ロッカーアーム 摩擦抵抗

ロッカーアーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/18 03:16 UTC 版)

摩擦抵抗

ロッカーアームはその機械要素上、接触面や支点に大きな摩擦抵抗が発生しやすい。これを解決する為に通常は各接触面にエンジンオイルを供給するオイル経路が設けられる事が多いが、更なる抵抗軽減策としてローラーロッカー(en:Roller rocker)構造が採用される。

ローラーロッカー

ローラーロッカーは、力点にニードルローラーベアリングを内蔵したローラーを備えたもので、機械要素としてのカムフォロア(en:Cam follower)の概念を導入したものである。ローラーがカムとロッカーアームの間で回転することで摩擦抵抗を低減し、よりスムーズな動作を実現する。ローラーロッカーアームに対して、通常のロッカーアームはスリッパー式と呼称されることが多い。シーソー式、スイングアーム式の双方にこの方式が存在する。

カムシャフトを回転させるための損失は、バルブスプリングが硬くなる程大きくなる。高回転エンジンになるほど、カムへの追従性を上げるためにバルブスプリングに硬めの物を選択せざるを得なくなるので、このような形式の物が登場した。OHCの場合にはアームのカムシャフト側接触面にのみローラーを備えるが、OHVの場合にはプッシュロッドのカムシャフト側先端にローラーを設けた上で、ロッカーアームのバルブ側接触面にもローラーを設けた構成を採用する場合も多い。両者とも高性能なものになると、ロッカーアームの支点にもベアリングを内蔵している物もある。

メリットとしては直打式やスリッパー式が滑り摩擦なのに対して、ローラー式では転がり摩擦が主体となるためフリクションや摩耗を低減する事ができる。 特に境界摩擦が支配的となる低回転域ではその恩恵は大きい。近年では低粘度な省燃費オイルの使用が多くなってきているが、低粘度なほど境界摩擦は増えるためローラー式のメリットはさらに大きくなっている。 現段階では低粘度オイルの規格上のHTHS粘度は2.6cP以上となっているがこれを下回ると滑り摩擦条件下では摩擦と摩耗が増大するとされている。今後さらにオイルが低粘度化された場合、ローラーロッカーアームはさらに重要になってくるものと思われる。

欠点としては、ローラーが付加される分、アームの慣性重量がスリッパー式よりも増大しがちな点や、ローラーのベアリングが摩耗するためスリッパー式よりも耐久性に劣る点などが挙げられる。ローラーの材質によってはカム山への攻撃性も高まる[3]場合がある。また、ローラーを採用する事でカム山との接触面の曲率がスリッパー式から変化する事が多い為、同じバルブタイミングでも異なる形状のカム山が必要となる[4]場合も多い。このような理由から、ローラーロッカーアームを採用する場合、ローラーカムと呼ばれる専用のカムシャフトと組み合わせることが一般的[5]である。

現在では省燃費・高回転を謳うエンジンの多くに採用されている技術だが、海外ではフォードV8ハーレーダビッドソンミニクーパーなどのOHVエンジン向けのアフターパーツとして販売されていることも多い。アフターパーツのローラーロッカーアームは、アーム重量を少しでも減らすためにアルミ合金などの軽量な材質を使用していることもあり、OHVエンジンを高回転・高出力型にチューニングする際には欠かせないパーツの一つともなっている。

以前までの国産車では小排気量車が多くコスト等の制約があったこともありローラーフォロワーを採用する車両は海外に比べあまり多くはなかったが、現在では多く車両で採用され主流に近いものとなっている。同じエンジン型式であっても途中から燃費向上などの為に直打式やスリッパー式からローラー式に変更されたケースもある。




  1. ^ ただしこれはスイングアーム式と単純比較した場合の一般論であり、実際には材質や形状を工夫することでたわみを最小限に抑えている場合がほとんどである。
  2. ^ DOHCは構造上の理由から直打式が多く、ロッカーアームそのものを採用することが多くなかったが、燃費性能向上のため直打式から摩擦の少ないローラーロッカーアームへの変更が近年増えている。
  3. ^ スリッパー式のアームの場合、カムへの負担を軽減する目的で擦動面を大型化する場合が多いが、慣性重量の関係でローラー式ではこのような改良が行いにくい。
  4. ^ Understanding Camshaft Fundamentals
  5. ^ 同形式のエンジンでローラー式とスリッパー式の両方が設定されている場合、ローラー式の方が支点と力点との距離が短い場合が多い。これは慣性重量を減らすための工夫の一つで、カム山を少し高くすることでスリッパー式と同様のバルブリフト量を確保している。このような手法を採っているエンジンでローラー式アームをスリッパー式ヘッドに流用する場合、カムシャフトもローラー式の物に同時に交換しないとロッカーアーム比が変化してバルブリフト量やバルブオーバーラップが減少してしまい、性能低下に繋がる。





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