ナチス・反ユダヤ主義との関係とは? わかりやすく解説

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ナチス・反ユダヤ主義との関係

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:40 UTC 版)

マルティン・ハイデッガー」の記事における「ナチス・反ユダヤ主義との関係」の解説

マルティン・ハイデッガーナチズム英語版)」も参照 ※以下、ハイデッガー没後の論争研究を記す。ハイデッガー生前出来事発言論争生涯記載1983年ハイデッガーナチ時代演説文章息子ヘルマン・ハイデッガーによって編集された『事実思想(Tatsachen und Gedanken)』が公刊された。同年ハイデッガー生徒ハインリヒ・ヴィーガント・ペチェット『星に向かって マルティン・ハイデッガーとの出会い対話 1929-1976』が刊行され、この書物は『事実思想』を多く引用した同年以降フライブルク在住歴史学者フーゴ・オットによる研究フライブルク大学学長としてハイデッガー」が連続的に公表され1984年11月3・4日にはノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥングに「ハイデッガー国民社会主義」を、1988年に『マルティン・ハイデッガー 伝記への途上で』を刊行した1987年チリ哲学者ビクトル・ファリアスは『ハイデガーナチズム』を発表し1989年加筆訂正されたドイツ語版出された。ファリアスによればハイデッガー学長就任演説で「クラウゼヴィッツとともに、こう公言する。<私は、偶然の手によって救われるなどという軽薄な希望とは縁を切る>と。」と述べているが、カール・フォン・クラウゼヴィッツ引用は『三つ告白』からで、そこには1812年の「戦争当事者プログラム」が含まれており、これはナチスから「民心高揚させる救い言葉」と賞賛され、クラウゼヴィッツは「隠れたドイツ預言者」とされ、ヒトラーも『わが闘争15章クラウゼヴィッツ引用していた。またクラウゼヴィッツ入会したキリスト教ドイツ会食会」はユダヤ人入会させない規則であったが、ここには文学者アルニムクレメンス・ブレンターノクライスト、アダム・ミュラー、哲学者フィヒテ法学者サヴィニー集まっており、ファリアスは「反ユダヤ主義キリスト教の伝統名残り」としている。ファリアスによればハイデッガーナチ入党から1945年まで党費払い続けた。 ファリアスの本は発売日当日リベラシオン紙で「ハイル・ハイデッガー」という見出し紹介されフランスで論争起こったその後イタリアブラジルオランダアメリカドイツでも論争起こり、この論争に関する論文600編を越えたフランス論争ではフェディエが「悪意をもってでっちあげたもの」と非難し、エマヌエル・マンティーノはヨーロッパ思想に唾を吐いたチリ悪党」と非難し、またファリアスの資料扱いについてガダマーは「その浅薄な理解グロテスクなかぎりであり、どうしようもない無知をさらけ出して」いると批判ジャック・デリダハイデッガー関心を寄せるであればナチスとの関係は昔から知られていたことであるし、「ファリアスはハイデッガー一時間読んでいない」と批判した。ジャック・マルローは「惨めったらしい小政治のドブ嗅ぎまわる」と非難したハーバーマスはファリアスの本のドイツ語版序文で「ハイデッガー政治的行動解明することは、何もかもひっくるめて貶めることを目的としてはならない」「後の時代生きる我々は、政治的独裁という条件下で、もしも自分その場居合わせた果たしどのように行動したかを知ることはできない以上、他の人がナチ時代にした行動やしなかった行動を道徳的に評価するのは控えめにした方がよい」し、また世界中哲学広範囲卓越した影響与え続けたハイデッガーに対して50年以上も後の今になってハイデッガーファシズムへのアンガージュマン政治的評価によって、この著作(「存在と時間」)の著作実質がその価値減じる推測するのは、本筋外れた誤りである」としたうえで、「ハイデッガー総統(Führer)を導こう(führen)と思いつかせたのは、どう見ても、大学教授の特殊ドイツ的な狂気の沙汰言わざるをえないこうした経過については、今日では、もう論争余地はない」「著作とそれを書いた個人の間に短絡的な関連をつけることは許されないハイデッガー哲学的著作が持つ自律性彼の論証の力に負っており、その点は、彼以外の哲学者著作場合と変わるものではない。そうである以上、生産的に彼を自己のものとするためには、論証仕方立入り、それをその世界観脈絡から切り離すことが不可欠なのは当然である。論証的な実質世界観深く沈み込んでいる度合いに応じて吟味検証しつつ獲得するため(sichtende Aneignung)の批判的な力が要求される。[…]彼の政治的アンガージュマンファシズム対す彼の態度変化一方とし、理性批判論証方途を―それ自身政治的な意図をもった理性批判であるがゆえに―他方としたときに、その双方の間に内的な諸関係があることを確認しておかねばならないのである」といい、ファリアスの本による議論の展開を望んだジョージ・スタイナーハイデッガー戦後ナチへの加担について謝罪しなかったのは「人間的資質において卑小な性格」で、シュヴァーベンドイツ南西部)の「農民的伝統」に取り憑かれていたからだと非難した。ジェフ・コリンズは2000年、『ハイデッガーナチス』でこの問題論じた2005年、エマニュエル・フェイは1933年から1935年にかけてのハイデッガーゼミナール分析から、ハイデッガーナチス登場以前から本来的にファシストであった論じた木田元学長として大学を守るがために指揮者カラヤンのようにナチス協力をせざるを得なかったと述べ、また「ある時腹をくくったんです。人柄は悪い、でも思想はすごい、それで何が悪い、と。」「ハイデガーやっている連中ハイデガー神格化して何でもかんでも有難い、あんな立派な人がナチスコミットするずがないなどと言い出すし、一方でハイデガー批判する連中ナチスコミットするような哲学者のものは読む必要がない読みもしない批判する読んでみればすごい思想家ということはすぐ分かる、しかしナチスコミットしたことも人柄が悪いのも事実だと認める他はない。」と述べている。また2009年には朝日新聞ナチス協力期のハイデッガー西洋文明巨大化危機意識持ち物質的でない自然観復権願ってナチス接近しアドルフ・ヒトラー指導してナチス自身考え方向向かわせることを考えていたが、イデオロギー闘争敗れた、と語る。小野真は「確定的な事実に基づきつつ、ハイデッガーの「性起」の思索本質構造が、必ずしも国家社会主義的な問題には繋がらないことが論証される」と述べている。奥谷浩一部分的にナチイデオロギー相反するとしても、全体としてナチズム思想枠内行動しており、離脱することはなかったと評している。 ザフランスキーによればハイデッガー粗野な反ユダヤ主義には距離を置いており、ハイデッガーユダヤ人古典文献学者エドゥアルト・フレンケルや物理科学ゲオルク・ド・ヘヴェシー解職されそうになったとき、阻止するための文書文部省提出したり、助手のヴェルナー・ブロックのためにも尽力して奨学金斡旋したこともあったし、ハイデッガースピノザが「ユダヤ的」であるなら、ライプニッツからヘーゲルまでの哲学もすべて「ユダヤ的」であるとも1930年代講義でのべていた。 1949年ブレーメン連続講演のなかで「農業今や機械化され食料産業であってその本においてはガス室絶滅収容所における死体大量生産と同じもの、国々封鎖兵糧攻めと同じもの、水素爆弾大量生産と同じものである」という表現使い問題とされている。しかし、ザフランスキーによればこの文章の意味するところは、アドルノホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』にも似たような基本的思考展開しており、ハイデッガーアドルノ同じくアウシュビッツ二度と起こらない」意味で書いたものであったが、「アドルノ同じよう考えには不快感を抱かなかったまさにそうした人々の中から大きな怒りの声が上がった」という。ザフランスキーによればアドルノにとってもそうだが、ハイデッガーにとってのアウシュビッツとは「近代典型的な犯罪」なのである

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