液晶に関わる都市伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 16:51 UTC 版)
「液晶ディスプレイの材料にはイカが使われている」という話と、「最初の液晶ディスプレイは、新人技術者の失敗から生まれた」という話が一部に出回っているが、これらは両方とも日本国内に限定されたもので、正しくない情報である。 1980年代に函館にあった日本化学飼料がイカの肝を原料としたダーク油からコレステリック液晶を製造販売していたのは事実である。また、この液晶をアクセサリーとして販売していた会社も存在する。液晶ディスプレイにイカが使われているという話には2つの系統があり、一つは、コレステリック液晶を使ったカラーテレビという、まったく実現されなかった話で、もう一つは、TN型液晶ディスプレイにイカ由来の原料が使われているという話である。後者に関しては、TN型液晶ディスプレイでコレステロール誘導体が使用されていたのは事実であるが、イカ由来のコレステロール誘導体の使用は確認されていない。また、イカ墨が天然の液晶物質であるという話も流布しているが、これも事実ではない。 液晶ディスプレイが新人の失敗から生れたという話はNHKのプロジェクトXが発祥と考えられる。当事者の記したものを調べると、プロジェクトX直後は、「大失敗」と表現されている事件は、2006年に公開された電気情報通信学会誌の記事では、『蓋を閉め忘れた液晶びんを見て、「しまった。空気中の水蒸気でシッフ塩基からなる液晶化合物が分解したかも知れない」と思うと同時に「そうだ、あの実験をやってみよう」と交流駆動の実験を行った』という話に、2007年の応用物理学会では、発明の内容について「イオン性有機化合物の意図的な添加であった。このアイデアの基礎となった液晶緩和現象と分子運動については、フランスのde Gennesらの液晶研究グループにより詳細な理論的検討がなされており、この論文はこの発明の切っ掛けをあたえてくれた。」と、先行研究があったことが示され、さらに2013年の書籍では、「1970年にOrsay LC GroupがPRL(Physical Review Letters)に出した論文で、ある程度のイオンがあればDSMが交流で効率よく起こることが理論解析で示されていた。しかし、1グラム数万円の液晶に不純物を添加するという行動は躊躇し、なかなか実行できない日々が続いていた。「このような時に幸運が舞い込んだ。」加水分解によりイオン性不純物が生じる液晶のサンプル瓶の蓋が閉め忘れて置いてあるのを見いだし「これはひょっとすると液晶が加水分解をしてイオン性不純物が増して液晶の導電率を上げてOrsayグループの言う交流駆動の条件を満足しているかも知れない」と早速この材料で交流駆動実験を行った。」という内容に変容する。交流の方が優れているという論文は、「大失敗」の1年前には公表されており、液晶を開発していたグループも目にする時間は十分にある。新人の失敗というストーリーは放送のための演出と考えるのが妥当である。
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