エルンスト・シュレーダー_(数学者)とは? わかりやすく解説

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エルンスト・シュレーダー (数学者)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/12 14:13 UTC 版)

Ernst schroeder
エルンスト・シュレーダー
生誕 (1841-11-25) 1841年11月25日
バーデン大公国マンハイム
死没 (1902-06-16) 1902年6月16日(60歳没)
ドイツ帝国カールスルーエ
研究分野 数学
研究機関 ダルムシュタット工科大学
カールスルーエ工科大学
出身校 ハイデルベルク大学
ケーニヒスベルク大学
博士課程
指導教員
オットー・ヘッセ
グスタフ・キルヒホフ
主な業績 シュレーダーの方程式
シュレーダー数英語版
シュレーダー–ベルンシュタインの性質英語版
シュレーダー–ベルンシュタインの定理英語版
シュレーダー–ヒッパルコス数英語版
プロジェクト:人物伝
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フリードリヒ・ヴィルヘルム・カール・エルンスト・シュレーダー: Friedrich Wilhelm Karl Ernst Schröderドイツ語発音: [ˈʃʁøːdɐ] (1841-11-25) 1841年11月25日 - 1902年6月16日(1902-06-16) )は、ドイツ数学者。主に代数論理学英語版分野で活躍した。数理論理学史における重要人物であり、ブールや、ド・モルガンマッコール英語版パースの作品の要約と拡張に貢献した。シュレーダーの3巻から成る不朽の書籍 Vorlesungen über die Algebra der Logik[注釈 1](1890 - 1905)では、今日の形式論理学の様々な体系を整えることによって、20世紀の時代に数理論理学を独立の分野として体現させる基底を築いた。

経歴

オットー・ヘッセグスタフ・キルヒホフフランツ・ノイマンらの下に、ハイデルベルク大学ケーニヒスベルク大学で学んだ。数年間を教育活動に費やし、1874年にダルムシュタット工科大学に移動した。2年後、カールスルーエ工科大学の数学科に職を得て、晩年をここで過ごした。生涯、結婚することがなかった[5]

功績

シュレーダーの形式代数学と形式論理学における初期の作品は、ジョージ・ブールオーガスタス・ド・モルガンの作品を知らずに書かれたものであった。代わりに、オームやハンケル、ヘルマン・グラスマンロベルト・グラスマンドイツ語版らの作品を参照していた[6]。その後、チャールズ・サンダース・パースの包摂や量化などの概念を自身の論文に加えた。

シュレーダーは代数学集合論束論[7]順序集合順序数の分野にも貢献している[5]。1898年、ベルンシュタインの定理カントール–ベルンシュタイン–シュレーダーの定理)を発見したが、シュレーダーの証明には誤りがあった。その後、フェリックス・ベルンシュタイン英語版博士論文にて正しい証明を発表した。

"Über die formalen Elemente der absoluten Algebra" (『絶対代数学の形式要素』)の初版の表紙

Schröder (1877) は、代数学と論理学におけるブールのアイデアを簡潔に紹介している。 この論文によって、ブールの作品がヨーロッパ大陸中に広まった。シュレーダーはグラスマン兄弟、とりわけロベルト・グラスマンドイツ語版Formenlehre に影響を受けていた[8]。また、ブールと違って、シュレーダーは順序集合における双対性英語版を十分に評価していた[5]ジョン・ベンクリスティーン・ラッド=フランクリン英語版はシュレーダーのこの短い書籍を細かく引用している。パースジョンズ・ホプキンズ大学の講義にシュレーダーのこの著作を使用した。

1890年から1905年までに執筆された、3巻からなる連作 Vorlesungen über die Algebra der Logik は、シュレーダーが自費で出版を賄った。19世紀末までの代数論理学英語版の歴史を包括的かつ学術的に調査して、20世紀に数理論理学が独立の分野として現れる際に大きな影響を与えた。関係の合成を積として捉え、ブール代数を関係の計算へと発展させた。

Vorlesungen は作品として非常に長大であり、その一部が英語に訳されている。Brady (2000) には Vorlesungen 全体の議論とともに掲載されている。

影響

述語論理の初期の発展におけるシュレーダーの影響は、主にパースの量化の作品によって広められ、フレーゲペアノらの作品ほどの大きさを誇った[9]。『プリンキピア・マテマティカ』に普及した関係性の概念は Vorlesungen に多大な影響を受けた。 Vorlesungen は『プリンキピア』の序文や、バートランド・ラッセルThe Principles of Mathematics英語版に引用されている。

フレーゲは、シュレーダーの研究を見逃し、その後の歴史的議論では、フレーゲを先駆者とする意見が優勢となった[10][11]

著作

  • Schröder, E (1877). Der Operationskreis des Logikkalküls. Leipzig: B.G. Teubner 
  • Schröder, E.. Vorlesungen über die Algebra der Logik. Leipzig: B.G. Teubner 、1966年に、Chelsea、2000年に Thoemmes Press が再販している。
    • Vorlesungen über die Algebra der Logik (Exakte Logik), Volume 1,
    • Vorlesungen über die Algebra der Logik (Exakte Logik), Volume 2, Abt. 1
    • Vorlesungen über die Algebra der Logik (Exakte Logik), Volume 2, Abt. 2
    • Algebra und Logik der Relative, der Vorlesungen über die Algebra der Logik 3, Volume 3, Abt. 1
  • Schröder, E. (1898). “Über zwei Definitionen der Endlichkeit und G. Cantor'sche Sätze”. Abh. Kaiserl. Leop.-Car. Akad. Naturf 71: 301–362. 

訳書

  • Brady, Geraldine (2000). From Peirce to Skolem. North Holland 

脚注

注釈

  1. ^ 日本語訳は『論理代数学講義』[1]、『論理の代数講義』[2]、『論理の代数学講義』[3]、『論理の代数学の講義』[4]など。

出典

  1. ^ J.デュドネ 著、上野健爾 訳『数学史』岩波書店,、1985年12月。ISBN 4-00-005505-4NDLJP:12608046 
  2. ^ ヒルベルトアッケルマン 著、伊藤誠 訳『記号論理学の基礎』大阪教育図書、1954年。NDLJP:2967817 
  3. ^ 水野清志『哲学概説』高文堂出版社、1976年。NDLJP:12222196 
  4. ^ 山崎正一『西洋近世哲学史』岩波書店、1965年。NDLJP:2971396 
  5. ^ a b c O'Connor, John J.; Robertson, Edmund F., “Friedrich Wilhelm Karl Ernst Schröder”, MacTutor History of Mathematics archive, University of St Andrews, https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Biographies/Schroder/ .
  6. ^ Peckhaus 1997.
  7. ^ "The Algebra of Logic Tradition". Stanford Encyclopedia of Philosophy.
  8. ^ Dipert 1990.
  9. ^ Lewis 1918.
  10. ^ Frege 1960.
  11. ^ Putnam 1982.

参考文献

外部リンク




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