ピアノソナタ第16番とは? わかりやすく解説

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シューベルト:ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調

英語表記/番号出版情報
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調Sonate für Klavier Nr.16 a-Moll D 845 Op.42作曲年1825年  出版年1826年  初版出版地/出版社: Pennauer 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 Mov.1 Moderato1130秒
2 第2楽章 Mov.2 Andante, poco mosso 1330秒
3 第3楽章 Mov.3 Scherzo: Allegro vivace 8分00
4 第4楽章 Mov.4 Allegro vivace 5分00

作品解説

2007年6月 執筆者: 稲田 小絵子

 シューベルトこれまで数多くピアノ・ソナタ作曲してきたが、この作品はこのジャンルにおける初の出版作品となった作曲され1825年5月から、わずか1年足らずという異例早さである。献呈は、ベートーヴェンパトロンとして有名なルドルフ大公
 この年シューベルト未完含めて3曲のピアノ・ソナタ(第1517番)を生み出したこれまでのシューベルトピアノ・ソナタでは、しばしば3楽章のもの見られるが、このソナタ以降一貫して楽章制をとるようになっている。この作品は、長さの点でも楽章間の曲想対照の点でも、全体的に非常にバランス良いソナタといえるだろう。

第1楽章モデラートイ短調2/2拍子ソナタ形式冒頭主題の「問い答え」という形は第15番同じだが、前作のような頻繁な転調は、展開部限られている。
第2楽章:アンダンテ・ポコ・モッソ、ハ長調3/8拍子変奏形式主題5つ変奏から成る。穏やかでありながらすでに調の揺れ見せ主題は、華麗な変奏や、和声的変化感じさせる厚い書法変奏によって提示される
第3楽章スケルツォアレグロ・ヴィヴァーチェイ短調3/4拍子軽く鋭い冒頭モチーフ駆使したスケルツォ部と、ウン・ポコ・ピウ・レントのゆったりとした子守唄風のトリオ部から成る
第4楽章ロンドアレグロ・ヴィヴァーチェイ短調2/4拍子八分音符支配され即興的なロンド主題中心に一気走り抜けてゆく。だがその中でも、フォルテ奏される二分音符トリル飾られ四分音符アクセントになっている


ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調

英語表記/番号出版情報
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調Sonate für Klavier Nr.16 G-Dur Op.31-1作曲年1802年  出版年1803年  初版出版地/出版社Simrock 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 1.Satz Allegro vivace6分30秒
2 第2楽章 2.Satz Adagio grazioso1030秒
3 第3楽章 3.Satz Rondo-Allegretto6分30秒

作品解説

2009年7月 執筆者: 岡田 安樹浩

ベートーヴェンにおいて、1802年は「ハイリゲンシュタットの遺書」の年として知られている。耳の病をはじめとした身の回り不幸な出来事から、真剣に自殺考えたベートーヴェンであるが、創作の面では3曲の『ヴァイオリン・ソナタOp.30書き上げるなど、意外なほどに充実している。
Op.31として出版された3曲のソナタは、着手完成時期定かではないものの、1802年4月22日に弟のカールブライトコップ社へ3曲の売り込みの手紙を書いていることから、この時点少なくとも1曲は完成されていたか、またはそれに近い状態であったことがうかがえる

第1楽章 ト長調 4分の2拍子 ソナタ形式
提示部
16分音符1つ分のアウフタクトをもつ、極めて特徴的な動機によって開始される主要主題(第1~11小節)は、このリズム動機半音階的変化含んだ16分音符下降音型からなる。この主題は、すぐに長2度下のヘ長調確保(第12小節~)され、下降音型の即興的展開を経て主調にてもう一度確保(第46小節~)される。
推移(第5565小節)の後にあらわれ副次主題(第6673小節)は、主調ト長調)の長3度上にあたるロ長調である。平行短調ロ短調確保(第74小節~)され、コーダ(第98小節~)はそのままロ短調閉じられる

展開部+再現部
展開部(第114[115]小節~)においては、まずリズム動機幅広い音域拡大され繰り返された後、下降音型が即興的な展開によってパッセージ化される主調属和音アルペジオ駆け巡ると、リズム動機付点リズムの二音(属音)と4分音符刻まれる属和音によって引き伸ばされ音量最弱ppへと落としつつ再現部準備する
再現部は(第194小節~)最強ffによって決然と開始される確保部分省略され、すぐに推移となるが、副次主題主調回帰させるために必要な下属調経由する措置取らず、まずホ長調ホ短調副次主題回帰(第218小節~)させる。そしてホ短調による(提示部における)確保部分後半(第232小節~)を変化させることで、ようやく主調副次主題あらわれる。
このソナタにおいてもコーダはやはり拡大され、主要主題回帰下降音型のパッセージ属和音アルペジオ経てリズム動機発展のうちに楽章閉じる。

第2楽章 ハ長調 8分の9拍子
自由な幻想曲性格緩徐楽章で、ロンド風に主題幾度も回帰する構成とっている。
長めトリル半音階上行音型を特徴とする主題は、この後3度回帰することになるが、1度目3度目回帰カデンツァ風のパッセージ経て回帰となる。このようなカデンツァ・パッセージの挿入は、Op.27見られるように、この楽章が「幻想曲的」なものであることを物語っている。

第3楽章 ト長調 2分の2拍子 ロンド
Rondo記されているが、ソナタ風のロンドである。
声部書法によるロンド主題(第1~16小節)は、属音保続音によって特徴づけられている。低声部での主題確保(第16小節~)には8分3連音符装飾的楽句伴い、これは続いてあらわれ属調主題動機となる。
最初ロンド主題回帰(第66小節~)では、伴奏音型が8分3連音符による分散和音よなり、転調繰り返して発展した後の2度目回帰(第132小節~)では、主題オクターヴ化され伴奏音型は8分3連音符によるオクターヴトレモロへと変容する。
コーダでは、ロンド主題動機AdagioTempo Primo交互にあらわれる。やがてPrestoとなり、主音上に属音長いトリル伴ってロンド主題冒頭動機執拗に反復して楽曲閉じる。

幻想曲風の中間楽章や、ロンド・ソナタ形式によって拡大されフィナーレは、Op.27Op.28から引き継がれ様式であると言って良さそうだが、フィナーレコーダにおけるテンポ変化はOp31-2(テンペスト・ソナタ)において、一層様式化されてあらわれる。
また、第1楽章における主要主題長2度下での反復や、主調長3度上をとる副次主題調性選択は、Op.53(ワルトシュタイン・ソナタ)をたしかに予感させる。だがこのソナタでは、この特徴的な確保省略や、ストレートに行かない副次主題再現など、大い課題残しており、まだ実験段階だったということうかがえる


モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第16(15)番 ハ長調

英語表記/番号出版情報
モーツァルトピアノ・ソナタ16(15)ハ長調Sonate für Klavier Nr.15 C-Dur K.545作曲年1788年  出版年1805年  初版出版地/出版社Bureau d'arts et d'industrie 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 第1楽章 Mov.1 Allegro4分30秒
2 第2楽章 Mov.2 Andante4分00
3 第3楽章 Mov.3 Rondo-Allegretto1分30秒

作品解説

2009年12月 執筆者: 岡田 安樹浩

モーツァルト自身がつけていた『自作目録』には、1788年6月26日日付があり、「初心者のための小クラヴィーア・ソナタ」と書かれているウィーン時代作曲されたクラヴィーア・ソナタには、作曲の経緯が明らかとなっているものがなく、このソナタも『自作目録』のタイトルから、おそらく弟子のために書かれたものか、レッスン用の曲を依頼され作曲したものと推測されるが、着手経緯不明のままである
このソナタが、今日でもピアノレッスン教材として広く親しまれていることは、作曲者によって記入された「初心者用」のタイトル付されていることも然ることながら、簡素な旋律コンパクトにまとめられ形式をもっていることからも、うなずける

第1楽章 ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
アルベルティ・バスの上に、重音ともなわないシンプルな旋律による主要主題提示される音階パッセージによる推移(第5小節~)を経て同様にシンプルな楽想副次主題属調ト長調あらわれる(第14小節~)。分散和音による推移(第18小節~)の後に、短いコーダともなって前半閉じる。
後半(第29小節~)は、属調の同主短調であるト短調で、主要主題によって開始され、すぐに二短調転じる。そして、音階パッセージによってイ短調からヘ長調へ至る。
主調下属調であるヘ長調で主要主題再現され(第42小節~)、音階パッセージによる推移部が拡大される(第46小節~)。
この下属調による主要主題再現は、しばしば特異なものとして指摘されるが、本来2部形式発展したソナタ形式にとっては決して珍しいことではない。たしかにモーツァルトの他のクラヴィーア・ソナタには例がないが、古いタイプソナタには下属調での再現見られシューベルトソナタにも例が認められる
むしろ重要なことは、この下属調への転調不可避なものではなく意図的であると考えられることである。というのも主題再現直前調性イ短調取っており、平行長調であるハ長調主調)への転調は、自然に行うことができたはずだからである。
また、音階パッセージによる推移部の拡大によって、調性ヘ長調からハ長調転じるが、結局は提示部同様に属和音終止してしまうため、副次主題再現唐突な印象すら与える(自然な再現目指すならば、ハ長調主和音終止する必要がある)。とすれば、実は、この音階パッセージ拡大意図があり、それは「初心者のための」というタイトルから引き合い出せば左右の手による音階練習意図的に組み込んだのかもしれない
以降主調による副次主題再現(第59小節~)と、分散和音による推移経て前半同様のコーダをもって楽章閉じる。

第2楽章 ヘ長調 4分の3拍子
Andanteの緩叙楽章終始アルベルティ・バスの上旋律奏でられる。旋律中には音階分散和音といった音型と、レガートスタッカートという対照的なアーティキュレイション盛り込まれている。こうした表情豊かな旋律は、モーツァルト作品において珍しいものではないが、これらが、意図して用いられたと考えることもできよう
全体3つの部分からなり第1部第2部それぞれ反復記号によって繰り返されるが、第3部前半前半2部分の程度小節をもっており、大きなバール形式ととらえることもできよう
第1部では、8小節主題とその変奏第2部(第17小節~)は属調はじまり、主調第1部後半部分を繰り返し簡潔な2部形式構成している。
第3部(第33小節~)は同主短調ト短調開始され主題変奏される。変ロ長調ハ短調経て再びト短調回帰するが、すぐにト長調へと転じて主題再現する(第49小節~)。最後に下属調ハ長調経由して楽章閉じる。

第3楽章 ハ長調 4分の2拍子 ロンド形式
ロンド主題は、3度重音3度下降跳躍する上声部を、低声部が模倣する動機によって特徴づけられている。この「3度重音」は随所用いられており、この楽章における学習課題であると考えられる属調ト長調でのクープレ主題、平行短調イ短調転じた中間部それぞれにロンド主題における3度重音動機あらわれている。

上のように、このソナタ学習用という観点から分析すると、各楽章学習課題用意されており、それらを十分に消化することができるように楽曲構成されていることが分かる


ピアノソナタ第16番

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/26 13:31 UTC 版)

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