アンフェタミン アンフェタミンの概要

アンフェタミン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 08:35 UTC 版)

アンフェタミン
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • C(アメリカ)
法的規制
  • DEA スケジュールII(アメリカ)
    クラスB(イギリス)
    スケジュールIII(カナダ)
投与経路 経口、静脈内投与、気化、吸入、坐剤
薬物動態データ
生物学的利用能4 L/kg; low binding to plasma proteins (20%)
代謝肝臓
半減期10–13時間
排泄腎臓; significant portion unaltered
識別
CAS番号
300-62-9
ATCコード N06BA01 (WHO)
PubChem CID: 3007
DrugBank APRD00480
KEGG D07445
化学的データ
化学式C9H13N
分子量135.2084
テンプレートを表示
左の白色粉末がアンフェタミン。右二つの容器に入っているのは1-フェニル-2-ニトロ-1-プロペン。

密造と薬物乱用ヨーロッパで横行し、主にフェニルプロパノールアミンから合成した硫酸アンフェタミンの形で出回っている。さらに、アメリカ合衆国イギリスオーストラリアカナダなどの国々では、ナルコレプシーやADHDの治療に用いられるため、処方されたアンフェタミンが横流しされ、高等学校大学で最も頻繁に乱用される薬剤のひとつとなっている。

化学

1887年(明治20年)、ルーマニアの化学者ラザル・エデレアーヌ(: Lazăr Edeleanu)がベルリン大学で初めて合成した。アンフェタミンは光学異性体を持ち、レボアンフェタミン(L体)とデキストロアンフェタミンD体)に光学分割することができる。アンフェタミンは多くの向精神薬の母体骨格であり、MDMA(エクスタシー)やメタンフェタミンN-メチル誘導体)などを含む化合物群を構成する。アンフェタミン自体は、フェネチルアミンの誘導体である。

古くは硫酸 rac-アンフェタミン(rac- はラセミ体であることを示す)として合成されていた。アメリカ合衆国では rac-アンフェタミンを主成分とする製剤はもはや製造されていない。今日では大部分が硫酸デキストロアンフェタミンの形で用いられている。注意欠陥障害にはアデラル英語版 (Adderall)、デキセドリン (Dexedrine) もしくは後発医薬品がしばしば用いられ、これには rac-アンフェタミンと D-アンフェタミンが硫酸塩とサッカラートの形で、D体とL体が 3:1 の比になるように含まれている。

効果は主に D-アンフェタミンによってもたらされ、L-アンフェタミンはこれらの作用が失われたあとに、吐き気などの副作用を現す。

作用機序

ユートマー英語版(eutomer、活性の高い方の光学異性体を指す)であるデキストロアンフェタミンは、血液脳関門を易々と突破し、モノアミン神経伝達物質のノルアドレナリンおよびドーパミンの放出促進と再取り込み阻害によって、中枢神経に作用する。セロトニンには影響しない。放出促進の過程では、小胞モノアミン輸送体VMAT2に対する活性の発現が、特に重要な役割を果たす[3]


注釈

  1. ^ 上述の通りイギリスでの規制は1964年から開始されたので、同年没のフレミングの執筆中はアンフェタミンの使用は合法であった。
  2. ^ 1後の改正で、1989年4月1日の厚生省告示第89号により第十一改正日本薬局方の局方医薬品から登録が削除された[19]

出典

  1. ^ a b 竹内孝治、岡淳一郎『最新基礎薬理学[第3版]』廣川書店、2011年、50頁。ISBN 978-4-567-49452-6 
  2. ^ 覚醒剤中毒 1980, p. 9.
  3. ^ Sulzer, D. (2005). "Mechanisms of neurotransmitter release by amphetamines: a review". Prog. Neurobiol. 75 (6): 406–433. PMID 15955613.
  4. ^ a b 覚醒剤中毒 1956, p. 13.
  5. ^ 中原雄二「世界における覚せい剤の乱用の現状と問題点」『衛生化学』第36巻第2号、1990年、100-108頁、doi:10.1248/jhs1956.36.100NAID 130003911750 
  6. ^ a b c 覚醒剤中毒 1956, pp. 8–9, 16–17.
  7. ^ 風祭元『日本近代精神科薬物療法史』アークメディア、2008年、73-74頁。ISBN 978-4875831211 
  8. ^ Young, David; Scoville, William Beecher (1938). “Paranoid Psychosis in Narcolepsy and the Possible Danger of Benzedrine Treatment”. Medical Clinics of North America 22 (3): 637–646. doi:10.1016/S0025-7125(16)37027-4. 
  9. ^ 覚醒剤中毒 1980, p. 91.
  10. ^ 覚醒剤中毒 1980, p. 10.
  11. ^ Seabrook, J. (1996). In the Cities of the South:scenes from a developing world. London; New York: Verso. ISBN 1-85984-986-5.
  12. ^ 米大学生の間で「頭の良くなる薬」が流行、将来は試験前にドーピング検査? AFP 2009年10月3日
  13. ^ S6. 興奮薬 | 禁止表
  14. ^ Ross, Joseph S.; Moore, Thomas J.; Glenmullen, Joseph; Furberg, Curt D. (2010). “Prescription Drugs Associated with Reports of Violence Towards Others”. PLoS ONE 5 (12): e15337. doi:10.1371/journal.pone.0015337. PMC 3002271. PMID 21179515. http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0015337. 
  15. ^ 田所作太郎、栗原久 (1990). “薬物の反復投与による行動効果の修飾”. 日本薬理学雑誌 95: 229-238. https://doi.org/10.1254/fpj.95.5_229. 
  16. ^ List of psychotropic substances under international control (PDF) (英語). International Narcotics Control Board. Retrieved on November 19, 2005.
  17. ^ 五輪選手の治療用覚せい剤許可 改正特措法が成立”. 時事通信社 (2021年6月9日). 2021年6月30日閲覧。
  18. ^ Class A, B and C Drugs. Home Office. Retrieved on May 28, 2008.
  19. ^ 第十二改正日本薬局方の制定等について 薬発第348号』(プレスリリース)厚生労働省、1991年3月25日https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6841&dataType=1&pageNo=12024年4月1日閲覧 
  20. ^ 「覚せい剤密造 暴力団にも流す」『朝日新聞』昭和47年(1972年)6月7日朝刊、13版、22面


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