主人公の近親者及び主要人物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 17:00 UTC 版)
「アドルフに告ぐ」の記事における「主人公の近親者及び主要人物」の解説
峠 勲(とうげ いさお) 草平の弟。ベルリン大学に留学している。共産主義の学生活動を行っていたが、付き合っていたローザ・ランプ(アセチレン・ランプの娘)によってゲシュタポに密告されて殺され、遺体も社会から抹消された。しかし死ぬ前に、入手していたヒトラー出生の秘密についての文書を小城に託していた。 小城 典子(こしろ のりこ) アドルフ・カミルや峠勲の恩師である小学校教師。同人誌で反戦詩を発表したために「アカ」の疑いをかけられて特高にマークされ、彼らから過酷な拷問を受けていた。勲から送られた文書を預かり、それによって草平、カミルと共にナチスの文書を巡る陰謀に巻き込まれる事となる。 ヴォルフガング・カウフマン アドルフ・カウフマンの父。ヘッセン州出身。表向きは神戸の駐日ドイツ総領事館職員だが、その正体は目的のためなら殺人や拷問も厭わない非情なスパイ(明記はされていないが恐らく親衛隊保安部)である。東京大使館のリンドルフ一等書記官に頭が上がらない。非常に強権的で威圧感溢れる人物であり、繊細な性格の持ち主である息子のアドルフは常に父に怯えていた。ドイツに対する忠誠心は厚く、それ故に家族を犠牲にして省みない面もあった。本人も臨終に当たりそれを自覚して由季江に懺悔の言葉を述べて謝罪していた。反ユダヤ主義者でもある。 第一次大戦時に帝政ロシアの捕虜となり、そこでランプと知り合った事が、後にナチスへ入党するきっかけとなったようである。第一次大戦終戦後はドイツへ帰国し、日本へ留学した際に由季江と知り合った。由季江と結婚した後も機密文書の行方を追っていたが、鉄砲水にあったことを切っ掛けに肺炎にかかり、帰らぬ人となる。ヴォルフガングの遺志で息子のアドルフがアドルフ・ヒトラー・シューレに入学後、亡き父が腕利き情報員としてドイツでは有名であると知り、驚きの手紙を母に出していた。息子のカウフマンの人格形成にナチスでの教育が大きな役割を果たしたことから、その原因を作った人物だとも言える。 峠 由季江(とうげ ゆきえ) / 由季江・カウフマン(ユキエ・カウフマン) アドルフ・カウフマンの母。美しく心優しい一方、儚げで繊細だが、芯は気丈な性格。強権的な夫のヴォルフガングと不仲となっており、既に彼との夫婦関係は冷めていた。 夫であるヴォルフガングと死別した後、あるきっかけで峠と知り合いとなる。後に神戸の自宅でドイツ料理店「ズッペ」を始め、ボーイとなった峠と再婚し相思相愛の夫婦となるが、峠との再婚がカウフマンの歪みを深める一因になってしまった。帰国した息子との再会を喜ぶも、ナチスとヒトラーに忠誠を誓って狂気に奔り、カミル等を痛めつける息子の姿にショックを受け勘当するが、息子の心を理解しようとしなかったことに深く後悔していた。峠との間に子供を身篭るも、それから間もなく神戸大空襲によって瀕死の重傷を負う。峠の願いを聞き届けた本多大佐の手配で設備の整った阪大病院へと送られるが、植物状態となってしまう。終戦後に帝王切開で娘 を出産するも、ほどなくして死亡する。 イザーク・カミル アドルフ・カミルの父。神戸元町で妻のマルテと共にパン屋「ブレーメン」を営んでいる。同胞のユダヤ人がヨーロッパで弾圧されている現状に心を痛めていた。神戸のユダヤ人社会における反対勢力から脅迫を受けるが、その決意を変えることなく、ミールユダヤ神学校の学生500人を日本に亡命させるためリトアニアに向かう。だが、当初の話と違って一般人を亡命させるよう依頼され、途方に暮れる中、混乱した現地で財布と身分証をすられてしまう。ついには密入国の難民の疑いをかけられ逮捕。ドイツに送検され、ユーゲントにおいてアドルフ・アイヒマンの意向によりアドルフ・カウフマンに射殺される。射殺の直前、カウフマンに気付いて助けを求めたが、運悪くエリザの件と自身の出自により微妙な立場に置かれていたカウフマンには、アイヒマンの命令通りに射殺することしかできなかった。この件について事情を聴かれたカウフマンは「神戸の親友のおやじさんだが、ここにいるはずがない」とアイヒマンに語り、その存在を否定している。実は出国前に息子からヒトラー出生に関する極秘文章を手渡されて、内容を確認するように依頼されていたが、行き違いで確認することないままに出国してしまい戻らなかった。 マルテ・カミル イザーク・カミルの妻でアドルフ・カミルの母。不在中の夫イザークに代わり、息子アドルフと共にパン屋を営んでいた。恰幅のいい体形で、見た目から受ける印象通りのおおらかで優しい性格。アドルフ・カウフマンの手配で亡命してきたエリザを快く迎え入れ、以後は実の娘のように接し、二人でいることが多くなる。後にエリザがアドルフ・カウフマンから暴行を受けた際にも、彼女と息子の将来を否定することなく支え続けたが、神戸大空襲に巻き込まれ死亡した。 エリザ・ゲルトハイマー ドイツ在住の裕福なユダヤ人一家の娘で、家族構成は両親と弟。祖先に中国人の血が混じっていることもあり、東洋風の雰囲気と黒髪の持ち主である。 ヒトラー・ユーゲントに所属していたアドルフ・カウフマンに一目惚れされ、彼の手引きで、ユダヤ人狩りが本格的に行われる前にと日本への亡命計画を進める。しかし家族(とりわけ父親)はヘルマン・ゲーリングとコネがあり、お目こぼしに預かっていたことから危機感に乏しく、亡命も既得権益を手放すことになると躊躇していた。エリザの必死の懇願により一家は亡命に踏み切るが、彼女以外の家族は何かと待遇に不満を漏らし、結局は財産の整理にかこつけて舞い戻ったところを逮捕されてしまう。皮肉にも、この結果カウフマンはフリッツが言うところの「ユダヤ人の娘に惚れて、ユダヤ人の肩を持つ裏切り者」としての嫌疑を逃れることが出来た。 亡命後は神戸で暮らし、アドルフ・カミルと恋仲となり婚約する。しかし、文書抹消のため潜水艦で来日したカウフマンがカミルとの婚約に激怒。婚約の撤回を要求され拒否するも、諦めきれないカウフマンに騙され、彼に強姦されてしまう。そのことがカミルに発覚し、2人の友情が破綻する要因になった。戦後はカミルと結婚しイスラエルに渡る。その後は息子を産み、1983年にカミルと死別した後、イスラエルを訪問した草平と再会する。 アドルフ・ヒットラー 実在の人物。本作におけるキーマンで、国家社会主義ドイツ労働者党並びにナチス・ドイツの総統。極めてヒステリックで、自分の考えに没頭すると周りが見えなくなる厄介な男。本作ではユダヤ人の血が入っているという設定であり、ユダヤ人を根絶やしにせんとしながらも自身の血に苦悩する。 戦況の悪化から物語途中から精神的な均衡を失い疑いをかけた部下を次々と粛清する。史実でも大戦末期から精神衰弱気味になり、1945年4月30日に総統地下壕で妻のエヴァ・ブラウンとともに自殺したが(アドルフ・ヒトラーの死)、本作では同日、自殺直前にランプに撃たれて死亡している(ランプが自殺に見せかける形に偽装したため、ボルマン以外の人物は作中でも自殺したとみなしている)。 アドルフ・アイヒマン ナチス親衛隊中佐(作品初登場時は大尉)。ドイツによるホロコーストの実行者の一人で実在の人物。 ユーゲントにいたカウフマンを含めた混血児たちに対して「純粋なアーリア人でないからこそ、よりたくさん努力しなければならない」と称してユダヤ人を的にした殺人訓練を課した。カウフマンにイザークを射殺させるが、初めて人間を撃つカウフマンが手間取って急所以外の場所に弾を撃ち込むなど上手くいかないのに対し「1人殺すのに弾を無駄にするな! 次は1発で仕留めろ!」と叱責する。その後、カウフマンの左遷先の上官(この時の階級は少佐)として再会を果たす。「総統が狂っていることは知っている。部下も正気では務まらない」との考えをカウフマンに語った。なお、再会時にカウフマンから訓練当時の事について言及されたが、アイヒマン本人は覚えていなかった。 史実では大戦終結後にバチカンなどの助けを受けてアルゼンチンに逃亡した後、イスラエル諜報特務庁に捕えられイスラエルで処刑されている。
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