ぜんまい【発=条/撥=条】
ぜんまい【×薇/紫=萁】
撥条
発条
紫萁
ゼンマイ
紫萁
薇
銭巻
ゼンマイ ゼンマイ科
|
芽 | 葉 | |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
|
DATA |
春の山の幸といえば「ゼンマイ」と直ぐ名が出てくる山菜の一つ。 |
狗背
薇
ゼンマイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 15:51 UTC 版)
ゼンマイ | |||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() ゼンマイ
| |||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||
Osmunda japonica Thunb. (1780) [1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ゼンマイ |
ゼンマイ(薇[4]、学名: Osmunda japonica)は、ゼンマイ科の多年生シダ植物。各地の丘陵や草原に生える。春に芽生えた栄養葉は、山菜として食べられる。
特徴
日本と東アジア原産[5]。日本では北海道から沖縄まで[6]、国外では樺太、朝鮮、中国からヒマラヤ、東南アジアの一部まで分布する。各地の平地から山地まで、丘陵地帯、谷間、草原などの山野、湿った土手や斜面、湿原、川岸に群生する[7][4][8]。水気の多いところを好み、渓流のそばや水路の脇などによく出現する[7]。
多年草[4]。地上部に茎がなく[4]、地下茎(根茎)は塊状に太くて短く[7]、斜めから立つ。地下茎から葉を束生して[4]、高さ0.5 - 1メートルになる。新芽は多くのシダ類と同様に内側にきれいなうずを巻き、その表面は褐色を帯びた白い綿毛で覆われているが[4]、成長すると全く毛はなくなる。葉は2回羽状複葉で、シダとしては切れ込みが少ないタイプに属する。ゼンマイ類はひとつの株に早春に芽生える胞子葉と、やや遅れて出る栄養葉の2種類があって、同じ株に混在する[7][4][8]。栄養葉では個々の小葉は、幅広い楕円形っぽい三角形で先端は丸く、淡緑色で表面につやがなく、葉身は薄く偏平である[4]。胞子葉は緑色が濃く綿毛が純白で、小葉は粒状で偏平ではない[4]。
胞子の他、根茎でも殖えていき、繁殖力は旺盛で大きな群落をつくるときがある[9]。
-
ゼンマイの栄養葉の新芽。綿帽子の中は薄くツルツルした葉
-
ゼンマイの胞子葉の新芽。綿帽子の中は厚くツブツブの葉
-
ひと株から3-7本前後、多いものでは10本以上生える
-
成長したゼンマイ
-
栄養葉の葉身
利用
100 gあたりの栄養価 | |
---|---|
エネルギー | 88 kJ (21 kcal) |
4.1 g | |
食物繊維 | 3.5 g |
0.4 g | |
1.1 g | |
ビタミン | |
ビタミンA相当量 |
(5%) 36 µg(4%) 420 µg |
チアミン (B1) |
(1%) 0.01 mg |
リボフラビン (B2) |
(4%) 0.05 mg |
ナイアシン (B3) |
(5%) 0.7 mg |
パントテン酸 (B5) |
(2%) 0.12 mg |
葉酸 (B9) |
(15%) 59 µg |
ビタミンC |
(2%) 2 mg |
ビタミンE |
(3%) 0.5 mg |
ビタミンK |
(32%) 34 µg |
ミネラル | |
ナトリウム |
(0%) 2 mg |
カリウム |
(1%) 38 mg |
カルシウム |
(2%) 19 mg |
マグネシウム |
(3%) 9 mg |
リン |
(3%) 20 mg |
鉄分 |
(2%) 0.3 mg |
亜鉛 |
(4%) 0.4 mg |
銅 |
(5%) 0.10 mg |
他の成分 | |
水分 | 94.2 g |
水溶性食物繊維 | 0.6 g |
不溶性食物繊維 | 2.9 g |
ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[11]。株元及び裸葉を除いたもの。ゆでた後水冷し、水切りしたもの。 | |
| |
%はアメリカ合衆国における 成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。 |
春の若芽は代表的な山菜として知られ、灰汁抜きをして食用にする。ゼンマイの葉は見た目に清涼感があり、庭の下草にも使われる[9]。
食用
春(3 - 5月ごろ)に、地表から芽生えた10 - 30 センチメートルくらいの時期の若い栄養葉の葉柄を折り取って食用にし[4][5]、山菜としてポピュラーである[7]。一般には、日本の東北地方が名産地として知られる[9]。採取時期は暖地で3 - 4月ごろが適期であるが、雪が多い寒冷地では4 - 7月ごろまで採取できる[9][8]。綿毛をかぶって茎先の葉が巻いた茎の下の方からしごくようにして、やわらかいところで折り取るように採取する[9][8]。食用となる栄養葉は、軸がやわらかく渦巻きの葉の部分が偏平であるが、食べられない胞子葉は軸がかたく、渦巻きの部分を指でつまむと丸く膨らんだ感触がある[8]。山菜採りのマナーでは、ゼンマイには俗に男ゼンマイ(胞子葉)と女ゼンマイ(栄養葉)があり、栄養葉より早く芽を出す男ゼンマイを採るとその後再生しなくなるため、自然保護のために採ってはならないとされている[12][13]。
ゼンマイは山菜の中でも特に灰汁が強い部類に入る[14]。灰汁が強いので摘み取ってすぐ食べることはせず、綿毛を取り除いてから木灰か重曹を振りかけて熱湯を注いで一晩置き、これを茹でてから冷水に半日から1日さらして灰汁を抜いてから使う[8][5]。干しゼンマイは、灰汁で茹でてから、ゴザなどに広げ手で揉んで繊維をやわらかくし、天日干しにして仕上げたものである[15]。3日ほど天日干しにしたゼンマイは、生のものよりコクが出て味に深みがあり、一晩水に浸けたあとに弱火で茹でてもどしてから調理される[16][4][15]。干しゼンマイを使うときはそのまま水に浸けて、その後弱火で茹でて沸騰する手前でゆで汁をこぼすことを3回繰り返し、3度目のときに湯に浸けたまま火から下ろしてゆっくりと冷まし、半日から1日放置してふっくらと仕上がってから利用する[16][17][15]。
灰汁抜きしたゼンマイを水に浸けたまま冷蔵し、毎日水替えをすれば1週間程度もつ[5]。天日干しすることにより長期保存が可能になり[5]、昼間干したら夕方に取り込み、繊維をやわらかくするために手で良く揉む[16]。こうして出来上がったものが「赤干し」で保存食になる[7]。また、松葉などの焚き火の煙で燻したものを「青干し」と呼ぶ[18]。ゼンマイは、塩漬けにしても保存できる[9]。
よく灰汁を抜いたゼンマイは、佃煮、お浸し、胡麻和え、白和え、煮物、炒め煮、煮付け、クルミ和え、汁の実などに利用される[16][17][8]。朝鮮料理ではナムルの材料として使われる[5]。独特の歯ごたえや風味があり、太くてやわらかいものほど高級とされている[9]。
一般には生より水煮に加工したゼンマイが市販されている[9][5]。近縁にヤマドリゼンマイというシダがあり、成葉の姿はゼンマイとは似ていないが、芽生えの姿は酷似している[4]。密に群生していることから採取が容易で、調整法や食味もほとんど変わらないことから、市販の干しゼンマイの多くはヤマドリゼンマイだといわれる[4]。
栄養的には、カロテン、ビタミンB2、ビタミンC、鉄分、食物繊維などが豊富に含まれる[5]。
園芸
また、根茎はランの栽植に用いる[20]。大きな株ではハリガネのような黒っぽい根が塊状になり、これをオスマンダと称し、園芸用の培養材として用いる。
工芸
ぜんまい綿
ゼンマイの綿毛を綿として使うゼンマイの綿。ゼンマイの綿毛は木綿に2割から3割程度加えて混紡されることもあった[19]。ゼンマイの綿毛には防虫、防カビ、防水の効果があるとされる[19]。手まりや布団にも使われる[21]。
ぜんまい織り
東北地方の山地では、ゼンマイの綿毛を使った織物もみられた。
秋田県の旧岩城町亀田(現由利本荘市)の特産品として「亀田ぜんまい織」があった[22]。ぜんまい綿は短毛でそのままでは紡げないため、真綿や木綿に所々拠り付けるように糸が紡がれた[22]。明治30年頃には白鳥の羽綿を使った白鳥織も作られるようになった[22]。大正期には生産が軌道に乗ったが、販路を拡大できず、1931年(昭和6年)に機械工業による生産が終了した[22]。いったん技術が途絶えていたが、地元のグループが再現する活動を行っている[22]。
新潟県の亀田縞などでもゼンマイの綿毛を含ませた織物が生産された[19]。
民間薬
夏(7 - 8月ごろ)に地上部の茎葉を採取したら天日干しにして生薬にし、利尿や貧血の民間薬にする[17]。民間療法では、乾燥した茎葉を刻んだもの1日量10グラム (g) を、約600 ccの水でとろ火で半量になるまで煮詰め、煎じた液(水性エキス)服用する用法が知られている[17]。
語源と派生

「ゼンマイ」の語源は、「せんまき(千巻き)」に由来するという説、銭巻であり巻いた姿が古銭に似るからとの説がある。別名に、ハゼンマイ、シシゼンマイがあるほか[1]、アオゼンマイ[9][8]、ゼンメ[9]、ゼンゴ[9][8]、ゼンノキ[8]の地方名でもよばれる。地方によって、茎が青みがかっているものが「アオゼンマイ」、褐色に近いものが「アカゼンマイ」と呼んで区別している[9]。
鋼板を巻いて作られたぜんまいばねは、ゼンマイの新芽の渦巻が似ている姿に由来して、ゼンマイとよばれている[4]。
シダとしては名が通っているので、何々ゼンマイというふうに、シダ類の普通名詞として使われる例もある。
近似種

中:オオバヤシャゼンマイ(中間)
右:ヤシャゼンマイ(狭い葉)
アメリカには姉妹種のレガリスゼンマイ (O. regalis L.) がある。ゼンマイに似るが、胞子葉が独立しておらず、栄養葉の先端の羽片に胞子嚢がつく。
ゼンマイ属は世界に十数種、日本には5種があるが、そのうちでヤシャゼンマイ (O. lancea Thunb.) はゼンマイにごく近縁なシダで、外見は非常によく似ている。異なる点は葉が細いことで、特にゼンマイの小羽片の基部が丸く広がり、耳状になるのに対して、はるかに狭くなっている。また、植物体も一回り小さく、葉質はやや厚い。日本固有種で、北海道南部から九州東部にかけて分布する。生育環境ははっきりしていて、必ず渓流の脇の岩の上である。ゼンマイも水辺が好きであるが、渓流のすぐそばには出現せず、ヤシャゼンマイとは住み分けている。上記の特徴はいわゆる渓流植物の特徴そのものであり、そのような環境へ適応して種分化したものと考えられる。
なお、この両種が生育している場所では、両者の中間的な型のものが見られる場合がある。これは両者の雑種と考えられており、オオバヤシャゼンマイ O. ×intermedia (Honda) Sugimoto という。その形や大きさはほぼ中間であるが、やや変異が見られると言う。また、胞子葉は滅多に形成されず、できた場合も胞子は成熟しないらしい。
脚注
- ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Osmunda japonica Thunb. ゼンマイ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Osmunda japonica Thunb. var. divisa (Makino) Nakai ゼンマイ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月22日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Osmunda japonica Thunb. f. divisa (Makino) Tagawa ゼンマイ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 吉村衞 2007, p. 42.
- ^ a b c d e f g h 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 153.
- ^ 吉村衞 2007, p. 43.
- ^ a b c d e f 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 114.
- ^ a b c d e f g h i j 金田初代 2010, p. 74.
- ^ a b c d e f g h i j k l 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 48.
- ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
- ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
- ^ 「山菜の採り方」NHK for School、8月1日閲覧。
- ^ 金田初代 2010, p. 75.
- ^ 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 51.
- ^ a b c 金田初代 2010, p. 76.
- ^ a b c d 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 115.
- ^ a b c d 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 50.
- ^ 家森幸男, 奥薗壽子『すべてがわかる!「乾物」事典 : "基礎知識"や"解説"はもちろん、"レシピ"に"お買い物帖"まで』世界文化社〈食材の教科書シリーズ〉、2013年、46頁。ISBN 9784418133420。 NCID BB14201114。全国書誌番号:22339674 。
- ^ a b c d “バイオの散歩道 第21号 キャンパスを食べる ゼンマイ”. 明治大学. 2025年3月30日閲覧。
- ^ 2.高森町の植物 高森町、2022年3月4日閲覧。
- ^ 新潟県立植物園 「NHK新潟ラジオセンター「朝の随想」セレクション ゼンマイ綿と栃尾手まり(11月17日放送)」
- ^ a b c d e “秋田県立博物館ニュース”. 秋田県立博物館. p. 6. 2025年3月30日閲覧。
参考文献
- 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編『かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典』成美堂出版、2012年7月10日、153頁。ISBN 978-4-415-30997-2。
- 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、74 - 76頁。ISBN 978-4-569-79145-6。
- 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、48 - 51頁。ISBN 4-418-06111-8。
- 高橋秀男監修 学習研究社編『日本の山菜』 vol.13、学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年4月1日、114 - 115頁。ISBN 4-05-401881-5。
- 吉村衞『おいしく食べる山野草』主婦と生活社、2007年4月23日、42 - 43頁。ISBN 978-4-391-13415-5。
- 岩槻邦男編『日本の野生植物 シダ』、1992年、平凡社
関連項目
外部リンク
ゼンマイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 07:30 UTC 版)
「灰と幻想のグリムガル」の記事における「ゼンマイ」の解説
ピンゴが造り出した人造人間。恐ろしげな仮面を付けている長い腕が特徴的な見た目男性な人造人間。
※この「ゼンマイ」の解説は、「灰と幻想のグリムガル」の解説の一部です。
「ゼンマイ」を含む「灰と幻想のグリムガル」の記事については、「灰と幻想のグリムガル」の概要を参照ください。
ゼンマイ
「ゼンマイ」の例文・使い方・用例・文例
ゼンマイと同じ種類の言葉
- ゼンマイのページへのリンク