コケ植物 採集と標本

コケ植物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/07 09:46 UTC 版)

採集と標本

コケ植物は、その姿が小型であり、しかも多様な生活環境に生育する種がある。これがカビともなれば野外採集はできず、持ち帰って分離操作をするのだろうが、コケはそのような方法が適用できない。どうしても野外で採集しなければならない。小さなものでは、砂岩の砂粒の間に葉が隠れてしまうようなものもあるから、ルーペは必須である。

したがって、コケ植物の採集家は歩みが遅い。一歩進むごとに樹の肌を見、葉の上を見、枝を見、樹の根元を見、足元を見る。沢であれば岩面の向きの違う場所をずっと見て回り、岩の隙間を探し、草の根元を見、水しぶきのかかるところも見て、その周辺の樹木も見なければならない。素人目には一塊のコケの集団であっても、複数種が交じっていることも普通である。日本の蘚苔類学会のある年に行なわれた観察会では、山間部の渓谷にコースを設定してあったのに、その入り口の駐車場周辺だけで1日を過ごしてしまったとの伝説がある。

その代わりに、標本作製と保存は簡単で、一般には陰干しして、紙に包んでおくだけ(乾燥標本)である。この状態で虫がつくこともほとんど無いと言う。シダや高等植物の押し葉標本が、放置すればあっと言う間にボロボロになるのとは大きな違いである。観察したいときは水に戻すと、ほぼ元の形に回復する。

利用

日本文化の文脈における「コケ」についてはを参照。

コケ植物が実用的に用いられる例としては、圧倒的にミズゴケ類が重要である。日本ではその分布が多くないが、ヨーロッパではごく普通にあり、生きたものは園芸用の培養土としてほとんど他に換えがない。他に乾燥させて荷作りの詰め物とし、またかつては脱脂綿代わりにも使われた。またそれが枯死して炭化したものは泥炭と呼ばれ、燃料などとしても利用された。

それ以外となるとかなり重要度が落ちる。日本では庭園鉢植えに利用されるが、主としてバックグラウンドとしての価値を認められていると見た方が良いだろう。

日本のコケ植物

華厳寺石灯籠の蘚苔類

日本には約1800種のコケ植物が分布しており[3]、そのうち200種以上が絶滅の危機に瀕しているといわれている[6]

日本では、古来より蘚苔類は身近なものであり、多くの和歌の中で詠われている。現在、ミズゴケ類シラガゴケ類スギゴケ類、ツルゴケ、ハイゴケなど多数のコケ植物が園芸用・観賞用として栽培、販売されている。




  1. ^ 門の和名はきまぐれ生物学より。
  2. ^ 石井龍一・岩槻邦男等編『植物の百科事典』、朝倉書店、ISBN 978-4-254-17137-2 C3545
  3. ^ a b c d 岩月善之・北川尚史・秋山弘之 「コケ植物にみる多様性と系統」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、49頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  4. ^ 秋山弘之 「コケ植物の分子系統」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、57-59頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  5. ^ a b 加藤雅啓編 「陸上植物の分類体系」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、25頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  6. ^ 環境省報道発表資料 『哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて』、2007年8月3日。





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