建築分野における図面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/03 09:48 UTC 版)
詳細は「建築図面」を参照 図面は共通言語であり、情報伝達ツールであり、法規をクリアした証明にもなるが、建築は一品ずつの個別生産品であり、同じものがないといっても過言ではなく、標準化されたものでも開口や仕様は違っている。そして、人の生活を守り育むための重要な器であり、高価な財産でもある。そのため、関わるすべての人に間違いなく正確な情報、データが行きわたることが必要となる。 また、設計者の意図、コンセプトが織り込まれており正確に伝わらないと意図するものはできない。 現在、ほとんどの図面はCAD (Computer Aided Design)で描かれており、そのデータを利用して、打合せを行うことが多くなっている。 最新のCADはBIM (Building Information Modeling)と呼ばれるものに移行しつつあり、光·風·音のシミュレーションや施工検討やコストコントロールなどが基本設計段階で検討できるようになっている。 建築製図には、いくつかの約束事がある。 日本工業規格(JIS A 0150. JIS Z 8311. JIS Z 8312, JIS Z 8314、JIS Z8317)、国際規格(IS04068. IS07519、IS08048)、建築工事設計図書作成基準(国土交通省)などがあり、日本においては、JIS規格に合わせて製図が行われているが、ISO規格にも準拠するように調整が進められている。国土交通省の作成基準は、日本の国の基準であり、公共施設はこの要領で作成されている。 建築分野では、設計段階で細部まで詳細な図面を作図しておらず、施工段階で施工のための詳細図面を描きながら施工していく。この図面を施工図と呼ぶ。 設計段階での設計図は基本設計図と実施設計図とに分けられる。基本設計図は事前の見積もり積算、許認可の取得のために、あらかたの大きさや、外観などを書く図面。 建築確認申請では採光面積計算表と壁量計算書、排煙計算書が必要になる。 主には次の図面がある。 (基本設計図)これらの図面があれば確認申請の大部分の図面を網羅。そして構造関係と求積関係の図面つまり、大きなハードルである法律確認ができる体裁が必要。 周辺付近見取図 付近の地域で建築の対象予定地がどこかを示した図面。敷地案内図として近くの駅や目印になるような施設からの道在案内を盛り込む場合もある。できるだけ図面の上方向が北になるように描くのが共通ルールであるが、配置図との兼ね合いで変える場合もある 配置図 対象地の敷地においてどの位置に建物を建てるかを示した図。建物の位置を決める図で基準点(ベンチマークや敷地境界など)からの距離を設定し位置を決めている。1カ所だけでは決まらないので2カ所決めておく場合もある。建物の位置は設計段階は配置図できめられるが、施工に入って最終的な位置を決めることになる。 平面図 各階ごとの間取り図。玄関や部屋割りと戸口や窓位置から、柱や筋交いの位置などを示されている。間取り、各室の用途及び床面積がわかる図面で家具や設備を記入されていることもある 立面図 建物を東西南北の面から見た姿図。縮尺と開口部位置がわかるようにし、高さの情報を示ず図面で、延焼のおそれなど法規上の位置を示す線を記入することもある 断面図 建物を切断時の切り口の姿図。地盤面(設計時に算出する)と各階の床および天井の高さ、軒およびひさし並びに建築物の各部分の高さを記入する 矩計図(断面詳細図) 建物の断面図の詳細版。壁の状況から基礎形状と床、天井裏などでの構成部材の材質や寸法などを表現し構造部材を把握するとともに、基礎や天井や建具などの高さ関係を確認することができる。建物の各部の高さを表記し基礎、床組み天井、屋組み、開口部、建具材などの寸法を記入することで納まりや仕上げを表現しその建物の重要な部分を集中的に記入して表現する図面 求積図 敷地、建築面積、床面積に関する求積を示した図 構造図 地下室や特殊な基礎を計画する場合、その部分についての構造を示した図で、建築確認申請に必要となる (実施設計図) 表紙 工事事名称、図面作成年月日、製作会社名を記入してあるもの。 特記仕様書 建築では図面として他設計図と同サイズで作製されるが、内容は図面では表現できない工事に関する事項を表形式で文章化している。素材の基本的性能や仕様についてや仕上材などの詳細について表現しているが、使いたい素材やメーカーを記入したり検討したい素材や仕様を記入することもある。設備機器などは品番やメーカー名等も記載されている。 仕上表(内部仕上表) これも特記仕様書同様図面として作製され、建物の各部の仕上材の種類や厚み、内外部の床・壁・天井などの仕上げを表にして表している。 各階平面図(芯線図)と平面詳細図 平面図を拡大し、建物部屋に細かい部分の寸法や形状を詳細に表したものが平面詳細図で、壁厚や造作家具の寸法、設備機器の具体的な取り付け位置、窓幅や取り付け位置などが詳しく表現なされている。 梁伏図(基礎伏図、床伏図、屋根伏図・小屋伏図、天井伏図) 床下や天井裏など、目に見えない部分の構成や構造部材を表現した図で、基礎伏図は最下階の床を剥がして上から見た基礎の姿を表した図で、床伏図は上から見た土台(大引き、根太など)の姿図。屋根伏図は屋根を真上から見た図でその状態を平面的に表現している。小屋伏図は屋根、瓦などをの家屋で、その上から見た垂木、小屋梁、母屋などの姿の図。これらは屋根の形状や寸法、仕上げ材などを確認できる。天井伏図は天井を見上げたときの姿図でその状態を表現し、照明器具やトップライト、天井埋め込みの設備等、天井に取り付けられる機器の位置関係を確認することができ、天井を加工する際にこの図面で検討確認を行う。 軸組図 施工する建物の各通り心ごとで切断して見た姿で骨組みを表した図面で土台から柱と梁、構造によっては小屋束や母屋部分などの架構と寸法や継手、材種などを表した図面。 建具表 建具の形状、寸法、姿図、仕上げ材などが示されたもので、ドアやサッシなど室内ほかに設置される全ての建具を一覧表にしたもの。建具の姿図や寸法、材質、付随する建具金物、取り付ける場所までが表現される。 室内展開図 各部屋の壁面を描いた図で、部屋の真ん中に立ち四方の壁を見た状態を表現したもの。各壁面に見えてくる、窓やドア、回縁や幅木、造作家具や設備機器などが表現され、さらに天井の高さや窓の取り付け位置、棚の高さなども記入する。 電気設備図 電気設備の系統や照明、コンセント、スイッチなどの位置を示した図 空調換気設備図 空調や換気の系統、エアコンといった室内機や室外機、換気扇の設置位置を表した図 給排水設備図 トイレや洗面所、浴室などの給湯、給水、排水の給排水系統や衛生設備機器の取り付け位置などを示し図で系統を表したもの。 ガス設備図 ガス栓などの位置や給湯器やガス調理機器、ガス配管の系統やガス関係機器の取り付け位置などを示した図 外構図 建物の外回りの状態を示した図で敷地の建物を除く部分がどのように整備されるかを表す。門扉、塀、カーポート、植栽、玄関ポーチやテラスなどの位置や形状、材質や高さ関係などを現す。室内と屋外のつながりや人の動線などを検討することができる。 施工図 実際に施工することになったときに、詳細の収まりを考え平面図、立面図、展開図、天井伏図などとして書く図面。躯体図、平面詳細図、配管図、プロット図、割付図等。 配筋図 鉄筋コンクリート構造物において、コンクリート内部の鉄筋の配置を示した図面。このほか、鉄筋の加工形状を示した加工図、鉄筋の材料集計を行なう鉄筋表などもある。
※この「建築分野における図面」の解説は、「図面」の解説の一部です。
「建築分野における図面」を含む「図面」の記事については、「図面」の概要を参照ください。
- 建築分野における図面のページへのリンク