、言語、建設的才能、随意運動制御、注意および精神速度が含まれる。しかし、最も重要なのは、不注意、思考過程障害、理解力障害、および言語障害である。不注意はいくつかの認知機能を損なうことがあるため、障害の程度はさまざまである。患者は、もの忘れ、「混乱」、または「考えもまとまらない」と訴えることがある。その類似性にもかかわらず、亜症候群性せん妄は軽度認知障害(英: mild cognitive impairment)と同じものではない。根本的相違は、軽度認知障害は認知症と似た障害であり、覚醒(覚醒状態)の障害を伴わないということである。
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