ラッシュアジャスター 欠点

ラッシュアジャスター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/05/31 02:37 UTC 版)

欠点

ラッシュアジャスターには多くの潜在的な問題点が存在する。駐車中にラッシュアジャスターからオイルが抜けてしまうことで、再始動の際にやかましいタペット音[2]が発生する場合がある。通常こうした騒音は1秒から2秒程度で収まる場合が多く、長くても2-3分以内で収まるようであれば、それほど重大な問題とは考えられないとされる。いつまでもタペット音が収まらない場合には、ラッシュアジャスターへのオイル供給が妨げられているか、或いはラッシュアジャスターの一つ以上がピストン部の摩耗や内部のスプリングの不具合により破損や動作不良を起こしていることを示していると考えられる。こうした場合、バルブが完全に開ききらなくなる為にバルブリフトが低下しているのと同じ状態になり、性能が低下してしまう。ピストン部のシールの気密性低下により、圧縮力が加わった際にオイルが流出してしまう状態も、こうした不具合を引き起こす要因となる。

ある特定の状況では、ラッシュアジャスターはポンプアップと呼ばれる症状を起こし、負のバルブクリアランス[3]が形成されて、バルブが完全に閉じきらない状態に陥ることがある。こうした症状はそのエンジンの最高回転域で極端な遠心力によってラッシュアジャスターが伸び切り、同時にオイルを必要以上に吸い込んだ状態となってしまう事で発生する。多くはバルブサージングなどと共に発生し、エンジン性能を制限する要因となる。また、ピストンとバルブが接触するバルブクラッシュを引き起こしたり、バルブ当たり面やバルブシートを焼損する重大なトラブルを引き起こす可能性がある。

以上の全てのケースにおいて、エンジンオイルの粘度や品質についてメーカーの指定に従うことがこうした事態を予防するためには重要である。逆に言えば、エンジンオイルの品質や粘度にラッシュアジャスターの安定した動作性能が完全に左右されるという事でもある。ラッシュアジャスターの気密性の要求に対して粘度があまりにも低すぎる場合には、バルブトレーンにラッシュアジャスターが押された際にオイル抜けを起こしてしまいやすくなり、逆にバルブトレーンの油圧系統の要求に対して粘度があまりにも高すぎる場合には、十分なオイルがラッシュアジャスターに送り込まれにくくなる。いずれの場合もバルブクリアランスが広がって大きなタペット音が発生する要因となる。

また、アジャストスクリューやシムと比較して部品が大型化し、慣性重量がどうしても重くなる欠点も存在する。特にスポーティなセッティングを施された直打式OHCでは、重量の増加が高回転域での深刻な問題となることもある為、普及グレードでは直打式またはロッカーアーム式ラッシュアジャスター、最上位グレードではシム式タペットを採用[4]して差別化を図る場合もある。




  1. ^ これに対して、従来型の手動調整式のタペットはソリッドリフター(solid lifter)やメカニカルリフター(mechanical lifter)と呼ばれる。
  2. ^ バタバタジャーといった規則的な連続音がシリンダーヘッドから響くことが多い
  3. ^ バルブクリアランスが0を超えてマイナスとなる=常時カムにバルブが押された状態になる。
  4. ^ 普及価格帯のRB20DE/25DEではHLAであるが、最上位の日産・RB26DETTでは敢えてシム式を採用してチューニング耐性を優先している日産・RBエンジンなど
  5. ^ シーソー式HLA
  6. ^ スイングアーム式HLA
  7. ^ 直打式HLA
  8. ^ 挟角DOHCのスバル・EG33エンジンなど
  9. ^ Schaeffler Automotive Aftermarket Germany  | Products  | Switching tappet
  10. ^ Schaeffler Automotive Aftermarket Germany  | Products  | Switching pivot element
  11. ^ Schaeffler Automotive Aftermarket Germany  | Products  | Switching roller tappet
  12. ^ 通常は細い棒でチェックボールを押し込んでオイルを排出しなければ圧縮できない





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