ニューウェーブ時代とは? わかりやすく解説

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ニューウェーブ時代(1960 - 1970年代)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/10 23:24 UTC 版)

スペキュレイティブ・フィクションにおけるLGBT」の記事における「ニューウェーブ時代(1960 - 1970年代)」の解説

1960年代末から1980年までの十数年間サイエンス・フィクションファンタジー同性愛扱った作品の数はそれ以前作品数の倍以上にもなった。 Eric Garber, Lyn Paleo, "Preface" in Uranian worlds. 1960年代末までにサイエンス・フィクションファンタジーは、市民権運動カウンターカルチャー発生によってもたらされ変化反映しはじめた。これらのジャンル内では、そのような変化が「ニューウェーブ」と呼ばれる運動組み入れられた。ニューウェーブとは、テクノロジーについてはより懐疑的で、社会的にはより解放され文体実験により興味抱いた運動である。ニューウェーブ作家たちは、外の宇宙よりも「内なる宇宙 (inner space)」に興味持っていた。彼らは性描写に対してそれまで作家ほど保守的ではなく性役割再考性的マイノリティ社会的立場といったことにより共感的である。マイケル・ムアコックNew Worlds 誌の編集長)などのニューウェーブ編集者・作家影響下、性やジェンダー新たなあり方共感的描写サイエンス・フィクションファンタジー増えていき、普通のことになっていった。ゲイイメージ導入また、1960年代レズビアン-フェミニストゲイ解放運動の影響帰される。1970年代には、SFコミュニティとその作家たちの中でもレズビアンゲイ存在感増した主な同性愛者作家としてジョアンナ・ラストマス・M・ディッシュサミュエル・R・ディレイニーがいる。 フェミニストSF作家たちは、同性愛両性愛、あるいは様々なジェンダーモデルが慣習となっている文化想像したジョアンナ・ラスの『フィーメール・マン』(1975)や短編変革のとき」では、男性抜きで子孫残していく女性だけのレズビアン社会描かれており、大きな影響及ぼしたサイエンス・フィクション過激なレズビアン・フェミニズムを導入した責任大部分ラスにある。彼女はレズビアンであることを公表したことがキャリア本の売れ行き悪影響及ぼしたとしている。同様のテーマジェイムズ・ティプトリー・Jr.短編ヒューストンヒューストン聞こえるか?」dにも見られ病気によって男性絶滅した後の女性だけの社会描いている。その社会では戦争のような男性特有の問題がないと、ステレオタイプ描かれているが、同時に停滞した社会であることが描かれている。女性クローニング繁殖し男性滑稽なものと考えている。ティプトリー男性名ペンネーム使い正体かくして活動していた両性愛者女流作家で、性を主要なテーマとしていた。 レズビアンとは無縁なフェミニズムユートピア描かれている。アーシュラ・K・ル=グウィンの『闇の左手』(1969) は特殊な性別あり方描いており、個々の人は「男性」でも「女性」でもなく誰でも子を産むことができる両性具有者世界である。ル=グウィン評論集夜の言葉 ファンタジー・SF論』で彼女は「ゲセン人(『闇の左手』に登場する両性具有種族)を全く不注意に異性愛者としてしまった……(同性愛オプションを)省略したことは、性愛といえば異性愛だと認めたことになる。私はこれをとても後悔している」と記している。ル=グウィン作品の中で様々な性のあり方探究し、さらにSF伝統的でない同性愛を許す可能性を試すような作品多数書いた例えば、「九つのいのち」e はクローン間の両性結びつき描いている。1970年代活躍したジョン・ヴァーリイ作品には性的テーマ流動的なジェンダー描かれている。その作品多く同性愛ゲイレズビアンへの言及がある。彼の八世界》に属す作品では、人類簡単に性転換できる技術開発したという設定である。短編選択の自由」では、その技術登場した初期ホモフォビア描いているが、その後人間関係劇的に変化し最終的に両性性が社会慣習となる。また《ガイア三部作では主人公レズビアンで、どの登場人物多かれ少なかれ両性愛者である。 サミュエル・R・ディレイニーゲイであることを公表した最初サイエンス・フィクション作家1人である。初期作品ではゲイについて性的描写をするのではなくゲイの「感受性」という面を描いていた。いくつかの作品では同性愛同性交際関係がはっきりと暗示されているが、『バベル‐17』(1966) では女性主人公男性2人結婚しているという設定一種カモフラージュ施している。その3人が互いに愛情抱いているということ前面描かれ、3人の間の性行為直接説明されていない。最も有名なSF長編ダールグレン』(1975) では、様々な習慣を持つ登場人物描かれている。ここでも性行為作品中心ではないが、SFとして初め明示的に説明されゲイの性の場面があり、ディレイニー多種多様な動機行動によって登場人物描き出している。 ディレイニーネビュラ賞受賞作品然りそしてゴモラ」は、去勢され人間宇宙飛行士たちを描き、彼らに性的に順応する人々描いている。新たなジェンダーその結果生じ性的嗜好想像することで、読者に距離をおいて現実世界考察させている。同じくネビュラ賞受賞の「時は準宝石螺旋のように」もゲイ登場しており、アメリカではそれらの作品短編集 Aye, and Gomorrah, and other stories にまとめられている。ディレイニーはこれらのトピック扱ったことで出版流通企業から検閲されそうになったことがあるその後ゲイ中心的テーマとなって論争の的となり、サイエンス・フィクションゲイ・ポルノ境界線ぼやかすようになったReturn to Neveryon シリーズディレイニーにとって初めアメリカで大手出版社から出版された作品で、AIDS衝撃扱っている。またディレイニー長年ゲイ&レズビアン文学への貢献に対してウィリアム・ホワイトヘッド記念賞授与された。 同性愛者に関する多くサイエンス・フィクション通読したとき、一種ファッショナブルな自由主義少数多少なりとも効果的な試みがあるだけのステレオタイプシステムと見ることしかできないSamuel Delany, "Introduction" in Uranian worlds. LGBTテーマ扱った著名なSF作家作品としては、ロバート・A・ハインラインの『愛に時間を』(1973) がある。この作品では主要登場人物同性愛将来自由となることに強い賛意表明するが、生殖のための性は理想として保持され続けるべきだとしている。『異星の客』(1961)では、女性両性愛単なる快い刺激として描かれ男性同性愛は「間違い」として哀れに描かれている。ハインラインの性の扱い方は、トマス・M・ディッシュ評論 "The Embarrassments of Science Fiction" で論じられている。ディッシュ1968年ゲイであることを公表している。同性愛的傾向は詩によく現れており、長編歌の翼に』(1979) にもあらわれている。他の作品にも両性愛者登場する。『334』ではゲイを "republicans" と呼び異性愛者を "democrats" と呼んでいる。しかしディッシュゲイ・コミュニティのために作品書こうとしなかった。 エリザベス・A・リンレズビアンであることを公表しているサイエンス・フィクションおよびファンタジー作家で、同性愛者主人公とした作品いくつも書いている。《アラン史略シリーズ (197980) は第1作世界幻想文学大賞受賞したが、文化的背景平凡な一部として同性愛描いた初めてのファンタジー長編であり、同性愛を明確かつ共感的描いている。また第3部ではレズビアンを特に描いている。SF作品遥かなる光』(1978) では、2人男性間の同性愛描いている。また、その原題 "A Different Light" はLGBT専門書店チェーンの名前になっている。レズビアン魔法ものの短編「月を愛した女」も世界幻想文学大賞受賞しており、アメリカでは同性愛扱ったスペキュレイティブ・フィクション短編集表題作となっている。

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