首
『赤と黒』(スタンダール)第2部第10章・第45章 マチルドの先祖ラ・モールは政変で処刑されたが、その愛人マルグリット妃が、死刑執行人からラ・モールの首を譲りうけ、自らの手で葬った。この出来事に感銘を受けたマチルドは、後に、ギロチンで処刑された恋人ジュリアン・ソレルの首に口づけし、首を膝に抱いて運び、山の洞窟に埋めた。
『サロメ』(ワイルド) 処女サロメは、美しい若者である預言者ヨカナーンを恋し、「お前の唇に口づけさせておくれ」と繰り返し求愛する。しかしヨカナーンはサロメを拒絶し、「けがらわしい女め」とののしる。サロメの願いで(*→〔踊り〕2)、エロド(=ヘロデ)王はヨカナーンを斬首する。サロメは、血のしたたるヨカナーンの首に口づけする。エロド王は兵に、「サロメを殺せ」と命ずる。
『デカメロン』第4日第5話 リザベッタの恋人が、彼女の兄たちによって殺される。リザベッタは恋人の首を掘り出して、めぼうきの鉢植えに隠し、毎日これを見て泣く。
『ユディト書』(旧約聖書外典) ホロフェルネス率いるアッシリア軍が、ベトゥリアの町を包囲する。町を救うため、寡婦ユディトが敵陣へ乗りこみ、美貌と才知でホロフェルネスを欺く。ユディトは、ホロフェルネスを酔わせ眠らせて、彼の首を取る。
★2.女の首と男。
『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』(鶴屋南北)「愛染院門前の場」 薩摩源五兵衛は芸者・小万を殺し(*→〔書き換え〕2)、その首を持って荒れ寺へ行き、1人で飯を食う。「お前と2人、食事をしようと思うたに」と源五兵衛は語りかけ、飲みさしの茶を小万の首にぶっかける。
★3a.合戦で、敵の首を取る。
才蔵竹の伝説 福島正則臣下の豪傑・可児才蔵は、若い時合戦に出て、敵の首を19も取った。全部を持ち帰ることはできないので、自分が討ち取ったしるしとして、首の口に笹の葉をさした。そのことから、彼は「笹の才蔵」と呼ばれるようになった(広島県広島市周辺)→〔竹〕3。
『さんせう太夫』(説経) つし王(厨子王)は丹後の国司となり、由良の港の人買い・さんせう太夫を処罰する。つし王は、太夫の3人の息子のうち、もっとも邪険だった三郎に竹鋸を与え、「これで父の首を引け」と命ずる。さんせう太夫の身体は穴を掘って肩まで埋められ、三郎は竹鋸を106回引いて、ようやく父の首を切り落とす〔*三郎も、往来の人々に7日7夜、竹鋸で首を引かれて死ぬ〕。
『夏祭浪花鑑』「長町裏殺しの場」~「団七住居の場」 団七九郎兵衛は、舅(=妻お梶の父親)義平次を殺した。これは親殺しの大罪である。団七はもとより、妻お梶・息子市松も連座して、竹鋸で首を引かれる刑に処せられるのだ。彼らを鋸引きの刑から救うため、団七の義兄弟・一寸徳兵衛は、お梶に不義をしかける〔*実際には、江戸時代には竹鋸の刑は行なわれなかったという〕→〔縁切り〕2。
『黄金伝説』119「洗者聖ヨハネ刎首」 聖ヨハネはアラビアのある城砦で首を刎ねられ、その首はイェルサレムのヘロデの宮殿のそばに葬られた。首を胴体といっしょに葬ったのでは、生き返るかもしれないと思われたからである。
『吸血鬼ドラキュラ』(ストーカー)15~16「ドクター・セワードの日記(つづき)」 若い娘ルーシーは吸血鬼ドラキュラ伯爵に咬まれ、死んで埋葬される。しかし彼女は実際には不死の吸血鬼となったのであり、夜になると棺を開き、血を求めてさまよい出る。ルーシーを本当に死なせてその魂を救うために、婚約者アーサーやヘルシング教授らが墓をあばき、彼女の胸に杭を打ち込む。それだけではなお不十分なので、さらに首を切断し、口にニンニクをつめる。
『ドウエル教授の首』(ベリャーエフ) ドウエル教授は、遺体から切り取った器官の再生実験によって、名声を得ていた。しかしドウエルは不治の病にかかり、死んでしまった〔*研究協力者のケルンが、ドウエルの業績を横取りしようと、巧妙に彼を殺したのかもしれなかった〕。ケルンは、ドウエルの首を胴体から切り離して蘇生させる。ドウエルの首は、動くことはできないが、研究論文も読めるし会話もできる。ただし、首だけの存在では生命力は長続きせず、ドウエルは息子アルトゥールに看取られて、息を引き取る〔*ケルンは殺人罪で告発され、拳銃自殺した〕。
★5a.首提灯。
『首提灯』(落語) 夜道で侍が、酔っぱらいの首を居合抜きに切る。酔っぱらいは切られたことに気づかないが、首がだんだん身体からずれて来る。折からの火事騒ぎで大勢の人が出てきたので、酔っぱらいは手で自分の首を差し上げて「はい、ごめんよ。はい、ごめんよ」。
『神曲』(ダンテ)「地獄篇」第28歌 英国王父子を仲違いさせた男ベルトラン・ド・ボルンは、死後地獄に堕ちて悪魔の剣で首を切り取られた。彼は自分の首を提灯のごとく手に掲げて歩き、「父と子を2つに分けた俺は、その報いでこのように2つに分けられた」と、「私(ダンテ)」に語った。
★5b.首と西瓜。
『サザエさん』(長谷川町子)朝日文庫版・第28巻123ページ ノリスケが人間の頭ほどの大きさの西瓜を包み、夜、鉄道便の受付に持って行く。「送り先はどこですか?」と聞かれて、ノリスケは「どこでもいいですよ。ヒヒヒ」と気味悪く笑う。受付係は包みを取り落とし、赤い汁が出るのを見て悲鳴を上げる。ノリスケは「ちょいと納涼がすぎたかな」と言って去る。
『西瓜』(岡本綺堂) 御家人の下僕・伊平が、風呂敷包みの西瓜を持って辻番所の前を通る。番人たちが怪しんで風呂敷を調べると、中から女の生首が出てくる。驚いて見直すと、もとの西瓜である。伊平は帰邸してこのことを奥様に語る。奥様が風呂敷をあけると生首である。しかし主人が見直すと西瓜である。主人は西瓜を割る。西瓜の中からは、青蛙と長い髪が出てきた。
*西瓜に似た丸いもの→〔小人〕9の『踊る一寸法師』(江戸川乱歩)。
★6.首売り。
『首屋』(落語) 「首屋でござい」と言って歩く男がいるので、殿様が屋敷へ呼び入れる。殿様は、首の代金7両2分を前払いして、刀を抜き、男の首に斬りつける。男はひらりと体をかわし、手持ちの風呂敷包みから、張り子の首を投げ出して逃げる。殿様「これは張り子ではないか。買ったのはお前の首だ」。男「こちらは看板でございます」。
『子連れ狼』(小池一夫/小島剛夕)其之17「二河白道」 拝一刀は、徳川幕府の要職である公儀介錯人として、何人もの大名の首を斬った。柳生烈堂率いる裏柳生一門が、公儀介錯人の地位をねらい、拝一刀を無実の罪に落とし入れる〔*一刀の妻・臨月の薊(あざみ)も、惨殺される。胎児・大五郎は臍の緒がついたまま、薊の腹からこぼれ出ていた〕。拝一刀は大五郎を乳母車に乗せ、諸国流浪の刺客となって、冥府魔道を生きる。
『法句経物語』第100偈 「赤ひげ」と呼ばれる男が、首斬り役人を55年間つとめた。若い頃は1度に5百人を斬った赤ひげも、年老いて、1人の罪人をさえ、2度・3度と斬りなおさねばならなくなり、罪人は苦しんだ。彼は免職になり、その後、サーリプッタ長老の説法を聞いて、預流果(よるか)の手前の従順忍を得た。赤ひげは、説法を終えて帰る長老を送って行き、その戻り道で牛に突かれて死んだ。彼はツシタ(兜率)の天宮に生まれた。
『聊斎志異』巻2-66「快刀」 ある兵士が、たいへん良く斬れる刀を持っていた。処刑される男が兵士に、「貴方の刀は、首を斬ってもやり直しをしたことがないそうだね。貴方の刀で私を斬ってくれ」と頼んだ。兵士は承知し、刀を一閃して、男の首を斬り落とす。首はころころと転がりながら、大いに褒めて言った。「すごい刀だ」。
★8.首をつけかえる。
『聊斎志異』巻2-47「陸判」 朱爾旦は、閻魔王に仕える判官像(=陸判官)と親しくなった(*→〔像〕8a)。朱爾旦は、かねてから妻の容貌に不満を持っていたので、陸判官に「美女の顔と取り替えてくれ」と頼む。陸判官は、朱の妻が就寝中にその首を切り落として埋め、他所で殺された美女の首を持って来て付け替えた。
*頭をつけかえる→〔頭〕5bの『屍鬼二十五話』(ソーマデーヴァ)第6話。首と同じ種類の言葉
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