軍事同盟として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 02:50 UTC 版)
SCOは加盟国によるユーラシア一帯の安全保障の確立を主な議題としている。しばしばそれはテロ・宗教問題・分離主義についての意見交換へと発展している。SCOは加盟国による軍参謀総長会議や国防相会議も行っている。 2002年6月7日、アメリカ合衆国大統領のジョージ・W・ブッシュによって対テロ戦争が宣言された世界情勢を受け、サンクトペテルブルクにおいてSCO地域対テロ機構の創設に関する協定が署名された。SCO地域対テロ機構執行委員会の書記局を上海に、本部は米軍基地が当時開設されていたウズベキスタンの首都タシュケントに設置した。 2005年8月、初の中露共同軍事演習「平和への使命2005(英語版)」を行い、平行してオブザーバーであったインドとの露印軍事演習も開催された。中国、インドとの軍事演習を皮切りにロシアはSCOを通じた軍事協力に積極的な行動を示す様になった。同年、SCOは[中露が対米同盟を組むことを懸念した米国のオブザーバー加盟申請を拒否し、アフガニスタンのハーミド・カルザイ政権が半ば「アメリカの傀儡」である事を理由に加盟申請を拒否したり、加盟国ウズベキスタンに駐留するアメリカ軍の撤退を要求するなど、米国との対立路線を形成した。 2007年、ビシュケク・サミットでテロ組織や分離独立運動など、加盟国に脅威を与える勢力に協力して対抗する長期善隣友好協力条約など8条約に調印、サミットでは間接的に「ワシントンへの反感」が示されている。同年にはSCOは集団安全保障条約機構(CSTO)とも共同活動に向けた合意を結んだ。同年にSCO加盟国による6カ国合同軍事演習「平和への使命2007」(中国語:和平使命、ロシア語:Мирная миссия、英語:Peace Mission)を行った。この軍事演習は中国陸軍1600名、ロシア陸軍2000名を中核に各国の陸軍部隊が一堂に会する大規模なもので、中露以外にはカザフスタン・キルギス・タジキスタンが特殊部隊や空挺部隊を派遣した他、ウズベキスタンが軍高官からなる将校団を派遣した。その後も2009年、2010年、2012年、2013年、2014年、2016年と1~2年に1回のペースで「平和への使命」合同軍事演習が行われ、恒例化している。 2009年、エカテリンブルク・サミットではイランのマフムード・アフマディーネジャード大統領がSCO議会でアメリカを批判、対米同盟としてのSCOに強い期待を寄せる演説を行った。 2014年、地域対テロ機構(RATS)は設立から約1000件のテロを防止して650人のテロリストの逮捕に成功したと発表している。SCOはサイバー戦争も安全保障上の脅威に位置付けており、2015年10月に初のサイバーテロ対策合同演習を廈門で行った。 2017年6月、アスタナのサミットで一帯一路への支持などを掲げるアスタナ宣言が採択された。また、同時期のアスタナ万博にはパビリオンを出展した。同年10月、2009年に中断されていたSCOアフガニスタン連絡グループの活動を再開し、モスクワで会議を開催した。 2018年6月、青島サミットで米国のドナルド・トランプ大統領による保護貿易主義などの政策で意見対立が起きていた同時期のG7の対抗軸としてアピールし、アフガニスタン紛争やシリア内戦の問題の他、北朝鮮核問題やイラン核問題などに共同で取り組む姿勢で一致した。訪中したプーチン大統領は中国最高位勲章を贈られ(前年7月の非旧ソ連圏の外国要人初のロシア最高位勲章の習主席の授与への返礼)、2014年にロシアによるクリミアの併合でロシアを除外したG7を人口や購買力などで上回るSCOの枠組みを重視する意向を述べた。また、オブザーバーのモンゴル、イラン、ベラルーシ、アフガニスタンの大統領も出席した。同年12月、アフリカ連合(AU)と対テロ協力の合意を締結した。 2018年8月、新たに上海協力機構へ正式加盟したインド、パキスタンを加えた8カ国合同軍事演習「平和への使命2018」を行った。歴史的に印パ戦争で争ってきたインドとパキスタンにとって史上初の国連平和維持活動以外での軍事協力となり、両国の仲介役として存在感を発揮した。2018年9月、中国とオブザーバーのモンゴルが初参加したロシア主導の軍事演習「ボストーク2018(ロシア語版)」はソ連最大の軍事演習である「ザーパド81」を超える規模であり、その際にロシアのセルゲイ・ショイグ国防相がモンゴルと中国を「同盟国」と呼んで注目され、視察に訪れたロシアのウラジミール・プーチン大統領も「我々は必要であれば同盟国を支援する」と演説して中国軍兵士4名とモンゴル軍兵士2名に褒章のメダルを与えた。 また中国とロシアはアデン湾、東シナ海、日本海、地中海、オホーツク海、南シナ海、バルト海、南半球などで海軍の合同演習も行うようになり、2019年12月にはアメリカ合衆国と緊張が続いていたオブザーバーのイランとともに中国とロシアはオマーン湾で合同軍事演習を行った。 2019年6月、ビシュケクのサミットでの共同宣言で加盟国が参加しているアスタナのシリア和平協議とSCOアフガニスタン連絡グループやイラン核合意への支持、中露も配備しているS-400の導入撤回を加盟国のインドやトルコに迫っているアメリカを念頭に一方的なミサイル防衛強化への牽制などが盛り込まれた。自然災害への対応にも取り組み、2019年11月に初の震災に対する捜索救助の合同演習をニューデリーで行った。 2021年、米軍撤退に伴ってターリバーン政権が復活したアフガニスタンに包括的な政府の構築を呼びかけ、アフガニスタン情勢に関して集団安全保障条約機構との合同サミットも初めて開催された。
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