母子家庭の貧困
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/14 00:52 UTC 版)
「一人親家庭」も参照 相対的貧困に占める子供のいる家庭の割合は40.4%(平成16年現在)となっており、その中で「有業者2名の大人2人以上と子供の世帯」は18.0%、「有業者2名の大人2人以上と子供の世帯」は14.8%、「無業者の大人2人以上と子供の世帯」は2.3%「有業者1名の大人1名と子供の世帯」は4.3%、「無業の大人1人以上と子供の世帯」は1.0%となっている。このため、貧困世帯に含まれるひとり親家庭(長子が成人している、または祖父母などと同居を除く)は全世帯中最大でも5.3%である。しかし、母子家庭の一人当たりの平均所得金額は児童のいる世帯の4割程度となっていて、母子家庭の多くは貧困率が高い。 母子家庭の貧困問題を解決するのに、二つの選択肢があり、母子家庭そのものの数を減らし貧困問題を解決するのか、それとも母子家庭の所得を増やして解決するのかという選択肢である。ブッシュ政権は前者の方向を推し進め、その代表的なシンクタンクであるヘリテージ財団のレクターという論者は、「長期に及ぶ子供の貧困問題の80%は離婚・婚外出産の問題から発生しているとし、父親不在の子供たちは情緒的・行動的問題、高校中退、ドラッグやアルコール依存症、犯罪の問題をより多く経験し、さらに大人になっても、結局のところ福祉受給者となる」と指摘した。多くの研究から、ひとり親家庭は、子供の貧困率だけでなく高校中退率や10代の出産率が高いことが示されている。一方、マクラナハンの研究では、ひとり親家庭の高校中退率、10代出産率、ニート率が高いとしつつも、家族の所得を考慮した場合には、ひとり親であるかどうかは統計的に有意を示さなくなってしまうとした。アメリカの貧困問題研究では、ゲットーに住むアンダークラスの都市住民の貧困について、失業や犯罪、10代の妊娠、婚外子出生、女性世帯主家族、福祉依存を人種的および階級的な不平等の表れとして分析すべきものというmary Corcoranらの主張もある。10代の女性の妊娠は彼女がゲットーの貧しい女性世帯主の家族成長したことと深く関連し、黒人の場合、多くの子供が父親のいない家庭に育つが、それは黒人女性に結婚しない者が増えたことに起因し、その大きな理由は仕事のない黒人男性が増加して経済的結婚適格のある男性が減少したとのwilliam Julius Wilson の分析がある。黒人男性の失業率の高さが、貧困黒人女性の間で未婚の母が増えたことにもっとも深くかかわってると主張されている。日本においても、2003年に製造業の派遣が解禁になるなどの労働者派遣法の改定を受けて派遣労働者が増えるなど、雇用者の三割以上は非正規雇用職員となる一方、企業における内部留保(利益剰余金)が上昇しかつ、企業の人件費削減分に匹敵する額が株主配当や役員報酬として増加するなど、格差社会が進行しアンダークラス層が出現しているとの指摘がある。 単身女性を含めた女性の貧困化についてはNHKなどのメディアに取り上げられるようになり、女性の非正規雇用職員の貧困を「アンダークラス化する若年女性」とも表現しているが、母子家庭においても、離婚および未婚の母の増加により、児童扶養手当の受給者は100万人を突破しており、新たな貧困層が増加している可能性がある。平成28年度「賃金構造基本統計調査」のよると、女性の賃金は過去最高となっているが、男女間賃金格差(男性=100)に対し、女性過去最小の73.0と公表されている。構造的に女性賃金が低いため、母子家庭となり母が主たる稼ぎ手になった場合、多くの家庭において、生計を維持するに足るだけの収入が得られない可能性がある。母子世帯の学歴はふたり親世帯の学歴より低く、中卒は同世代女性の約3-4倍となっており、母子世帯の貧困や諸困難の背景に低学歴という問題がある。学歴が低いほど就業率が低く、正規雇用率が低い。非婚(未婚)世帯は中卒割合が22.5%で、同世代女性の6倍強で、増加傾向にある。歴史的には、日本は明治十年代、二十年代には離婚率が3.0%を前後しており、アメリカ0.7、フランス0.25、ドイツ0.15、イギリス0.02(1900年現在)と比較しても、全国統計が得られるほどの近代国家としては例がなく、世界一の離婚王国であった。離婚に伴う子の引き取りは性別・年齢に関係なく、全員を夫側の家で養育するという例が圧倒的に多かった。子の全員を夫側が引き取るのは、妻側の経済力の弱さ、再婚への差支えなどもあろうが、最大の理由は「嫁入りした家で生まれた子」だろうと推論されている。その後、昭和初期(1920-1940年代)では最も離婚率が低下した時期となった。そして戦後の混乱期を経て一旦低下した後、都市部の離婚の増加とともに、1960年代半ばから再び増加していく。母親が子どもを引き取る割合が父を上回る時期も、同じ1960年代半ばだった。子どもを引き取る母が増加した背景には、離婚の際、協議で親権者を決めるとした戦後の民法改正がある。民法改正後20年ほどして、婚姻中はもちろん、離婚後も母が子どもを養育するのが当たり前と見なす社会が、都市部の離婚の増加とともに形成されたうえ、男性が離婚後容易に子を手放すようになったのは、再婚、とりわけ初婚女性との再婚によって新たな子どもを持つ可能性が高いことと結びついていたとする説がある。昭和25年から40年までは、「夫が全児の親権を行う場合」の方が、「妻が全児の親権を行う場合」より多かった。これが41年に逆転し、「妻が全児の親権を行う場合」の方が年々多くなっており、平成10年では「妻が全児の親権を行う場合」79.2%、「夫が全児の親権を行う場合」16.5%となっている。2012年統計では妻側が83.9となっており、一貫して増加している。 なお、日本が過去施してきた「子ども手当」や「少人数学級」は、海外のデータを用いた研究のなかでは、すでに費用対効果がないか、極めて低いことが明らかになっているため、単純に手当を増額する手法は「学力の上昇」には直結しない。 長野県や島根県浜田市のようにひとり親世帯の移住促進策を実施する自治体もある。
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