シューベルト:ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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シューベルト:ピアノ・ソナタ 第16番 イ短調 | Sonate für Klavier Nr.16 a-Moll D 845 Op.42 | 作曲年: 1825年 出版年: 1826年 初版出版地/出版社: Pennauer |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 第1楽章 Mov.1 Moderato | 11分30秒 | |
2 | 第2楽章 Mov.2 Andante, poco mosso | 13分30秒 | |
3 | 第3楽章 Mov.3 Scherzo: Allegro vivace | 8分00秒 | |
4 | 第4楽章 Mov.4 Allegro vivace | 5分00秒 |
作品解説
シューベルトはこれまで数多くのピアノ・ソナタを作曲してきたが、この作品はこのジャンルにおける初の出版作品となった。作曲された1825年5月から、わずか1年足らずという異例の早さである。献呈は、ベートーヴェンのパトロンとしても有名なルドルフ大公。
この年、シューベルトは未完も含めて3曲のピアノ・ソナタ(第15~17番)を生み出した。これまでのシューベルトのピアノ・ソナタでは、しばしば3楽章のものが見られるが、このソナタ以降は一貫して4楽章制をとるようになっている。この作品は、長さの点でも楽章間の曲想的対照の点でも、全体的に非常にバランスの良いソナタといえるだろう。
第1楽章:モデラート、イ短調、2/2拍子。ソナタ形式。冒頭主題の「問いと答え」という形は第15番と同じだが、前作のような頻繁な転調は、展開部に限られている。
第2楽章:アンダンテ・ポコ・モッソ、ハ長調、3/8拍子。変奏形式。主題と5つの変奏から成る。穏やかでありながらすでに調の揺れを見せる主題は、華麗な変奏や、和声的な変化を感じさせる厚い書法の変奏によって提示される。
第3楽章:スケルツォ。アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、3/4拍子。軽く鋭い冒頭モチーフを駆使したスケルツォ部と、ウン・ポコ・ピウ・レントのゆったりとした子守唄風のトリオ部から成る。
第4楽章:ロンド。アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、2/4拍子。八分音符に支配された即興的なロンド主題を中心に、一気に走り抜けてゆく。だがその中でも、フォルテで奏される二分音符やトリルで飾られた四分音符がアクセントになっている。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第16番 ト長調 | Sonate für Klavier Nr.16 G-Dur Op.31-1 | 作曲年: 1802年 出版年: 1803年 初版出版地/出版社: Simrock |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 第1楽章 1.Satz Allegro vivace | 6分30秒 | |
2 | 第2楽章 2.Satz Adagio grazioso | 10分30秒 | |
3 | 第3楽章 3.Satz Rondo-Allegretto | 6分30秒 |
作品解説
ベートーヴェンにおいて、1802年は「ハイリゲンシュタットの遺書」の年として知られている。耳の病をはじめとした身の回りの不幸な出来事から、真剣に自殺を考えたベートーヴェンであるが、創作の面では3曲の『ヴァイオリン・ソナタ』Op.30を書き上げるなど、意外なほどに充実している。
Op.31として出版された3曲のソナタは、着手と完成の時期が定かではないものの、1802年4月22日に弟のカールがブライトコップ社へ3曲の売り込みの手紙を書いていることから、この時点で少なくとも1曲は完成されていたか、またはそれに近い状態であったことがうかがえる。
第1楽章 ト長調 4分の2拍子 ソナタ形式
(提示部)
16分音符1つ分のアウフタクトをもつ、極めて特徴的な動機によって開始される主要主題(第1~11小節)は、このリズム動機と半音階的変化を含んだ16分音符の下降音型からなる。この主題は、すぐに長2度下のヘ長調で確保(第12小節~)され、下降音型の即興的展開を経て主調にてもう一度確保(第46小節~)される。
推移(第55~65小節)の後にあらわれる副次主題(第66~73小節)は、主調(ト長調)の長3度上にあたるロ長調である。平行短調のロ短調で確保(第74小節~)され、コーダ(第98小節~)はそのままロ短調で閉じられる。
(展開部+再現部)
展開部(第114[115]小節~)においては、まずリズム動機が幅広い音域に拡大されて繰り返された後、下降音型が即興的な展開によってパッセージ化される。主調の属和音をアルペジオで駆け巡ると、リズム動機が付点リズムの二音(属音)と4分音符で刻まれる属和音によって引き伸ばされ、音量を最弱音ppへと落としつつ再現部を準備する。
再現部は(第194小節~)最強奏ffによって決然と開始される。確保部分は省略され、すぐに推移となるが、副次主題を主調で回帰させるために必要な下属調を経由する措置は取らず、まずホ長調/ホ短調で副次主題を回帰(第218小節~)させる。そしてホ短調による(提示部における)確保部分の後半(第232小節~)を変化させることで、ようやく主調で副次主題があらわれる。
このソナタにおいてもコーダはやはり拡大され、主要主題の回帰、下降音型のパッセージ、属和音のアルペジオを経て、リズム動機の発展のうちに楽章を閉じる。
第2楽章 ハ長調 8分の9拍子
自由な幻想曲的性格の緩徐楽章で、ロンド風に主題が幾度も回帰する構成をとっている。
長めのトリルと半音階上行音型を特徴とする主題は、この後計3度回帰することになるが、1度目と3度目の回帰はカデンツァ風のパッセージを経ての回帰となる。このようなカデンツァ・パッセージの挿入は、Op.27に見られるように、この楽章が「幻想曲的」なものであることを物語っている。
第3楽章 ト長調 2分の2拍子 ロンド
Rondoと記されているが、ソナタ風のロンドである。
多声部書法によるロンド主題(第1~16小節)は、属音の保続音によって特徴づけられている。低声部での主題確保(第16小節~)には8分3連音符の装飾的楽句を伴い、これは続いてあらわれる属調主題の動機となる。
最初のロンド主題回帰(第66小節~)では、伴奏音型が8分3連音符による分散和音よなり、転調を繰り返して発展した後の2度目の回帰(第132小節~)では、主題はオクターヴ化され、伴奏音型は8分3連音符によるオクターヴのトレモロへと変容する。
コーダでは、ロンド主題の動機がAdagioとTempo Primoで交互にあらわれる。やがてPrestoとなり、主音上に属音の長いトリルを伴ってロンド主題の冒頭動機が執拗に反復して楽曲を閉じる。
幻想曲風の中間楽章や、ロンド・ソナタ形式によって拡大されたフィナーレは、Op.27やOp.28から引き継がれた様式であると言って良さそうだが、フィナーレのコーダにおけるテンポの変化はOp31-2(テンペスト・ソナタ)において、一層様式化されてあらわれる。
また、第1楽章における主要主題の長2度下での反復や、主調の長3度上をとる副次主題の調性選択は、Op.53(ワルトシュタイン・ソナタ)をたしかに予感させる。だがこのソナタでは、この特徴的な確保の省略や、ストレートに行かない副次主題の再現など、大いに課題を残しており、まだ実験段階だったということがうかがえる。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第16(15)番 ハ長調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第16(15)番 ハ長調 | Sonate für Klavier Nr.15 C-Dur K.545 | 作曲年: 1788年 出版年: 1805年 初版出版地/出版社: Bureau d'arts et d'industrie |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | 第1楽章 Mov.1 Allegro | 4分30秒 | |
2 | 第2楽章 Mov.2 Andante | 4分00秒 | |
3 | 第3楽章 Mov.3 Rondo-Allegretto | 1分30秒 |
作品解説
モーツァルト自身がつけていた『自作目録』には、1788年6月26日の日付があり、「初心者のための小クラヴィーア・ソナタ」と書かれている。ウィーン時代に作曲されたクラヴィーア・ソナタには、作曲の経緯が明らかとなっているものがなく、このソナタも『自作目録』のタイトルから、おそらく弟子のために書かれたものか、レッスン用の曲を依頼されて作曲したものと推測されるが、着手の経緯は不明のままである。
このソナタが、今日でもピアノのレッスン教材として広く親しまれていることは、作曲者によって記入された「初心者用」のタイトルが付されていることも然ることながら、簡素な旋律やコンパクトにまとめられた形式をもっていることからも、うなずける。
第1楽章 ハ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
アルベルティ・バスの上に、重音をともなわないシンプルな旋律による主要主題が提示される。音階パッセージによる推移(第5小節~)を経て、同様にシンプルな楽想の副次主題が属調のト長調であらわれる(第14小節~)。分散和音による推移(第18小節~)の後に、短いコーダをともなって前半を閉じる。
後半(第29小節~)は、属調の同主短調であるト短調で、主要主題によって開始され、すぐに二短調へ転じる。そして、音階パッセージによってイ短調からヘ長調へ至る。
主調の下属調であるヘ長調で主要主題が再現され(第42小節~)、音階パッセージによる推移部が拡大される(第46小節~)。
この下属調による主要主題の再現は、しばしば特異なものとして指摘されるが、本来2部形式が発展したソナタ形式にとっては決して珍しいことではない。たしかに、モーツァルトの他のクラヴィーア・ソナタには例がないが、古いタイプのソナタには下属調での再現が見られ、シューベルトのソナタにも例が認められる。
むしろ重要なことは、この下属調への転調が不可避なものではなく、意図的であると考えられることである。というのも、主題再現直前の調性はイ短調を取っており、平行長調であるハ長調(主調)への転調は、自然に行うことができたはずだからである。
また、音階パッセージによる推移部の拡大によって、調性はヘ長調からハ長調へ転じるが、結局は提示部と同様に属和音に終止してしまうため、副次主題の再現は唐突な印象すら与える(自然な再現を目指すならば、ハ長調の主和音に終止する必要がある)。とすれば、実は、この音階パッセージの拡大に意図があり、それは「初心者のための」というタイトルから引き合いに出せば、左右の手による音階練習を意図的に組み込んだのかもしれない。
以降、主調による副次主題の再現(第59小節~)と、分散和音による推移を経て、前半と同様のコーダをもって楽章を閉じる。
第2楽章 ヘ長調 4分の3拍子
Andanteの緩叙楽章。終始アルベルティ・バスの上に旋律が奏でられる。旋律の中には、音階、分散和音といった音型と、レガート、スタッカートという対照的なアーティキュレイションが盛り込まれている。こうした表情豊かな旋律は、モーツァルトの作品において珍しいものではないが、これらが、意図して用いられたと考えることもできよう。
全体は3つの部分からなり、第1部と第2部はそれぞれ反復記号によって繰り返されるが、第3部は前半の前半2部分の倍程度の小節数をもっており、大きなバール形式ととらえることもできよう。
第1部では、8小節の主題とその変奏、第2部(第17小節~)は属調にはじまり、主調で第1部の後半部分を繰り返し、簡潔な2部形式を構成している。
第3部(第33小節~)は同主短調のト短調で開始され、主題が変奏される。変ロ長調、ハ短調を経て再びト短調へ回帰するが、すぐにト長調へと転じて主題を再現する(第49小節~)。最後に下属調のハ長調を経由して楽章を閉じる。
第3楽章 ハ長調 4分の2拍子 ロンド形式
ロンド主題は、3度の重音で3度下降跳躍する上声部を、低声部が模倣する動機によって特徴づけられている。この「3度の重音」は随所に用いられており、この楽章における学習課題であると考えられる。属調のト長調でのクープレ主題、平行短調のイ短調へ転じた中間部、それぞれにロンド主題における3度重音の動機があらわれている。
以上のように、このソナタを学習用という観点から分析すると、各楽章に学習課題が用意されており、それらを十分に消化することができるように楽曲が構成されていることが分かる。
ピアノソナタ第16番
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