軽度認知障害は正常と認知症の中間ともいえる状態である。その定義は、(1)年齢や教育レベルの影響のみでは説明できない記憶障害が存在する。(2)本人または家族による物忘れの訴えがある。(3)全般的な認知機能は正常範囲である。(4)日常生活動作は自立している。(5)認知症ではない。すなわち、記憶力に障害があって物忘れの自覚があるが、記憶力の低下以外に明らかな認知機能の障害がみられず、日常生活への影響はないかあっても軽度のものである。しかし、軽度認知障害の人は年間で10~15%が認知症に移行するとされており、認知症の前段階と考えられている。
MCI
英語:Mild Cognitive Impairment
日常的な生活に支障はないが、一部の認知機能に障害が発生すること。健常者と認知症の中間にあたる。
MCIにおける認知機能には、記憶や判断、理解、思考、学習、計算、言語などが挙げられる。これらの認知機能のうち、いずれかに問題があると判断した場合はMCIとして認められる。認知機能の低下によりMCIから認知症へ進行することがあるが、MCIと診断された全ての人が認知症になるわけではない。
厚生労働省が2010年に発表した資料によれば、65歳以上の高齢者(2874万人)のうち、MCIは380万人いるという推計結果が出ている。
関連サイト:
『介護現場の実態と課題』~ケアマネジャーの立場から~
けいど‐にんちしょうがい〔‐ニンチシヤウガイ〕【軽度認知障害】
軽度認知障害
軽度認知障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/12 03:29 UTC 版)
軽度認知障害(けいどにんちしょうがい、Mild Cognitive Impairment:MCI)とは、正常老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているが、認知症とはいえない状態。認知症の前段階にあたるが、認知機能低下よりも記憶機能低下が主兆候となる。主観的・客観的に記憶障害を認めるが、一般的な認知機能・日常生活能力はほぼ保たれる。「認知症」の診断ができる程度に進行するまで、通常5 - 10年、平均で6 - 7年かかる。医療機関を受診した軽度認知障害では、年間10 % - 30 %が認知症に移行するとされる。MCIから認知症への進行を確実に食い止める治療法はまだ見つかっておらず、認知症治療薬の効果はないとする研究が多い[1]。そのため予防的観点から、認知機能を維持する成分(DHA、イチョウ葉エキス、エルゴチオネイン[2]など)を含んだ機能性表示食品の研究も活発に行われている[3][4]。
定義
脚注
- ^ 厚生労働省老健局 2019年6月
- ^ Feng, Lei; Cheah, Irwin Kee-Mun; Ng, Maisie Mei-Xi; Li, Jialiang; Chan, Sue Mei; Lim, Su Lin; Mahendran, Rathi; Kua, Ee-Heok et al. (2019-03-12). Yu, Jin-Tai. ed. “The Association between Mushroom Consumption and Mild Cognitive Impairment: A Community-Based Cross-Sectional Study in Singapore”. Journal of Alzheimer's Disease 68 (1): 197–203. doi:10.3233/JAD-180959 .
- ^ http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48040/685 健常者および軽度認知障害者に対するエルゴチオネイン含有食品の認知機能改善効果 薬理と治療(2020)48(4)685-97
- ^ エルゴチオネイン含有機能性表示食品
- ^ “軽度認知障害”. 2015年8月23日閲覧。
関連項目
外部リンク
軽度認知障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 09:13 UTC 版)
軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)とは、正常老化過程で予想されるよりも認知機能が低下しているが、認知症とはいえない状態。認知症の前段階にあたるが、認知機能低下よりも記憶機能低下が主兆候となる。主観的・客観的に記憶障害を認めるが、一般的な認知機能・日常生活能力はほぼ保たれる。「認知症」の診断ができる程度に進行するまで、通常5〜10年、平均で6〜7年かかる。医療機関を受診した軽度認知障害では、年間10%~30%が認知症に移行するとされる。さらに、単に軽度の記憶障害のみの例より、他の認知障害を合わせて持つ例の方が、認知症への進行リスクははるかに高い(4年後の認知症への移行率は、記憶障害のみの場合は24%、言語・注意・視空間認知の障害のいずれかの合併例では77%であった)。 認知症における疾患修飾治療(disease-modifying therapy)、いわゆる根治療法を企図した100以上の臨床試験がすべて失敗に終わり、少なくともMCIの段階からの治療開始が望ましいと考えられている。しかし、MCIから認知症への進行を確実に食い止める治療法はまだ見つかっておらず、認知症治療薬の効果はないとする研究が多い。そのため予防的観点から、認知機能を維持する成分(DHA、イチョウ葉エキス、エルゴチオネインなど)を含んだ機能性表示食品の研究も活発に行われている。 MCIの段階では、軽症であるがゆえにその背景にある病気、つまりアルツハイマー病の前駆段階なのか、血管性認知症の前駆段階なのかを判定するのがしばしば困難であること、さらに2013年の報告(Brain 2013)では、80歳以上のアルツハイマー病患者の8割が何らかの脳血管障害を伴っていることが明らかとなり、脳血管障害に対する介入が、血管性認知症はもちろんのこと、アルツハイマー病の前駆段階であるMCI(MCI due to ADと呼ばれる)に対しても有効なのではないかという期待が世界中で高まっている。日本でも、脳血管障害に対する治療薬がMCIに対して有効かどうかを確かめようとする医師主導治験(COMCID Study)が2015年(平成27年)5月より始まっている。 国立長寿医療研究センターの研究班がまとめた発表によると、認知症の前段階と言われるMCIの高齢者を4年間追跡調査してみたところ、14%が認知症になったものの、46%は正常に戻った。研究は、認知症患者ではない65歳以上の住民約4200人を2011年から4間追跡、国際的なMCI判定基準に基づく150項目に回答する形での認知機能検査により、最初の時点で約740人(18%)がMCIと判定された。4年後に同じ検査を行ったところ、MCIと当初判定された人の46%は正常範囲に戻っていた。この認知機能検査は、記憶力・注意力・処理速度・実行機能の4項目を検査するが、MCIの中でも、1項目だけスコアが低いタイプが正常に戻った割合が39〜57%であるのに対し、複数の項目のスコアが低いタイプは20%台であった。MCIの中でも、問題のある項目が少ないほど回復率が高い傾向があった。また、4年の間に認知症と診断された人の割合は、当初MCIと判定された人では14%と、当初正常だった人の5%に比べ、大幅に高くなっていた。
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