各巻の巻名歌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/10/19 09:28 UTC 版)
贈答歌双方に巻名が含まれている時はその両方を記した。巻名が和歌に由来しない巻については巻名の由来について記した。 1桐壺本巻の主要な登場人物である桐壺帝と桐壺更衣の名に由来する。 2帚木「帚木の心をしらでその原の道にあやなくまどひぬるかな」光源氏 「数ならぬ伏屋に生ふる名のうさにあるにもあらず消ゆる帚木」空蝉 3空蝉「空蝉の身をかへてける木のもとになほ人がらのなつかしきかな」光源氏 「空蝉の羽におく露の木がくれてしのびしのびにぬるる袖かな」空蝉 4夕顔「心あてにそれかとぞ見る白鷺の光そへたる夕顔の花」夕顔 5若紫、「手に摘みていつしかも見む紫のねにかよひける野辺の若草」光源氏 6末摘花「なつかしき色ともなしに何にこのすえつむ花を袖にふれけむ」光源氏 7紅葉賀朱雀院へ行幸の際紅葉の賀が行われたことに由来する。 8花宴本巻で桜花の宴が催されたことに由来する。 9葵「はかなしや人のかざせるあふひゆえ神のゆるしのけふを待ちける」光源氏 「かざしける心ぞあだに思ほゆる八十氏人になべてあふひを」源典侍 10賢木「神垣はしるしの杉もなきものをいかにまがへて折れるさかきぞ」光源氏 「少女子があたりと思へば榊葉の香りをなつかしみとめてこそ折れ」六条御息所 11花散里「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ」光源氏 12須磨本巻の特に後半の主要な舞台が須磨であることに由来する。 13明石本巻での主要な舞台が明石であることに由来する。 14澪標「みをつくし恋ふるしるしにここまでもめぐり逢ひけるえには深しな」光源氏 「数ならでなにはのこともかひなきになどみをつくし思ひそめけむ」明石の御方 15蓬生本巻で舞台となった末摘花の屋敷が荒れ果てて蓬が生えていることに由来する。 16関屋光源氏と空蝉が逢坂の関で邂逅したことに由来する。 17絵合本巻の中で絵合が行われていることに由来する。 18松風「身を変へて一人帰れる山里に聞きしに似たる松風ぞ吹く」明石の尼君 19薄雲「入り日さす峰にたなびく薄雲はもの思ふ袖に色やまがへる」光源氏 20朝顔「見しおりのつゆわすられぬ朝顔の花のさかりは過ぎやしぬらん」光源氏 「秋はてて露のまがきにむすぼほれあるかなきかにうつる朝顔」朝顔 21少女「をとめごも神さびぬらし天つ袖ふるき世の友よはひ経ぬれば」光源氏 「日かげにもしるかりけめやをとめごがあまの羽袖にかけし心は」夕霧 22玉鬘「恋ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなる筋を尋ね来つらむ」光源氏 23初音「年月を松にひかれて経る人に今日鴬の初音聞かせよ」明石の御方 24胡蝶「花ぞののこてふをさへや下草に秋まつむしはうとく見るらむ」紫の上 「こてふにもさそはれなまし心にありて八重山吹をへだてざれせば」秋好中宮 25蛍「声はせで身をのみ焦がす蛍こそ言ふよりまさる思ひなるらめ」玉鬘 26常夏「なでしこのとこなつかしき色を見ばもとの垣根を人や尋ねむ」光源氏 27篝火「篝火にたちそふ恋の煙こそ世には絶えせぬほのほなりけれ」光源氏 「行く方なき空に消ちてよ篝火のたよりにたぐふ煙とならば」玉鬘 28野分本巻の中で野分(台風)が襲来したことに由来する。 29行幸「うちぎらし朝ぐもりせしみゆきにはさやかに空の光やは見し」玉鬘 「あかねさす光は空にくもらぬをなどてみゆきに目をきらしけむ」光源氏 30藤袴「同じ野の露にやつるる藤袴あはれはかけよかことばかりも」夕霧 31真木柱「今はとて宿かれぬとも馴れ来つる真木の柱はわれを忘るな」真木柱 32梅枝その巻の中で宴の席で弁少将(内大臣の次男、後の紅梅大納言)が歌った催馬楽に由来する。 33藤裏葉「春日さす藤の裏葉のうらとけて君し思はば我も頼まむ」内大臣 34若菜上、35若菜下「小松原末のよはひに引かれてや野辺の若菜も年をつむべき」光源氏 36柏木「柏木に葉守の神はまさずとも人ならすべき宿の梢か」落葉の宮 37横笛「横笛のしらべはことにかはらぬをむなしくなりし音こそつきせぬ」夕霧 38鈴虫「おほかたの秋をばうしと知りにしをふり棄てがたきすず虫のこえ」女三宮 「こころもて草のやどりをいとへどもなほすず虫の声ぞふりせぬ」光源氏 39夕霧「山里のあはれをそふる夕霧に立ち出でん空もなき心地して」夕霧 40御法「絶えぬべき御法ながらぞ頼まるる世々にと結ぶ中の契りを」紫の上 41幻「大空をかよふまぼろし夢にだに見えこぬ魂(たま)の行く方たづねよ」光源氏 42匂宮(匂兵部卿)その巻の主人公が「匂ふ兵部卿」と呼ばれていることに由来する。 43紅梅紅梅大納言が紅梅の枝に和歌を添えて贈ったことに由来する。 44竹河「竹河のはしうち出でしひとふしに深きこころのそこは知りきや」薫 「竹河に夜をふかさじといそぎしもいかなるふしを思ひおかまし」藤侍従 45橋姫「橋姫の心を汲みて高瀬さす棹のしづくに袖ぞ濡れぬる」薫 46椎本「立ち寄らむ陰とたのみし椎が本むなしき床になりにけるかな」薫 47総角「あげまきに 長き契りをむすびこめ おなじところに よりもあはなむ」薫 58早蕨「この春は誰にか見せむ 亡き人の形見に摘める 嶺の早蕨」宇治の中君 49宿木「やどりきと思ひ出でずは 木のもとの旅寝もいかにさびしからまし」薫 「荒れ果つる朽木のもとをやどりきと思ひおきけるほどのかなしさ」弁の尼 50東屋「さしとむるむぐらやしげき東屋のあまりほどふる雨そそきかな」薫 51浮舟「橘の小島の色はかはらじをこのうき舟ぞゆくへ知られぬ」浮舟 52蜻蛉「ありと見て手にはとられず見ればまたゆくへもしらず消えしかげろふ」薫 53手習本巻の中で自殺を図ったが助けられた浮舟が手習いをして心を慰めたことに由来する。 54夢浮橋巻の主題とおぼしき語句に由来する。 本文中に無い「世の中は夢の渡りの浮橋かうちわたりつつものをこそ思へ」に由来するとの説がある。
※この「各巻の巻名歌」の解説は、「源氏物語巻名歌」の解説の一部です。
「各巻の巻名歌」を含む「源氏物語巻名歌」の記事については、「源氏物語巻名歌」の概要を参照ください。
- 各巻の巻名歌のページへのリンク