にせ首
『一谷嫩軍記』3段目「熊谷陣屋」 平敦盛は、実は平氏でなく白河院の子だった。源氏の武将・熊谷直実はその秘密を知り、「おもてむきは敦盛を討ち取ったことにして、彼の命をひそかに救おう」と考える。直実は自分の息子・小次郎を犠牲にし、その首を「敦盛の首」といつわって源義経に示す。義経は事情をすべて承知しており、「我が心を察し、よくぞ討った」と直実を褒める。
『近江源氏先陣館』8段目「盛綱陣屋」 佐々木盛綱・高綱兄弟は、北条時政方と源頼家方に分かれ、敵同士になる。高綱の息子・小四郎が捕らわれて、盛綱の陣屋に来る。さらに「高綱討死」の報とともに、高綱の首がもたらされて、北条時政の前で首実検が行なわれる。小四郎が首を見て、「父上、無念でござろう」と言って切腹するので、時政は「本物の高綱の首だ」と思う。しかしそれはにせ首で、小四郎が自分の命を捨てて、時政を欺いたのだった。
『菅原伝授手習鑑』4段目「寺子屋」 菅原道真が流罪になり、寺子屋を開く武部源蔵が、道真の一子・菅秀才をかくまう。藤原時平の家来・春藤玄蕃が、「菅秀才の首を討て」と源蔵に迫る。時平の舎人でありながら道真に心を寄せる松王丸が、我が子小太郎を源蔵の寺子屋へ送り、菅秀才の身代わりとして小太郎の首を討たせる。
『満仲』(能) 満仲は、息子・美女御前が仏道を学ばず武芸の稽古に明け暮れているのを知って怒り、家臣・仲光に「美女御前を斬れ」と命ずる。仲光は主君の若君を殺すことができず、身代わりに我が子・幸寿丸の首を討って満仲に差し出す〔*『満仲』(幸若舞)に類話〕。
*→〔瓜二つ〕1の『鎌倉三代記』7段目・『南総里見八犬伝』第8輯巻之3第78~79回・〔誤解による殺害〕2の『義経千本桜』3段目「すし屋」。
『まっしろ白鳥』(グリム)KHM46 魔法使いの男が、3人姉妹の長女と次女を殺し、末娘を嫁にすると言う。末娘は、魔法使いが以前に殺した死人の首に髪飾りをほどこし花輪をのせ、屋根裏部屋の窓辺に置く。魔法使いはその首を見て花嫁と思い、家に入ったところを閉じこめられ、家に火をかけられて殺される。
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