TFT-LCDとは? わかりやすく解説

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TFT液晶

【英】Thin Film Transistor Liquid Crystal Display, TFT Liquid Crystal Display, TFT LCD

TFT液晶とは、液晶ディスプレイ一種で、アクティブマトリクス方式の、薄膜状加工されトランジスタ用いタイプのものであるPC液晶ディスプレイ多く採用され現在の液晶パネル主流方式となっている。

TFT液晶では、画面構成するドットごとにトランジスタ表示制御している。このため均一ムラのない表示が可能となっている。また、応答速度速くコントラスト高くトランジスタ電圧変えることによる画面明るさ調整が可能である。大画面ディスプレイ用いて画質劣化せず、最近では視野角178度とCRTブラウン管)並の見易さ実現したものもある。

液晶含まれる成分として、原子無秩序の状態で並んでいるアモルファスシリコン使用されることが多いが、最近では、より上位素材として多結晶シリコンポリシリコン)が用いられる場合もある。アモルファスシリコン量産性に優れ様々なサイズパネル製造可能となるが、多結晶シリコンアモルファスシリコン比べて電子移動速度100倍上であり表示応答コントラストの面で優れている

TFT以外の液晶ディスプレイ方式としては、単純マトリクス方式STNDSTN、あるいはTFT同じくアクティブマトリクス方式TFDなどがあるが、いずれも利用される場面多くTFTに取って代わられている。現在台頭しつつある方式としては、プラズマテレビ使用されているプラズマ液晶や、携帯電話ディスプレイとして見込まれる有機ELなどがある。

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TFT液晶

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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/14 01:22 UTC 版)

パソコンのTFT液晶ディスプレイ

TFT液晶 (thin-film-transistor liquid-crystal display) また薄膜トランジスタ液晶薄膜トランジスタをスイッチング素子として使用する表示素子であり、液晶ディスプレイ薄型テレビに幅広く使用される。

アクティブ・マトリクス駆動方式の等価回路
1.TFT 2.表示電極 3.コンデンサ 4.共通電極線へ
太線の部分が電圧が加えられている。
横方向に走るゲート電極線と縦方向に走るソース電極線の交点にTFTと呼ばれるFETが配置され、2本のバス線がFETのゲートとソースに接続されている。FETのドレイン側にはサブピクセルとなる液晶電極、そしてコンデンサ(キャパシタ)がつながれ、これら2つの容量性素子の反対側は共通電極(コモン電極)になっている。ゲート電極線に加えられた電圧によってそれに接続されている1列分すべてのFETが"ON"動作となることで、ソースとドレイン間に電流が流れ、そのときソース電極線に加えられている各々の電圧が液晶電極にかかり、コンデンサには電圧に応じた電荷が蓄積される。ゲート電極線は1列分の充電を終えると電圧の印加は次の列に移り、最初の1列分のFETはゲート電圧を失って"OFF"動作となる。最初の1列分の液晶電極はソース電極線からの電圧を失うが同時にコンデンサに蓄積された電荷によって次にゲート電極線が選択されるまでの1フレーム分の時間、必要な電圧をほとんど維持できる。コンデンサの共通電極線は隣接するサブ画素のゲート電極線で代替することがある。このようにTFTをスイッチとして使ったアクティブ・マトリクス駆動方式では、ゲート電極線によって同時に多数のFETへ電圧を加えることができるので、膨大な画素にも対応でき、コンデンサによって表示を維持できる。
TFT画素の模式図(付加容量型)
1.ゲート電極線 2.ソース電極線 3.ゲート電極 4.ドレイン電極 5.絶縁膜 6.アモルファス・シリコン層 7.n+アモルファス・シリコン層 8.絶縁膜 9.蓄積電極(蓄積容量) 10.絶縁膜 11.表示電極 12.1つのサブセル
蓄積電極への配線を隣のゲート電極線と兼ねることで製造工程を簡略化した付加容量型を示したが、蓄積電極専用の配線を持った構造もある。図の例では正方形に近いが、3色のカラー表示の各サブセルは、通常は細長い。

以前は複数の液晶表示素子があったが、現在では携帯電話携帯情報端末携帯ゲーム機等に幅広く使用され、現在では実質的に液晶ディスプレイと同義的になっている。

TFTを構成する半導体の種類

TFTを構成する半導体の組成には、普及したアモルファス・シリコンと、開発が進んで実用化段階にあるポリ・シリコンがある。画面サイズの比較的小さな液晶パネルでは、開口率を上げるために絶縁膜を挟んで隣のゲート線上との間にコンデンサを作る「付加容量型」が多い。

アモルファス・シリコン
アモルファス・シリコンは、大型のガラス基板に対して容易に成膜ができることから、高い生産性を誇っている。電子移動度は0.5-1.0cm2/Vs 程度である。[1]
ポリ・シリコン
ポリ・シリコン (poly-crystalline Si) は、多結晶シリコンのことであり、アモルファス・シリコンに比べると電子移動度が30-300cm2/Vs (LTPS) と単結晶シリコン (MOS-FET) の600-700cm2/Vs には及ばないが画素表示用途では十分な性能が得られる。このポリシリコンTFTにはさらに製造プロセスの温度差によって高温ポリシリコンと低温ポリシリコンがある[注 1]。ポリシリコンによってガラス基板上に液晶を駆動するためのドライバー回路を作り込める利点がある。
高温ポリシリコン
高温ポリシリコン (High-temperature polycrystalline silicon, HTPS) は、1,000℃程度の高温に耐えられる石英ガラス基板上に成膜したアモルファス・シリコンを熱アニールして結晶化する(日本語ではポリシリコンだが、英語標記ではpolycrystallineになることに注意)。サファイヤ基板上にアモルファス・シリコンを結晶化させたものにSOS (Silicon On Sapphire) があり、プロジェクター等の液晶ライトバルブなど、比較的特殊なものに用いられている[2]
低温ポリシリコン
低温ポリシリコン (Low-temperature polycrystalline silicon, LTPS) は、安価な通常の無アルカリ・ガラス基板上に成膜したアモルファス・シリコンをレーザーアニール等による600℃以下の低温で多結晶化するものである。低温ポリシリコンは、結晶粒界によって電流が妨げられる割合が高いために高温ポリシリコンより電子移動度が低くなるが、それでもアモルファス・シリコンと比べれば数百倍のスイッチング動作が可能となり、特にCOG方式でのドライバ回路までガラス基板上に集積することで、接続点が少なくなるために信頼性が高まるが、額縁部分は少し広くなる[3]。ただし、外部ICでは3.3-5Vでの駆動電圧なのに対して、低温ポリシリコンによる駆動回路では8-12V程度が必要となり、携帯機器が求める低消費電力化の点では逆行することになってしまう。HTPSより特性は劣るが安価なため、利用が進んでいる。
連続粒界シリコン
連続粒界シリコン (Continous grain silicon) は粒界を実質的になくすことで電子移動度を高めたもの(シャープと半導体エネルギー研究所が共同開発)。
フレーム反転の4方式
1. フレーム反転駆動方式
2. 行ライン反転駆動方式
3. 列ライン反転駆動方式
4. ドット反転駆動方式

液晶パネルの種類(アクティブ・マトリクス駆動)

液晶パネルの代表的な5方式
左が印加電圧の無い状態
右が印加電圧のある状態
(液晶層全体を薄黄色で示したが、この部分には液晶分子を主成分とする溶液で満たされている[2]。長円は液晶分子を横から見た姿であり、丸い円は液晶分子を長軸方向から見た姿である。)

アクティブ・マトリクス駆動による液晶パネルには、以下の方式がある。

TN型

単純マトリクス駆動と同様に、アクティブ・マトリクス駆動と組み合わせても多く利用されている[注 2]。生産技術が確立され比較的安価である。また、特別な工夫をしなくても高い開口率[注 3]が得られるため表示が明るくなり、同じ表示輝度であればバックライトの消費電力を削減できる。応答速度も8-15ms程度とそれほど遅くはない。2020年代には、応答速度が1ms以下のものも登場しており、ゲームなどに向く。短所は、視野角が狭く色度変位が大きい。画質よりコストや低消費電力を重視する用途に用いられる。2000年代頃までは廉価なノートパソコン向けであったが、2010年頃からは画質も向上し、ほとんどのノートパソコンでTN型となっている。また、視野角の狭さが簡易なプライバシーフィルターの効果を持つことから、上位機種でも積極的に採用するメーカーもある。2020年ころには、ゲーミングモニターと言われる応答速度が非常に速いモニターが多く市場に出回ったが、これらの多くはTN液晶である。

IPS型

IPS型(In-Plane Switching型、インプレイン・スイッチング型)では、電極は一方の基板の面内方向に配置している。電圧を無印加の状態では液晶分子はねじれずに基板面に対して一定の水平方向を向いている。電圧の印加時には電界が面内方向に掛かるたて液晶分子が90度水平に回って電極に沿って並ぶ。無印加と印加で液晶分子が面内方向で90度回ることで、2枚の偏光フィルムとの間で透過、遮蔽を作り出す。液晶分子同士が並んだままで回転できるため反応が速く、特に中間調の応答が良い。見る角度にあまり影響されず視野角が広いという特徴がある。回転は、電極をくし型に配置することで実現されるため、半導体技術を用いるアクティブ・マトリクス駆動でのみ用いられる。液晶配向が基板に対して垂直方向に立ち上がることがないため、視野角が広い[注 4]。視野角特性が良好なためTV用途で多く用いられるが、反面、開口率を上げにくく表示が暗くなり易い、正面表示でのコントラストを高めにくいといった課題もある[注 5]

偏光板の方向
TN型のNWモードの場合の偏光フィルムのクロスニコル配置がIPS型ではNBモードに用いられており、TN型のNWモードの利点がIPS型ではNBモードの利点にほぼ対応し、IPS型では多くがNBモードで用いられる。NW、NBという名称が電圧と表示との関係のみを表す名称であるため、注意が必要である。

VA型

VA型(Vertical Alignment型、 垂直配向型)では、負の誘電率異方性を持った液晶分子と垂直配向膜との組み合せで、無印加時には液晶分子が画面に対して垂直になり、印加時には液晶分子が画面に対して水平な配置となる。見る角度にかかわらず比較的良好な視野角と高いコントラストが得られる。8-15ms程度の応答速度になる[4][注 6][5]

偏光板の方向
TN型のNWモードの場合の偏光フィルムのクロスニコル配置がVA型ではNBモードに用いられており、TN型のNWモードの利点がVA型ではNBモードの利点にほぼ対応する。このため、VA型ではNBモードが用いられる。
MVA型
VA型の派生型として、さらに視野角を広げるために画面の区画ごとに配向を変える「分割配向」を用いたMVA (Multi-domain Vertical Alignment) 型がある。MVA型では1つの画素やサブ画素内で異なる配向の領域を複数持つマルチドメイン方式とすることで視野角を広げている。マルチドメインは透明電極の上に「リブ」と呼ばれる微小な樹脂製の突起物を間隔をあけて構築することで実現される。TV用ディスプレイの用途で多く用いられている[6][注 7][3][4]

OCB型

OCB (Optically Compensated Bend, Optically Compensated Birefringence) 型は、無電界時には液晶が弓状に配列し、電圧印加時にはほぼ直線状に並ぶ。弓状から直線状に変化することで発生する液晶の流れと液晶分子の配向の変化が互いを阻害することがなく配向の変化が液晶の流れを加速するように働くため3-8msといった高速応答性を持つ[注 8]。光学補償フィルムを必要とする。視野角も広く、-20℃といった低温環境でも応答性がそれほど損なわれないがまだコストに課題があり、放送機器用や車載用での採用が多く、大画面は存在しない[注 9][注 10][7][4][3]EIZOが、業界初で、当時世界最速“5.5msec”のパネル応答速度を達成したOCB液晶搭載のカラーテレビ「FORIS.TV」として23インチの製品を販売していた例がある[8][9]

関連項目

脚注

注釈

  1. ^ 低温ポリシリコンは東芝が開発した
  2. ^ TN型はアクティブ・マトリクス駆動でも利用されているが、単純マトリクス駆動と比べると要求される表示品位が異なるため、設計パラメータは異なる。
  3. ^ 液晶パネルのサブ画素を透過部と遮光部とに分けた場合の全体に占める透過部の面積比。
  4. ^ 電圧印加時の画素内の配向が1つの回転方向にある場合には、視野角が広いものの、傾斜方向からの観察を行うと傾斜方位(画面に向かって傾斜させるときの傾斜の方位)に依存するような色づき(色度変化)が残ってしまうが、これは、液晶の回転する方向が互いに逆となる領域を画素内に設けるような電極構成をとることにより、互いに相殺しあって小さくされている。
  5. ^ IPS型の派生形式には日立のS-IPS (Super-In Plane Switching) 型、NECのSA-SFT型がある。IPSは日立ディスプレイの登録商標である。
  6. ^ 日本のシャープ社では新たにUV2Aという液晶表示モードを開発し、2009年10月から堺工場と亀山第2工場で従来のASV型の生産を全面的に切り替えると発表した。このUV2A型は配向膜に特殊な高分子材料と紫外線を使うことでリブやスリットが不要になり、紫外線照射設備は新たに必要とするものの全体で生産効率が向上するだけでなく、開口率が20%拡大、光漏れが低減しコントラスト比が1.6倍、応答速度が4ms以下と従来の2倍と性能も大きく向上するとしている。
  7. ^ MVA型には、ディスプレイ・メーカーによってそれぞれの工夫が加えられて名称も異なるものが付いている。例えばシャープはCPA (Continuous Pinwheel Alignment) 型とASV (Advanced Super View) 型、MVA (Multi-domain Vertical Alignment) 型(MVA型は元は富士通のものだったが事業部がシャープに吸収された)、サムスン電子はPVA (Patterned Vertical Alignment) 型と呼んでいる。CPA型ではMVA型の特徴であり問題点でもあるドメインを形成せずディスクリネーションも発生させないように、従来は列状だった電極突起「リブ」を円錐形にすることで液晶分子の傾斜方向を360度全方向に均等に配向させている。応答速度も25ms程度と良好である。ただし、液晶分子が360度均等になると分子の長軸と偏光フィルムの偏光軸とが平行になる部分が生まれて光を透過しなくなるので、その方向だけが十字状に黒くなる。これを避けるために、カイラル剤によって配向に捩れを作り十字状の影を低減している。
  8. ^ Πセルと呼ばれるOCB用液晶分子の液晶材も2枚のガラス間に注入直後はスプレイ配向と呼ばれるほぼ面内方向を向いて整列しているが、最初に2V程度の電圧を1分ほど掛けると分子が弧を描いて並ぶOCB型の特徴的なベンド配向になり、以後は電界がなくともこれが維持される。
  9. ^ OCB型では、2009年7月現在で民生品では32型での試作段階である。
  10. ^ OCB型の高速応答性を利用して、フィールド・シーケンシャル・カラー (FSC) 方式の液晶ディスプレイが作られることもある。例えばサムスン電子は2005年10月にLEDバックライトを使うことでOCB型でFSC方式の32型カラーTVを発表している。

出典

  1. ^ 鈴木八十二著 『液晶ディスプレイ用語集』、日刊工業新聞社、2008年10月28日初版1刷発行、ISBN 9784526061479
  2. ^ a b 小林駿介著 『液晶、その不思議な世界へ』、オーム社、2007年11月30日第1版第1刷発行、ISBN 9784274204449
  3. ^ a b c 山崎照彦、他著 『カラーTFT液晶ディスプレイ』、共立出版、2005年10月30日改訂版大1刷、ISBN 4320086236
  4. ^ a b c 西久保晴彦著 『これで薄型ディスプレイのすべてがわかる』、秀和システム、2006年6月1日第1版第1刷発行、ISBN 4798013242
  5. ^ 小谷卓也 『"30年の夢"光配向液晶を実用化 シャープが堺新工場に全面導入へ』、日経エレクトロニクス2009年10月5日号、8-9頁
  6. ^ 西久保靖彦著 『大画面・薄型ディスプレイの疑問』、ソフトバンク・クリエイティブ、2009年3月24日初版第1刷発行、ISBN 9784797350531
  7. ^ 日経エレクトロニクス、2009年7月27日号、81頁
  8. ^ ナナオ、OCB方式を採用した広視野角の液晶テレビなど2機種を発表”. CNET Japan (2004年9月30日). 2022年7月8日閲覧。
  9. ^ ナナオ、応答速度5.5m秒のOCB液晶パネルを採用したデジタルハイビジョン液晶テレビ”. RBB TODAY. 2022年7月8日閲覧。

外部リンク


薄膜トランジスタ

(TFT-LCD から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/11 21:18 UTC 版)

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薄膜トランジスタ(はくまくトランジスタ、thin film transistor、TFT)は、電界効果トランジスタ(field effect transistor、以下FET)の1種である。基本的に三端子素子(バックゲート端子 (B) が存在しない)である。主に液晶ディスプレイ (LCD) に応用されている。半導体活性層としてセレン化カドミウム (CdSe) を使ったTFTは固体撮像素子用として1949年に発表され、1973年にLCDの駆動が発表された。半導体としてケイ素 (Si) を用いるものには、アモルファス多結晶膜とがあり、アモルファス膜は1979年に英国ダンディ大学で開発され、その後日本を中心にLCD用に活発に研究開発が進んだ。アモルファスSiと多結晶SiのTFTは、カラーTFT LCDとして広く応用されている。現在、最も多くのPCで使われている液晶で、携帯電話携帯情報端末携帯ゲーム機でも普及してきているが若干、高価である。

特徴と分類

ゲート電極の位置・層(レイヤー)の配置で、4種類に大別される。

  • スタガード (staggered) 型
  • インバーテッド・スタガード (inverted staggered) 型
  • コープレーナー (coplanar) 型
  • インバーテッド・コープレーナー (inverted coplanar) 型

スタガード型はドレイン電極とソース電極がチャネル層を挟んでゲート電極と反対側に配置されている。コープレーナー型はドレイン電極とソース電極がゲート電極とチャネル層の同じ側面に配置されている。インバーテッド型は別にボトムゲート型とも呼ばれ、ゲート電極がチャネル層の下側に配置されている。

通常の MOSFET と異なり、印加されたゲート電圧によって蓄積層 (accumulation layer) を形成してコンダクタンスを制御する。これは通常の MOSFET が反転層 (inversion layer) を形成してコンダクタンスを制御するのとは大きく異なる。すなわちn型のキャリアは電子、p型のキャリアはホールであることも特徴であり、同時にソース電極およびドレイン電極付近でpn接合を形成しない為、チャネル層の物質如何によってはpおよびn型両方の特徴を兼ね備えるアンバイポーラ (ambipolar) として機能する。

薄膜トランジスタの薄膜と言う呼称は、トランジスタを構成する半導体層やゲート絶縁膜、電極、保護絶縁膜などが真空蒸着スパッタリングプラズマを用いた化学気相成長プラズマCVD)などで薄膜状にガラスあるいは石英製の基板に形成されることに由来する。なお、基板にプラスチックを使う研究開発もなされている。

反転層を形成しないため、スレッショルド(しきい値電圧の意味が MOSFET のものと異なる( MOSFET ではスレッショルド電圧は強反転層を形成し始めるゲート-ソース電圧を指すが薄膜トランジスタでは反転層形成自体が存在しない)が、基本的な公式や考え方は MOSFET のそれと変わらず、そのままコンセプトを応用できる。ただしバックゲート電極が存在しないため、基板バイアス効果によるしきい値電圧の変動は行えない。

種類とその特徴

絶縁層にSiO2を用いたインバーテッド・スタガード型TFT
絶縁層に窒化膜を用いたインバーテッド・スタガード型TFT

現在広く使われているものはチャネル層に水素化アモルファスシリコン (a-Si:H: hydrogenated amorphous silicon) が使われているが、スレッショルド電圧が経過時間・ゲート電圧・温度により変化する不安定さが問題とされている。

これは

  1. バンドギャップ内に存在する不安定ステート (metastable state)
  2. 絶縁層内
  3. 境界ステート (interface state) に堆積された電子による影響

の3種類に大別される。

基本的にゲート印加電圧が低い場合の主因は1、電圧が高い場合は2と考えられ、3は通常無視される。

一部のメーカーにおいては一定時間の電圧と加熱により、ゲート印加電圧によって励起され不安定となったvalence band connectionをdangling bond (defect) として安定させることによって対策している。

また、a-Si:H以外にもさまざまな材料を使って薄膜トランジスタが作成されている。特に、バンドギャップの広い酸化物半導体などを用いた透明薄膜トランジスタ (transparent thin film transistor) や、有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタなどが盛んに研究されている.

TFD液晶

薄膜ダイオード (thin film diode) を用いた液晶ディスプレイ。TFT液晶をベースにダイオードを用い、簡略化している。セイコーエプソンなどが生産していて、2001年2004年にかけて三菱電機NECCASIO日立製作所京セラ製の携帯電話のカラー液晶などに使われていた。TFT液晶よりも消費電力や生産コスト面での利点があったが、発色や輝度、コントラスト等が少し低く、TFT液晶の生産コストの低下とともに、使われなくなった。後期になると、CrystalFine液晶などと銘打って、コントラストや発色を改善したものも登場した。

表示装置以外で使用される薄膜トランジスタ

コンピュータX線撮影でX線撮像素子(フラットパネルディテクター:FPD)として使用される[1][2][3]

脚注


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