コレステリック液晶
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 21:45 UTC 版)
「コレステロール」の記事における「コレステリック液晶」の解説
コレステロール脂質を含むいくつかのコレステロール誘導体はある種の液晶として知られており、この分子はコレステリック液晶と呼ばれる配向状態をとる。コレステリック液晶はネマティック液晶の一種であり、ネマティック液晶のダイレクタ(分子集合体の向き)が空間的に歳差運動のようにねじれながら回転していき、らせん状に配向する性質を持つ。これはコレステリック液晶分子がキラリティを有することに起因している(下図参照)。コレステリック液晶はキラルネマティック相とも呼ばれる。コレステリック相のらせんピッチは可視光線の波長と同程度であることが多く、このとき選択反射という現象が観察されて色が見える。刺身から緑色の反射光が見えることがあるのはこのためである。らせんピッチは微小な温度変化に応答するため、温度によって色彩が変化する。それゆえ、コレステロール誘導体は液晶温度計や温度応答性インキとして利用される。カナブンや玉虫のようなメタリックな色彩を示す甲虫の一部の構造色はこれによると考えられている。 コレステリック液晶は表示の書き換え時にのみ電圧印加が必要となるだけで、透過状態でも反射状態でも電気を消費しない。低い電圧で横向きらせん姿勢をとるため透過状態となり、通常は背面の黒を表示する。より高い電圧を加えれば縦向きらせん姿勢をとるため反射状態となる。 コレステリック液晶は色彩を反射するのでバックライトが不要であるという長所の一方、単色では1層の表示構造で済むが、擬似フルカラーでは少なくともRGBのような3層分を積層する必要があり、透過時の光損失によって表示が暗くなるという短所がある。 2005年には日本の家電メーカーがコレステリック液晶の試作品を製作した。コレステリック液晶を液晶ディスプレイとして用いたChLCD(英語版)の研究は1989年よりケント州立大学やアメリカ国立科学財団などでも行われており、その研究者たちによってKent Displays社が創立された。同社のChLCDを用いた商品にはブギーボード(英語版)があり、米国の小学校などでも使われている。日本ではキングジムから発売されている。 コレステリック晶の顕微鏡像 コレステリック(晶)状態の分子配列
※この「コレステリック液晶」の解説は、「コレステロール」の解説の一部です。
「コレステリック液晶」を含む「コレステロール」の記事については、「コレステロール」の概要を参照ください。
コレステリック液晶と同じ種類の言葉
- コレステリック液晶のページへのリンク