コケ植物 分類と系統

コケ植物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/07 09:46 UTC 版)

分類と系統

古くは陸上植物の中で、小柄で維管束を有さないことから、陸上生活への適応が不十分な原始的な群とされ、シダより下等な一群として扱われてきた。その中で蘚類と苔類が区別され、さらに苔類からツノゴケ類が区別された。しかし、最近の形態や分子を用いた系統学的研究等から、コケ植物は単系統群ではなく側系統群であることが判ってきた(系統を参照)。新しい分類では、それぞれの単系統群として扱うようになってきている[1]。下記の綱や亜綱の分類は2009年刊の「植物の百科事典」[2]による。したがって、上掲の分類表は過去のものである。

  • ゼニゴケ植物門 Marchantiophyta - 苔類
植物体の形は葉状体または茎葉体。茎葉体の場合、葉の形は丸っこく、大きく裂けて腹面側と背面側に分化する。胞子体(蒴)は比較的短期間しか存在せず、軟弱。胞子体は4つに割れて胞子を散布する。世界に8000種[3]、日本では600種以上が知られている。
  • ゼニゴケ綱
  • ウロコゴケ綱
    • ウロコゴケ亜綱
    • フタマタゴケ亜綱
    • ミズゼニゴケ亜綱
  • コマチゴケ綱
    • コマチゴケ亜綱
    • トロイブゴケ亜綱
植物体は葉状体。胞子体(蒴)は細長い角状で緑色。蒴は熟すと4片に裂ける。その中心に軸柱がある。世界に400種程度が知られている[3]
  • ツノゴケ綱
    • キノボリツノゴケ目
    • フィマトケロス目
    • ツノゴケモドキ目
    • ツノゴケ目
    • レイオスポロケロス目
  • マゴケ植物門 Bryophyta - 蘚類
植物体の形は茎葉体。葉は木の葉型で大きく裂けることはない。胞子体は丈夫で長く存在し、蒴柄にわかれている。蒴の先端にはという帽子状の構造によりかぶされている。例外はあるが、多くのものがさくの先端に蓋があり、それが外れて生じる穴から胞子を散布する。1万種程が生育すると推定されており[3]、日本では1000種以上が記録されている。なお、新分類で蘚類のことをBryophytaとするようにしたため、Bryophytaに狭義と広義の意味が生じるようになった。

伝統的な分類

伝統的な分類では、コケ植物は植物界コケ植物門 (Bryophyta) として一群にまとめられる。内部分類は3つのに分類され、それぞれ、スギゴケハイゴケなどの蘚類(蘚綱)、ゼニゴケやツボミゴケなどの苔類(苔綱)およびツノゴケ類(ツノゴケ綱)である(ツノゴケは漢字で角苔と書くが、カタカナで表記するのが一般である)。

蘚綱(セン綱) Bryopsida

4つの亜綱に分けられるが、大部分の種はマゴケ亜綱に所属する。

苔綱(タイ綱) Hepaticopsida
ツノゴケ綱 Anthocerotopsida

系統

コケ植物の3群の系統関係については、2つの分岐パターンが示されている。1つは、最初に苔類が、次にツノゴケ類が、最後に蘚類がPolysporangiates(en、コケ植物以外の陸上植物を含むグループ、維管束植物とほぼ同義)から分岐したパターンである。もう1つは、最初にツノゴケ類が、次にPolysporangiatesが、最後に蘚類と苔類が分岐したパターンである。

形態や精子の微細構造、化学組成等を用いた解析だとこのうち前者を示す説が多いが、RNAを用いた解析では後者を示唆する結果が示されており、また解析に使用した植物や遺伝子により異なった結果も示されている[4]

陸上植物の系統関係

藻類との関係

コケ植物を含む陸上植物と緑藻類の共通する形質はいくつか知られている。例えば、光合成色素としてクロロフィルaおよびbを持ち、同化産物()の貯蔵物質はデンプンである。また精子の鞭毛を2本持つことも他の緑藻類を除く藻類との差異である。

ただし、基本的に陸上生活をするコケ植物と水中生活をする緑藻類は多くの点で異なっており、特に繁殖に関わる形質・生態は明瞭である。生殖器官は緑藻類は単細胞で、コケ植物は多細胞であり造卵器や胞子嚢は他の細胞に覆われている。これは配偶子や胞子などを乾燥から守る目的がある。また受精後、コケ植物が植物体にとどまりを形成することも緑藻類との相違点である。

なお、緑藻類の中でも車軸藻類Coleochaete属と核分裂の様式や共通の光合成酵素を持つこと、分子系統の結果などより近縁であることが示唆されている。

シダ植物との関係

コケ植物は古生代に陸上進出したシダ植物とは、両者ともに多細胞で壷型の造卵器を形成するが、このような構造は藻類には見られない。また、両者ともに世代交代を行い、配偶体の上で胞子体が発芽する。したがって、シダ植物において、前葉体から幼いシダが伸びる姿と、コケ植物の植物体からさくが伸びる姿とは同等のものである。ただし、シダ植物や種子植物では胞子体が発達するのに対して、コケ植物では配偶体が発達するのが大きな相違点である。また葉緑体DNAの比較結果より苔類ヒカゲノカズラ類が近縁であることが示されている[5]

コケ植物およびシダ植物・種子植物が側系統群であることが示唆されているものの、両者の系統関係については説が分かれている。コケ植物に近い先祖からシダ植物が分化したのか、両者に共通の祖先から両者が分化したのか、近縁な祖先から平行的に進化したのかなど、さまざまな議論がある。ただし、シダ植物からコケ植物に退行進化をしたことを示す結果は示されていない[5]




  1. ^ 門の和名はきまぐれ生物学より。
  2. ^ 石井龍一・岩槻邦男等編『植物の百科事典』、朝倉書店、ISBN 978-4-254-17137-2 C3545
  3. ^ a b c d 岩月善之・北川尚史・秋山弘之 「コケ植物にみる多様性と系統」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、49頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  4. ^ 秋山弘之 「コケ植物の分子系統」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、57-59頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  5. ^ a b 加藤雅啓編 「陸上植物の分類体系」 『植物の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ2』 岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房、1997年、25頁、ISBN 978-4-7853-5825-9
  6. ^ 環境省報道発表資料 『哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物I及び植物IIのレッドリストの見直しについて』、2007年8月3日。





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