コンピュータソフトウェアとは? わかりやすく解説

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ソフトウェア

(コンピュータソフトウェア から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/27 08:52 UTC 版)

ソフトウェアの階層図。上からユーザー(人間)、アプリケーションオペレーティングシステムハードウェア。通常はアプリケーションとオペレーティングシステムが「ソフトウェア」である。

ソフトウェア: software)は、コンピューター分野でハードウェア(物理的な機械)と対比される用語で、何らかの処理を行うコンピュータ・プログラムや、さらには関連する文書などを指す[1][2]

ハードウェアの対比語としてのソフトウェア

「ソフトウェア」は「ハードウェア」の対比語であり、コンピュータの分野以外でも、物理的な装置の対比語として使われている。

DVDなどで物理的な記録メディアに対する映像(動画)や音楽等のコンテンツ、組織・都市・軍事などで施設・設備・車両などに対する規則・運用・教育などを意味する[3]

ある機能をもつソフトウェアに対して、「ソフトウェア」という言葉が接頭辞形容詞的に用いられることがある。エンコードをするソフトウェアを「ソフトウェアエンコーダ」、DVDを再生するソフトウェアを「ソフトウェアDVDプレーヤー」と呼ぶことがある。情報を処理する(DVD再生の場合は、DVDに収録されたデジタル画像データを可視化する)際に、専用のハードウェア(DVD再生機)で処理されるか、パーソナルコンピュータなどの汎用的なコンピュータ上のソフトウェアで処理されるかを区別するためである。

たとえば、LSIなどを例にとると、LSIの物理的な回路そのものはハードウェアであり、その回路によって表現される処理手順はソフトウェアと考えられる。

一般的なソフトウェアは、補助記憶装置の中に機械語として記録されている。なお機械語は中央処理装置(CPU)の製品種別ごとに異なっている。ソフトウェアの利用時には補助記憶装置の内容が主記憶装置に読み込まれた後、中央処理装置において、データの移動、計算、制御フローなどの処理が実行される。これにより機械語は、コンピュータの状態を次々と変化させる。従ってソフトウェアは、ハードウェアの状態を変化させる命令列と考えられる。

記憶装置に異なる命令群を読み込んで計算を制御する概念は階差機関の一部としてチャールズ・バベッジが考案した。これら、ほとんどの近代ソフトウェアの基礎となる理論はアラン・チューリング1935年の論文 Computable numbers with an application to the Entscheidungsproblem で初めて提唱された[4]

ソフトウェアの表現である機械語は、中央処理装置への命令となる2進数の値から構成されている。機械語の種類には、記憶装置間でのデータの移動や、条件による処理の分岐命令、演算などがある。これらを組み合わせて、1つずつ順に演算が実行される逐次処理や、条件つきで実行される処理、繰り返し実行されるループ処理などが実現される。一連の命令列をひとまとめにしたものをサブルーチンと呼び、他のサブルーチンを「呼び出す」命令もある。

例えば、メニューから 「コピー」 というエントリを選択したとき、ソフトウェアがどのように機能するか考えてみよう。この場合、条件付き命令列が実行され、メモリ上の「文書」領域にあるデータからテキストが、一般に「クリップボード」と呼ばれる中間的記憶領域にコピーされる。別のメニューエントリである 「貼り付け」 が選ばれると、ソフトウェアはクリップボードから特定の領域にテキストをコピーする命令列を実行する。

中央処理装置が複数あるシステムでは、命令列は複数同時並行的に実行できる(マルチプロセッシング)。

性質

複製コストがゼロ

ソフトウェアはコストゼロで複製できる。すなわちソフトウェア量産の限界費用は0である[5]

これはソフトウェアがデジタルデータの一種であることに由来する。デジタルデータはゼロコストで複製(コピー・アンド・ペースト)が可能であるため、ソフトウェアもゼロコストで複製できる。同じ大根を1本、車を1台、マッサージを1回追加で生産するには少なくないコストが発生するため、複製コストゼロはソフトウェアがもつ著しい特徴の1つである。

分類

一般にソフトウェアは、ワープロソフトなど特定の作業や業務を目的として開発されたアプリケーションソフトウェア(応用ソフトウェア、アプリ)と、ハードウェアの管理や基本的な処理をアプリケーションソフトウェアやユーザーに提供するシステムソフトウェアの2つに分類される[6]


システムソフトウェア

コンピュータのハードウェアを管理・制御するなど、コンピュータの稼動自体に必要となるソフトウェアである。 典型的なシステムソフトウェアとして、オペレーティングシステム (OS) があり、様々なソフトウェア処理のプロセスに対し、CPUやメモリの割り当てを管理したり、記憶装置にデータファイルを正しく読み書きできるようにするなど、さまざまな処理を行っている。キーボードやマウスなどの入力機器からの信号を、後述のアプリケーションソフトウェアに通知したり、アプリケーションソフトウェアの要求に応じて、画面への図形や文字の表示を行うのも、オペレーティングシステムの機能である。

パーソナルコンピュータをはじめとする、家庭用のコンピュータ機器では、これらのソフトウェアは購入時にコンピュータ本体に同梱あるいはプリインストールされていることが多い。

そのほか、オペレーティングシステムでは提供されない機能のうち、さまざまなアプリケーションソフトウェアで利用される一般性のある機能を提供するものを、ミドルウェアという。


アプリケーションソフトウェア

アプリケーションソフトウェアは、利用者の目的に応じた機能を提供するソフトウェアである。

一般事務で利用されるワープロ表計算ソフトウェアを初め、娯楽を目的としたゲームソフトや、工場の作業を自動化するファクトリーオートメーション、事務手続きや経営を管理するためのビジネスソフトウェアブラウザ、教育や医療などあらゆる目的に応じてソフトウェアが開発されている。ソフトウェアの開発自体に使われるプログラミングツール[7]もある。

これらのアプリケーションソフトウェアは、既製品をパッケージソフトウェアなどのかたちで購入するほか、利用者自身が、目的を果たすソフトウェアを開発する場合もある。 大規模なものでは銀行の預貯金口座を管理する勘定系システムJRの「みどりの窓口」で使われるマルスなどのオンラインシステムを始め、販売や営業、生産などの各種業務管理システムなどの個別開発のソフト群(各企業内でのコンピュータシステム情報システム)の一部を形成する)から、小は表計算ソフトのテンプレート、ワープロソフトのマクロ、科学技術シミュレーション、グラフィックスやアニメーションのためのスクリプトなどが含まれる。電子メールフィルタなども一種のユーザー作成ソフトウェアである。ユーザーは自身の作成したこれらのソフトウェアの重要性に気づいていないことが多い。ユーザー作成ソフトウェアが購入されたアプリケーションソフトウェアとうまく統合されていると、多くのユーザーはその区別ができない。

ソフトウェアの制作

ソフトウェアの制作・開発を主な事業としている企業であっても、製品をパッケージ等の形でユーザーにライセンス販売しているのは一部である。

ライセンス販売以外のソフトウェアビジネスとして、以下のような形態がある。

  • 技術・役務の提供

ITコンサルティングや技術者派遣など、顧客が主体となっているソフトウェア開発に参加して、ソフトウェア開発技術や労働力を販売するビジネス。

  • ソフトウェアサービスの提供

ソフトウェアや情報システム等を自社で稼働させ、顧客がシステムを利用することによって、売上を上げるビジネス。SaaSクラウドコンピューティングのようにシステム利用者が直接使用料を支払う形式のほか、ネットショッピング等のシステムを、出品者に利用させて手数料を課金する方式や、ソーシャル・ネットワーキング・サービスやウェブサイト検索エンジンを無償で提供し、システムの一部分に表示させる広告を販売するなどの方法で収益を上げる形式もある。

  • ソフトウェアを組み込んだ機器や製品の販売

スマートフォンやネットワーク機器など、高度なソフトウェアを搭載した機器や製品を販売するビジネス。

また、インターネット上で無償で公開されているオープンソースソフトウェアの開発に協力し、成果を自社のサービスなどに組み込むことが広く行われている。

企業別の売上高

2011年における企業別のソフトウェア売上高は以下の通りである[8]

順位 企業名 (国) ソフト売上高
(百万ドル)
全売上高
(百万ドル)
全売上高に占める
ソフトウェアの割合(%)
従業員数
(千人)
1 IBM () 84,808 106,916 79.3 433
2 マイクロソフト (米) 60,399 69,943 86.4 90
3 ヒューレット・パッカード (米) 39,171 130,687 30.0 350
4 オラクル (米) 28,678 35,622 80.5 108
5 アクセンチュア(米) 25,507 27,353 93.3 236
6 EMCコーポレーション (米) 20,008 20,008 100.0 54
7 SAP () 18,464 18,464 100.0 56
8 CSC (米) 16,042 16,042 100.0 91
9 キャップジェミニ () 15,546 15,546 100.0 120
10 日立製作所 () 14,916 21,526 69.3 324

品質

ソフトウェアの品質としては、利用者や開発者の立場から、様々な尺度が考えられる。

ソフトウェアと法律

資産としてのソフトウェア

ソフトウェアは法律上、知的財産として扱われ、著作権法や特許法によって保護される。

一般的には著作者がそのソフトウェアの利用範囲を明確にした利用許諾契約書を用意しており、ソフトウェアの利用者はこれに合意しなければ利用できない。この契約事項または合意事項を、ソフトウェアライセンスという。著作権者が利用許諾契約書を用意していない場合は著作権法の範囲での利用が可能である。

また、コンピュータを利用する発明について特許権が認められる場合がある。

その他、日本の使用者からみると、会計処理上(税法上)は、無形固定資産として扱われる。減価償却期間は5年間での定額償却である。

医療用ソフトウェアの規制

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(略称:医薬品医療機器等法、薬機法、旧称:薬事法)」により、疾病診断用プログラム、疾病治療用プログラム、疾病予防用プログラム、および、それらを記録した記録媒体についても、副作用又は機能の障害が生じた場合において、人の生命及び健康に影響を与えるおそれがある場合には、医療機器として制限を受ける。これは、医療機器のIT化に伴って、医療的な効果を謳うソフトウェア単体についても他の医療機器と同様の規制が必要になったためである(医薬品医療機器等法第23条の2関係、医薬品医療機器等法第39条関係)。

脚注

出典

  1. ^ - ソフトウェア(大辞林、ブリタニカ国際大百科事典)
  2. ^ ソフトウエア・通信業界とは - 就活準備 - マイナビ2025”. job.mynavi.jp. 2024年2月9日閲覧。
  3. ^ software..(n.d.). Dictionary.com Unabridged (v 1.1). 2007年4月13日閲覧, from Dictionary.com website: http://dictionary.reference.com/browse/software
  4. ^ Hally, Mike (2005:79). Electronic brains/Stories from the dawn of the computer age. British Broadcasting Corporation and Granta Books, London. ISBN 1-86207-663-4.
  5. ^ "デジタルデータでは、ほぼ完全な複製を、追加的費用すなわち限界費用がほぼゼロで行うことが可能である。" (2)2つ目のキーワード:限界費用 of 総務省. (2019). 情報通信白書 令和元年版.
  6. ^ 「メディアリテラシ」(Computer Science Library 15)p36 植田祐子・増永良文著 サイエンス社 2013年8月10日初版発行
  7. ^ 2003年の「基本情報技術者テキスト No.1 コンピュータシステム」の139、140ページにおいては、これを「言語プロセッサ」としてOSの構成要素に含めていた。
  8. ^ 地理 統計要覧 2014年版 ISBN 978-4-8176-0382-1 P,104

関連項目

外部リンク


コンピュータソフトウェア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 10:58 UTC 版)

海賊版」の記事における「コンピュータソフトウェア」の解説

コンピュータソフトウェアに関しては、近年ブロードバンド普及により、WinMXWinnyなどを用いた、不正コピーソフトウェアの交換等が往々にして行われている。 2011年IDCによる世界116か国を対象実施した第9回BSA世界ソフトウェア違法コピー調査」で日本違法コピー率は前年比1ポイント増の21%となりPCソフト違法コピーランキングにおいて、米国ルクセンブルクについで3位となった前年同率1位から下降した日本損害額は18.75億USドル(約1,500億円)に上り前年同じくワースト10になった。 ワーストランキングでは上からジンバブエジョージア当時グルジア)、リビアバングラデシュモルドバでありこの5か国の違法コピー率は90%以上である。違法コピー率の世界平均42%だが、調査対象国半数62%以上を示しているという。損害額合計は約634ドル(約5兆745億円)で、調査開始時の2倍以上に増加している。 また、秋葉原新宿などの繁華街最新ソフトと称しパソコンソフトゲームソフト不正コピー商品外国人路上販売している。「大阪日本橋」でも露天販売している所が存在し暴力団資金源一部になっている販売されているソフトは大抵、名作が多い。1980年代には、パソコン用ソフトウェアレンタル店存在していた。 また、Yahoo! オークション初めとするインターネットオークションサイトにて、不正コピー商品販売する業者多く中には出品ページにて正規品かの様偽って販売する業者や、不正コピー品を販売する業者数多く存在する。 その一方でカジュアルコピー組織内不正コピー呼ばれる友達同士会社学校の中などで、違法行為であるとは知らず、あるいは非商用だからいいと著作権法曲解してコピー行為をしている事例は昔から多く大きな問題とされている。 また、家庭用ゲーム機ではROMバイパス通常いわゆるMODチップ呼ばれるPICマイコンクラック用のプログラム書き込んだものを使用したり、ゲーム機パラレルバス端子ついている物は、そこからクラック用のプログラム流し込んだりする手法取られる)などを取り付けて不正コピー検査するシステムスキップさせたり、コピーソフト読み込ませる前に特殊なソフトウェア読み込ませて、コピーチェックを迂回したりする行為見受けられ1999年平成11年10月1日から日本ではこの手商品の販売不正競争防止法著作権法などで禁止されている。 コンピューターソフトウェア場合不正コピー品の正式な用語としては、パイレーツ版であるが、オリジナル単純な模倣品複製品デッドコピー呼ばれオリジナル土台異なブランド改変したものパイレーツ版として区別する場合が多い。 また海賊版は、パイレーツ版やデッドコピー版の中でもコピープロテクションクラックした版を特に指す場合使われる事が多い。前述音楽領域での基準言えばゲームソフトウェアデータ(大抵はプログラム以外)を独自に改変した、いわゆるMOD版やハック版も海賊版該当するはずだが、これらは通常海賊版とは別ものとして扱われることが多い。 中国ではWindows 7はじめとするOSや、各種ソフトウェア海賊版氾濫し、そのプリインストール機も数多く流通しているなど、正規品販売多大な影響損害)を与えている。

※この「コンピュータソフトウェア」の解説は、「海賊版」の解説の一部です。
「コンピュータソフトウェア」を含む「海賊版」の記事については、「海賊版」の概要を参照ください。

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