基底 (線型代数学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/01 04:01 UTC 版)
線型代数学における基底(きてい、英: basis)は線型空間の線型独立な生成系である[1]。
概要
あらゆる線型空間はそれを生成できる線型独立なベクトル集合を1つ以上持つ。言い換えれば、線型結合で空間の全ベクトルを一意に表せるベクトル集合が常に存在する。そしてそれらベクトルの個数は各線形空間で一意に定まる。つまりあらゆる線形空間は「座標系」のような定数個の基本要素の線型結合で必ず表現できる[2]。このように線形空間を特徴づける、線型独立な生成系のことを基底と呼ぶ。
基底の取り方に依らない、基底ベクトルの個数(濃度)は次元と呼ばれる。基底が常に存在することは基底の存在定理で証明される。

定義
体 F 上の線型空間 V の基底 B とは、V の線型独立な部分集合で、V を張る(生成する)ものを言う[1]。
より具体的には、Vのn個のベクトルの集合B = {v1, …, vn}(または列B=(v1, …, vn))が基底であるとは、条件として
- 線型独立性
- a1, …, an ∈ F に対して a1v1 + … + anvn = 0 が成り立つならば、a1 = … = an = 0 でなければならない。
- 全域性
- V のどんな元 x も、適当な a1, …, an ∈ F を選んで x = a1v1 + … + anvn が成り立つようにできる。
を何れも満足することを言う。最後の等式における係数 ai は基底 B に関する 座標と呼ばれ、線型独立性により座標は一意的に定まることが分かる。
上記の条件を満たす整数nが存在するとき、その線形空間は有限次元であるという。そのようなnが存在しないときは無限次元であるという。無限次元線形空間を扱うには、上記定義を一般化して、基底が無限集合となる場合も認めなければならない。すなわち、(有限または無限の)部分集合 B ⊂ V が基底であるとは、
- 任意の有限部分集合 B0 ⊆ B が既に述べた意味で線型独立性を持つ。
- 各 x ∈ V に対して、適当な有限個のスカラー a1, …, an ∈ F とベクトル v1, …, vn ∈ B を選んで x = a1v1 + … + anvn と表すことができる(n は x ごとに違ってよい)。
の二条件を満たすことを言う。最後の式の和は必ず有限和であることに注意。これは、代数的なベクトル空間の公理だけからは(適当な構造を追加しない限り)極限操作に関する議論が展開できず、無限和に意味を持たせることができないことによるものである。無限和の場合を許した、別な種類の基底の概念が定義される場合については後述。
基底ベクトルを特定の「順序」で並べることが便利なことがよくある(例えば、線型写像の基底に関する変換行列を考える場合など)。そこで、基底を V を張る線型独立なベクトルの(集合と考える代わりに)列(あるいは n-組)と見た、順序付けられた基底 (ordered basis) がしばしば用いられる(短く「順序基底」や「順序付き基底」などともいう)。この順序を含めたうえで単に「基底」と呼ぶことも多い。これについても後述。
基底の延長
「基底 (線型代数学)」の例文・使い方・用例・文例
- そして記念碑の基底部分には願い事が刻まれている。
- 家族はピラミッド型社会経済組織の基底をなすものである.
- 基底胎座
- 蝸牛の基底膜
- 基底として16を持つ記数法の、または、基底として16を持つ記数法に関する
- 基底として8を持つ記数法の、または、基底として8を持つ記数法に関する
- 基底を固定した揺り椅子
- メラニン刺激ホルモンのコントロールの下にメラニンを産出する、表皮の基底層にある細胞
- 胃の基底部
- 迷路を供給する基底動脈の分枝である動脈
- 前大脳動脈に付随し、基底静脈に注ぐ
- 基底静脈の支流
- 胃の基底部に沿って並んでいる上皮細胞によって作り出される消化管ホルモン
- 鼻腔のすぐ上の脳の基底部にある嗅神経末端の2つの拡張のうちの1つ
- 脳の側脳室に位置する尾の形をした基底核
- 自律神経系を支配する間脳の基底部
- 卵門の反対側にある植物の胚珠の基底膜側部分
- 基底胎座あるいは中央胎座と、3核の花粉(顕花植物では二核の方が一般的)を持つ、主に花科のグループ
- 芝生に似た基底葉を有している北アメリカの小さなハーブ属:アメリカカンボク
- いくつかの長い総状花序で大部分は基底葉とクリーム色であるか薄い色のピンクのフリンジ付きの花で茂みで成長している設備
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