ギリシャへの憧れ――潮騒とは? わかりやすく解説

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ギリシャへの憧れ――潮騒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:28 UTC 版)

三島由紀夫」の記事における「ギリシャへの憧れ――潮騒」の解説

1951年昭和26年1月から三島は、〈廿代の総決算〉として〈自分の中の矛盾対立物〉の〈対話〉を描く意気込みで、ギリシャ彫刻のような美青年と老作家登場する禁色」(第一部)を『群像』に連載開始した。同性愛アンダーグラウンド題材としたこの作品は、文壇賛否両論大きな話題呼び11月10日に『禁色 第一部』として新潮社から刊行された。その間三島は、数々短編中間小説夏子の冒険」などを各誌発表し、初の評論集『狩と獲物』も刊行するなど旺盛な活動見せた。 しかし以前から、〈一生に一度でよいから、パルテノン見たございます〉と川端康成告げ自分の中の余分な感受性〉を嫌悪していた三島は、〈肉体的存在感を持つた知性〉を欲し、広い世界求めていた。ちょうどこの頃、父・一高時代旧友ある朝日新聞社出版局長の嘉治隆一から外国行きを提案され三島願ってもみない話に快諾した厳し審査当時GHQ占領下一般人海外旅行禁止されていたため)をクリアした三島は、同年12月25日から、朝日新聞特別通信員として約半年間の初の世界一旅行に向け横浜港からプレジデント・ウィルソン号出帆した最初目的地ハワイに向かう船上で〈太陽握手した三島は、日光浴しながら、〈自分改造といふこと〉を考え始めたハワイから北米サンフランシスコロサンゼルスニューヨークフロリダマイアミサン・フアン)、南米リオ・デ・ジャネイロサン・パウロ)、欧州ジュネーブパリロンドンアテネローマ)を巡る旅の中でも、特に三島魅了したのは眷恋の地・ギリシャ・アテネと、ローマバチカン美術館で観たアンティノウスであった詳細アポロの杯#見聞録あらまし参照)。 古代ギリシャの〈肉体知性均衡〉への人間意志明る古典主義孤独癒やされ三島は、〈美し作品作ることと、自分美しものになることの、同一倫理基準〉を発見し、翌1952年昭和27年5月10日羽田帰着したこの世界旅行記は『アポロの杯』としてまとめられ10月7日朝日新聞社から刊行された。 旅行前から予定していた「秘楽」(『禁色第二部)の連載を、帰国後の8月から『文學界』で開始していた三島は、旅行後すぐの〈お土産小説〉を書くこと回避し伊豆今井浜で実際に起きた溺死事件題材とした「真夏の死」を『新潮10月号に発表したまた、旅行前に書き上げていた「卒塔婆小町」は、三島渡航中の2月文学座により初演された。この作品は「邯鄲」「綾の鼓」に続く『近代能楽集』の3作目となり、三島戯曲中でも特に優れた成功となった。これにより三島劇作家としても本物の力量認められ始めた三島は、ギリシャでの感動続きで、古代ギリシャ恋愛物語『ダフニスとクロエ』を下敷きにした日本漁村物語構想したモデルとなる島探しを、昔農林省農林水産省)にいた父・依頼した三島は、候補の島の中から〈万葉集の歌古典文学の名どころ〉に近い三重県神島かみしま)を選んだ1953年昭和28年3月に、鳥羽港から神島赴いた三島は、八代神社神島灯台一軒パチンコ店飲み屋もない島民の暮しや自然、例祭神事漁港歴史風習漁船員の仕事取材し8月末から9月にも再度訪れ台風海女などについて取材した神島島民たちは当初見慣れない顔面蒼白〉の痩せた三島の姿を見て病気療養のために島に来ている人と勘違いしていたという。 この島を舞台にした新作創作中も、練り直された「秘楽」の連載並行していた三島は、9月30日に『秘楽 禁色第二部』を刊行し男色世界描いた禁色』が完結された。12月には、少年時代から親しんだ歌舞伎台本初挑戦し、芥川龍之介原作小説改作した歌舞伎地獄変』を中村歌右衛門主演上演した伊勢湾に浮かぶ小さな島に住む健康的素朴な若者少女純愛描いた書き下ろし長編潮騒』は、翌1954年昭和29年6月10日新潮社から出版されるベストセラーとなり、すぐに東宝映画化され三船敏郎特別出演船長役)もキャスティングされた。三島はこの作品第1回新潮社文学賞受賞するが、これが三島にとっての初めての文学賞であった。 これを受け、2年後にはアメリカ合衆国でも『潮騒』の英訳(The Sound of the Waves)が出版されベストセラーとなり、三島存在海外でも知られるきっかけ作品となった11月には三島オリジナル創作歌舞伎鰯売恋曳網』が初演され余裕感じさせるファルスとして高評価された。この演目以後長く上演され続け人気歌舞伎となった。 この時期他の作品には、『潮騒』の明る世界とは対照的な終戦直後青年頽廃孤独描いた鍵のかかる部屋』『急停車』や、三島学習院時代自伝的小説詩を書く少年』、少年時代憧れだったラディゲ題材にした『ラディゲの死』、〈菊田次郎といふ作者分身〉を主人公にしたシリーズ(『火山休暇』『死の島』)の終焉作『旅の墓碑銘』も発表された。

※この「ギリシャへの憧れ――潮騒」の解説は、「三島由紀夫」の解説の一部です。
「ギリシャへの憧れ――潮騒」を含む「三島由紀夫」の記事については、「三島由紀夫」の概要を参照ください。

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