Giuseppe Peanoとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > Giuseppe Peanoの意味・解説 

ペアノ【Giuseppe Peano】


ジュゼッペ・ペアノ

(Giuseppe Peano から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/05 01:06 UTC 版)

Giuseppe Peano
ジュゼッペ・ペアノ
1910年代頃のペアノ
生誕 (1858-08-27) 1858年8月27日
イタリアピエモンテ州クーネオ
死没 (1932-04-20) 1932年4月20日(73歳没)
トリノ
研究分野 数学
言語学
研究機関 トリノ大学
アッカデーミア・デイ・リンチェイ
出身校 トリノ大学
博士課程
指導教員
エンリコ・ドヴィディオイタリア語版
他の指導教員 フランチェスコ・ファー・ディ・ブルーノ英語版イタリア語版
主な指導学生 マリア・グラメーニャイタリア語版
主な業績 ペアノの公理
ペアノ曲線
ペアノの存在定理
ペアノ-ジョルダン測度
ペアノの核定理英語版
ペアノ-ラッセル表記法英語版
無活用ラテン語
ベクトル空間
ペアノ曲面英語版
論理主義
主な受賞歴 聖マウリッツィオ・ラザロ勲章騎士
イタリア王冠勲章イタリア語版
アッカデーミア・デイ・リンチェイ特派員
プロジェクト:人物伝
テンプレートを表示

ジュゼッペ・ペアノペアーノ: Giuseppe Peanoイタリア語発音:[dʒuˈzɛppe peˈaːno]英語発音:[piˈɑːn][1], 1858年8月27日1932年4月20日)は、イタリア数学者言語学者自然数公理系 (ペアノの公理)、ペアノ曲線存在記号包含記号の考案者として知られる。

人工言語の一つである無活用ラテン語を提唱したことでも知られる。

経歴

イタリアのピエモンテ州クーネオスピネッタイタリア語版で生まれ育った。トリノリチェーオ・クラシコ・カヴールイタリア語版 で教育を受け、1876年にトリノ大学に入学した。1880年、数学で学位を取って卒業した。最初にエンリコ・ドヴィディオイタリア語版の助手として働き、次に微分積分学教授であったアンジェロ・ジェノッキイタリア語版の下に移った。ジェノッキが体調を崩したため、2年間ペアノが微分積分学の講座を担当した。ペアノの最初の主要な作品に、微分積分学の教科書 Calcolo differenziale, e principii di calcolo integrale がある。1884年にジェノッキの名で発表された[2][3]。数年後、論理学について扱った最初の書籍を発表した。現在も使用される和集合積集合を表す記法が初めて現れた登場した作品であった[4]

ペアノはフリーメイソンの会員であった。入会時のロッジは知られていないが、1885年12月24日に社会学者ジョヴァンニ・レルダ(Giovanni Lerda, 1853 - 1927)が運営していた[5]トリノのダンテ・アリギエーリロッジのマスターに就任した記録がある[6][7][8]

1887年のペアノ夫妻

1887年、トリノの画家ルイージ・クロージオ英語版の娘カローラ・クロージオ(Carola Crosio)と結婚した[9]。1886年、イタリア王立陸軍士官学校に雇用され[10]、1889年には第一クラスの教授に昇進した。同年、自然数の集合を形式的に特徴づけたペアノの公理を発表した。翌年、トリノ大学の正教授に就任した。ペアノ曲線は1890年にペアノが発表した最初の空間充填曲線の例であった。ペアノはこの曲線によって単位区間単位正方形濃度が等しいことを示した。昨今、ペアノ曲線はフラクタルとして知られるものの初期の一例としても認識されている。

1890年、 Rivista di Matematica 誌を創刊し、1891年1月に初号を発刊した[11]。1891年に Formulario mathematico英語版 の執筆を始め、発明した記法を使って、既知の科学の公式・定理を網羅した「数学の辞典」とすることを目標とした。1897年、第一回国際数学者会議(ICM)がチューリッヒで開催された。ペアノは重要な参加者であり、論理学の論文を発表した。また他の仕事を疎かにするほど、Formulario の作成に没頭するようになった。

1898年、二進法学会にメモを投稿し、音声記号として二進法を使用できることを述べた。また、数式を一行で記すことを要求して印刷が遅れたことを理由に、自身で印刷機を購入してしまうほど、苛立ちを感じていた。

1900年、パリにて第二回ICMが開催されたが、先立ってペアノがパトロンの一人を務めた第一回国際哲学会議英語版が開催されていた。ペアノは数学における「定義」の定義の問題を提起した。この作品はペアノの残りの人生における主たる関心事の一つとなった。また、バートランド・ラッセルと出会い、 Formulario のコピーを譲った。ラッセルはペアノの斬新な論理的記法に胸を打たれ、会議の後、"ペアノやその門弟の書いたすべての言葉を研究するため"一時期表舞台から身を引いた[12]

ペアノの門弟であるマリオ・ピエリアレッサンドロ・パドアも哲学会議にて論文を提出している。ペアノはICMでは講演を行わなかったが、パドアの講演は印象的で、後年にも度々言及された。数学的(かつ商業的)なアイデアの拡散を促進するための「国際補助語」の作成の呼びかけにおいて、ペアノは全面的な支持を行った。

1901年までに、ペアノは数学のキャリアの頂点を迎えた。解析学や基礎論、論理学分野を発展させ、微分積分学の教育において貢献を果たしたほか、微分方程式ベクトル解析にも貢献した。数学の公理化では重要な役割を担い、数理論理学の発展の先駆者となった。この段階までに、ペアノは Formulario に深く関わるようになり、一方で教育において支障をきたすようになった。ペアノは授業で新しい記法を教えることに熱心になるあまり、微分積分学の内容を軽視した。その結果、王立士官学校の職を失ってしまった[13][14]

1903年、ペアノは無活用ラテン語と呼ばれる国際補助語を発表した。これは後に Interlingua と称され、国際補助語協会インターリングアの前駆となった。無活用ラテン語の開発はペアノにとって Formulario の寄稿者を見つけることと同程度に重要な計画であった。当時広く知られていたラテン語の語彙を使い、できる限り文法を平易にし、学習を簡単にするために全ての例外を排除した。1908年1月3日、トリノ科学アカデミーイタリア語版にて論文をラテン語で読み上げ、それぞれの簡略化を説明しつつ、最後には全て無活用ラテン語で講演した[15]

1908年はペアノにとって重要な年であった。Formulario の最終巻が出版された。4200の公式と定理を無活用ラテン語で述べ、その全てが証明されている。しかし、内容の多くは当世風でなかったのであまり注目されなかった。同年、トリノ大学の高等解析学の教授職を得て2年間務めた。インターリングア学会英語版役員に選出された。この学会は以前イディオム・ネウトラルを開発していたが、これを放棄することを決め、ペアノの無活用ラテン語を採用した。

1910年に母が没し、教育や教科書作成、国際補助語の開発と推進に対してより多くの時間を割けるようになった。国際補助語運動に参加した人物らから尊敬を集めた。ペアノはアッカデーミア・デイ・リンチェイ会員の立場を利用して、会員でない友人や同僚の執筆した論文を発表した(リンチェイはこの期間に投稿された論文をすべて記録・発表した)。

1913年から1918年までの間、ペアノは様々な数値積分法の剰余項を扱った論文を幾つか発表した。また、ペアノ核英語版を導入した[16]

1925年、ペアノは微分積分学から Complementary Mathematics へ自身の教授職を非公式に移した。1931年、この移動が正式に認められた。死の前日までトリノ大学で講義をしていたが、心臓発作で没した[17]

略歴

ヴィナーディオにあるペアノの記念像

著書

Aritmetica generale e algebra elementare, 1902

出典

  1. ^ "Peano". Random House Webster's Unabridged Dictionary.
  2. ^ Genocchi, Angelo (1884). Calcolo differenziale, e principii di calcolo integrale. Fratelli Bocca. https://archive.org/details/calcolodifferen00peangoog/page/n12/mode/2up; pubblicato con aggiunte dal Dr. Giuseppe Peano (published with additions by Dr. Giuseppe Peano) 
  3. ^ Gouvêa, Fernando Q. (2011年5月11日). “Review of Giuseppe Peano: Between Mathematics and Logic edited by Fulvia Skof”. MAA Reviews, Mathematical Association of America. 2024年1月27日閲覧。
  4. ^ Richard N. Aufmann; Joanne Lockwood (29 January 2010). Intermediate Algebra: An Applied Approach. Cengage Learning. p. 10. ISBN 978-1-4390-4690-6. https://books.google.com/books?id=S7mEGD-VC1AC&pg=PA10 
  5. ^ Enrico Pasini; Clara Silvia Roero (2011). “Il carteggio Peano-Berneri” (イタリア語) (PDF). Giuseppe Peano: matematica, cultura e società. Cuneo, IT: l'Artistica Savigliano. pp. iii+103. OCLC 941880941. オリジナルの6 August 2020時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20200806110740/https://philarchive.org/archive/PASICF 2024年12月27日閲覧。  (here: p. 5)
  6. ^ Vittorio Gnocchini (2005). L’Italia dei Liberi Muratori. Ed.Erasmo. p. 213 
  7. ^ Giuseppe Peano”. Accademia di filosofia e delle scienze umane. 2024年12月27日閲覧。
  8. ^ Xoccato, Demetrio (2017). “Il Grande Oriente d'Italia e l'educazione: l'Azione delle logge nelle grandi città (1868–1925) / The Grand Orient of Italy and Education: The lodges and their deeds in big cities (1868–1925)”. Revista de Estudios Históricos de la Masonería Latinoamericana y Caribeña 9. doi:10.15517/rehmlac.v9i1.28189. 
  9. ^ The man who painted the MTA. Luigi Crosio 1835–1916 Archived 5 June 2008 at the Wayback Machine.. Schoenstatt webpage
  10. ^ O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “Giuseppe Peano”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews, https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Peano/ .
  11. ^ Ziwet, Alexander (1891). “A New Italian Mathematical Journal”. Bull. Amer. Math. Soc. 1 (2): 42–43. doi:10.1090/s0002-9904-1891-00023-1. https://www.ams.org/journals/bull/1891-01-02/S0002-9904-1891-00023-1/. 
  12. ^ Russell B., Autobiography, London, NY: Routledge, 1998, p.148.
    Russell, Bertrand (2009). 2019 edition. Routledge. pp. 135–136. ISBN 978-1-135-22381-6. https://books.google.com/books?id=uIKMAgAAQBAJ&pg=PA135  p. 136
  13. ^ Hubert Kennedy (1980), “6: The Formulario Project, 17: Completion of the Formulario”, Peano, Life and Works of Giuseppe Peano., D. Reidel, pp. 44–50, 118–124, ISBN 90-277-1067-8 
  14. ^ D'Amico, Nicola (2010) (イタリア語). Storia e storie della scuola italiana: dalle origini ai giorni nostri. Zanichelli. ISBN 978-88-08-07221-4 
  15. ^ Bodmer, Frederick (1944). The Loom of Language. London: George Allen & Unwin Ltd,. p. 468 
  16. ^ Hämmerlin, Günther; Hoffmann, Karl-Heinz (1991). Numerical Mathematics. Springer. pp. 192–194. ISBN 9780387974941. https://archive.org/details/numericalmathema00hmme_566 
  17. ^ Herrero Piñeyro 2019.
  18. ^ Angelo Genocchi, Giuseppe Peano (1884) (Italian). Calcolo differenziale e principii di calcolo integrale. Harvard University. Fratelli Bocca. http://archive.org/details/calcolodifferen00peangoog 
  19. ^ Giuseppe Peano (1887) (Italian). Applicazioni geometriche del calcolo infinitesimale. Harvard University. Fratelli Bocca. http://archive.org/details/applicazionigeo00peangoog 
  20. ^ Giuseppe Peano (1889) (Latin). Arithmetices principia: nova methodo. Harvard University. Fratres Bocca. http://archive.org/details/arithmeticespri00peangoog 
  21. ^ Peano, Giuseppe (1893). Lezioni di analisi infintesimale. Harvard University. Torino : G. Candeletti. http://archive.org/details/lezionidianalis00peangoog 

参考文献

  • F・ガレス・アシャースト『10人の大数学者 現代数学を築いた人々』好田順治訳、講談社ブルーバックス;B-632〉、1985年12月、173 - 197頁。ISBN 4-06-132632-5
  • Jean van Heijenoort (1889). The principles of arithmetic, presented by a new method 
  • Jean van Heijenoort (1967). A Source Book in Mathematical Logic, 1879–1931. Harvard Univ. Press. pp. 83–97 
  • Kennedy, Hubert C., ed (1973). Selected works of Giuseppe Peano. London: Allen & Unwin. 
  • Gillies, Douglas A. (1982). Frege, Dedekind, and Peano on the Foundations of Arithmetic. Assen, Netherlands: Van Gorcum. 
  • Ivor Grattan-Guinness (2000). The Search for Mathematical Roots 1870–1940. Princeton University Press 
  • Segre, Michael (1994). “Peano's Axioms in their Historical Context”. Archive for History of Exact Sciences 48: 201–342. 
  • Ferreirós, José (2005). “R. Dedekind, Was sind und was sollen die Zahlen? (1888), G. Peano, Arithmetics Principia, Nova Methodo Exposita (1889)”. In I. Grattan-Guinness. Landmark Writings in Western Mathematics 1640–1940. Amsterdam: Elsevier. ISBN 0444508716 
  • Herrero Piñeyro, Pédro José Amélie Nunez訳 (2019). “Peano”. La force de la logique symbolique mathématique. Barcelone: RBA Coleccionables. p. 156. ISBN 9788447398904 

関連項目

外部リンク



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「Giuseppe Peano」の関連用語

Giuseppe Peanoのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



Giuseppe Peanoのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのジュゼッペ・ペアノ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS