自然数の公理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 03:05 UTC 版)
「ペアノの公理」も参照 自然数がどんなものかは子供でも簡単に理解できるが、その定義は簡単ではない。自然数を初めに厳密に定義可能な公理として提示されたものにペアノの公理があり(1891年、ジュゼッペ・ペアノ)、以下のように自然数を定義することができる。 自然数 1 が存在する。 任意の自然数 a にはその後者 (successor) の自然数 suc(a) が存在する(suc(a) は a + 1 の "意味")。 異なる自然数は異なる後者を持つ。つまり a ≠ b のとき suc(a) ≠ suc(b) となる。(ある種の単射性) 1 はいかなる自然数の後者でもない(1 より前の自然数は存在しない)。 1 がある性質を満たし、a がある性質を満たせばその後者 suc(a) もその性質を満たすとき、すべての自然数はその性質を満たす。 最後の公理は、数学的帰納法を正当化するものである。また、上の公理に現れる数字は 1 だけであり、自然数 1 からすべての自然数が作り出されることを意味している。一方、この公理の "1" を "0" に置き換えれば、自然数 0, 1, 2, 3, … を作り出せる。 ただし、ペアノの原典においては上とは少し違った形式で公理系が述べられており、ペアノ自身は自然数そのものを定義しようとしたわけではなかった。 集合論において標準的となっている自然数の構成は以下の通りである。 空集合を 0 と定義する。 0 := ∅ = { } . {\displaystyle 0:=\emptyset =\{\}.} 任意の集合 a の後者は a と {a} の合併集合として定義される。 s u c ( a ) := a ∪ { a } . {\displaystyle \mathrm {suc} (a):=a\cup \{a\}.} 0 を含み後者関数について閉じている集合のひとつを M とする。 自然数は「後者関数について閉じていて、0 を含む M の部分集合の共通部分」として定義される。 無限集合の公理により集合 M が存在することが分かり、このように定義された集合がペアノの公理を満たすことが示される。このとき、それぞれの自然数は、その数より小さい自然数全てを要素とする数の集合、となる。 0 := {} 1 := suc(0) = {0} = {{}} 2 := suc(1) = {0, 1} = {0, {0}} = { {}, {{}} } 3 := suc(2) = {0, 1, 2} = {0, {0}, {0, {0}}} = { {}, {{}}, { {}, {{}} } } 等々である。 このように定義された集合 n は丁度(通常の意味で)n 個の元を含むことになる。また、これは有限順序数の構成であり、(通常の意味で)n ≤ m が成り立つことと n が m の部分集合であることは同値である。 以上の構成は、自然数を表すのに有用で便利そうな定義を選んだひとつの結果であり、他にも自然数の定義は無限にできる。これはペアノの公理を満たす後者関数 suc(a) と最小値の定義が無限に選べるからである。 例えば、0 := {}, suc(a) := {a} と定義したならば、 0 := {} 1 := {0} = {{}} 2 := {1} = {{{}}} 3 := {2} = {{{{}}}} と非常に単純な自然数になる。また、0 := {{}}, suc(a) := a ∪ {a} と定義したならば、 0 := {{}} 1 := {{}, 0} = {{}, {{}}} 2 := {{}, 0, 1} = {{}, {{}}, {{},{{}}} } 3 := {{}, 0, 1, 2} = {{}, {{}}, {{},{{}}}, {{},{{}},{{},{{}}}} } のような多少複雑な自然数になる。
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