エイコサペンタエン酸 エイコサペンタエン酸の概要

エイコサペンタエン酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/12 20:33 UTC 版)

エイコサペンタエン酸
略称 EPA
20:5(n-3)
識別情報
CAS登録番号 10417-94-4
KEGG C06428
特性
化学式 C20H30O2
モル質量 302.45 g mol−1
示性式 CH3CH2(CH=CHCH2)5(CH2)2COOH
融点

-54から-53 ℃

薬理学
消失半減期 39-67時間[1]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

機能

EPAは、プロスタグランジントロンボキサン-3、ロイコトリエン-5(すべてエイコサノイド)の前駆体であるω-3脂肪酸多価不飽和脂肪酸の一つである。ω3系統もω6系統と同様にロイコトリエンなどの生理活性物質に変換される。しかしながら、ω6系統を材料にしたものに比較して生理活性が低い、あるいはないという特徴がある。生理活性が低いということで、過去、食用油脂から不要として除去されたこともある。しかし、生理活性の強いω6系統と競合することで、免疫や凝血反応、炎症などにおいて過剰な反応を抑えるということが明らかになった。いわばω6系統のブレーキ役であるといえる。実際にω3系統の脂肪酸の1つであるEPAで血小板凝集抑制作用があることが知られている。その裏返しとして、EPAの過剰な摂取により出血傾向が現れることが指摘されている。

ヒトを含む後生動物では、ω6不飽和脂肪酸及びω3不飽和脂肪酸は合成できない。後生動物ではΔ12-脂肪酸デサチュラーゼの経路が欠失したものと推測される[2]。後生動物では植物細菌により合成されたα-リノレン酸を摂取してΔ6-脂肪酸デサチュラーゼによりα-リノレン酸(ALA)のΔ6の位置に不飽和結合を作りエロンガーゼにより炭素2個伸張して20:4(n-3)のエイコサテトラエン酸を生成しΔ5-脂肪酸デサチュラーゼにより不飽和結合を増やして体内でEPAを合成するか、EPAを摂取するしかない。そのため、広義では後生動物にとってEPAはω-3脂肪酸の必須脂肪酸となる。

多くの動物は体内でα-リノレン酸を原料としてEPAやドコサヘキサエン酸 (DHA) を生産することができるが、α-リノレン酸からEPAやDHAに変換される割合は10%–15%程度である[3]

必須脂肪酸の代謝経路とエイコサノイドの形成

利用

医療用医薬品としては閉塞性動脈硬化症高脂血症治療薬である。商品名としてはエパデール(持田製薬製造販売)・イコサペント酸エチル Ethyl eicosapentaenoic acid 粒状カプセルなどとして販売されている。ロトリガ(武田薬品工業製造販売)はEPAとDHAの合剤である。また健康食品にもDHAとともにサプリメントとして用いられている。


注釈

  1. ^ 糖代謝異常の改善にも効果があることが明らかとなった。
    及川眞一 (JELIS Investigators)、セッション Late Breaking Clinical Trials II、第72回日本循環器学会総会、2008年3月29日。 - 水田吉彦「糖代謝異常の主要冠動脈イベントリスクもEPAで2割減」JCS2008『日経メディカル』、2008-04-01。

出典

  1. ^ Drug Bank
  2. ^ 脂肪酸の不飽和化と鎖長延長、木村 修一、油化学、1971年 20巻 10号 p. 670-677, doi:10.5650/jos1956.20.670
  3. ^ 岡田斉、萩谷久美子、石原俊一ほか「Omega-3多価不飽和脂肪酸の摂取とうつを中心とした精神的健康との関連性について探索的検討-最近の研究動向のレビューを中心に」『人間科学研究』第30巻、2008年、 87–96。
  4. ^ 蒲原聖可 『サプリメント事典』平凡社、2004年、194–195頁。ISBN 978-4582127263 
  5. ^ DHA・EPA - 疑似科学とされるものの科学性評定サイト”. 明治大学科学コミュニケーション研究所. 2017年9月2日閲覧。
  6. ^ Yokoyama, M.; Origasa, H.; Matsuzaki, M. et al. (2007). “Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis”. Lancet 369 (9567): 1090–1098. doi:10.1016/S0140-6736(07)60527-3. PMID 17398308. 
  7. ^ “Eicosapentaenoic acid inhibits oxidation of high density lipoprotein particles in a manner distinct from docosahexaenoic acid”. Biochemical and Biophysical Research Communications 496 (2). (2018). doi:10.1016/j.bbrc.2018.01.062. 
  8. ^ “Administration of high dose eicosapentaenoic acid enhances anti-inflammatory properties of high-density lipoprotein in Japanese patients with dyslipidemia”. Atherosclerosis 237 (4). (2014). doi:10.1016/j.atherosclerosis.2014.10.011. PMID 25463091. 
  9. ^ DHA・EPA」- 疑似科学とされるものの科学性評定サイト
  10. ^ EPAが注目された理由」 - 持田製薬「エパデール」
  11. ^ グリーンランド人の急性心筋梗塞の発症に関する仮説
  12. ^ Quinn, J. F.; Raman, R.; Thomas, R. G. et al. (November 2010). “Docosahexaenoic acid supplementation and cognitive decline in Alzheimer disease: a randomized trial”. JAMA 304 (17): 1903–1911. doi:10.1001/jama.2010.1510. PMC 3259852. PMID 21045096. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3259852/. 
  13. ^ Ishiguro, J.; Tada, T.; Ogihara, T.; Ohzawa, N.; Murakami, K.; Kosuzume, H. (1988). “Metabolic Disposition of Ethyl Eicosapentaenoate and Its Metabolites in Rats and Dogs”. Journal of pharmacobio-dynamics 11 (4): 251–261. NAID 110003636862. 
  14. ^ 高橋尚子、ラットにおける n-3 および n-6 系多価不飽和脂肪酸の生理作用に関する研究((修士論文) 2008年
  15. ^ 健全な神経発達の為に新生児の血液脳関門がもつ機能性脂質供給ルート解明と投与設計」 研究期間2008年度~2009年度 (科学研究費助成事業データベース)
  16. ^ a b ケトン体合成”. 講義資料. 福岡大学機能生物化学研究室. 2011年10月18日閲覧。
  17. ^ 太田成男 「体が若くなる技術」Q&A Q4
  18. ^ Jess Halliday (12/01/2007). Water 4 to introduce algae DHA/EPA as food ingredient. Retrieved on 2007-02-09.
  19. ^ Simopoulos, Artemis P (2002). “Omega-3 fatty acids in wild plants, nuts and seeds”. Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition 11 (s6): S163–S173. doi:10.1046/j.1440-6047.11.s.6.5.x. ISSN 0964-7058. 


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