すず‐むし【鈴虫】
鈴虫
スズムシ
(鈴虫 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/24 13:16 UTC 版)
|
|
| スズムシ | |||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
左:オス、右:メス
|
|||||||||||||||||||||
| 分類 | |||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||
| 学名 | |||||||||||||||||||||
| Meloimorpha japonicus (Haan, 1844) |
|||||||||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||
| スズムシ[1][2] | |||||||||||||||||||||
| 英名 | |||||||||||||||||||||
| bell cricket |
スズムシ(鈴虫、金鐘児[要出典] 、学名: Meloimorpha japonicus)は、バッタ目スズムシ科の昆虫。古くは「マツムシ」と呼ばれるなど、双方に混同があった。英語では bell cricket という[3]。
形態
体長は17〜25ミリ[4]。頭部は小さく、複眼のみで単眼は退化している。翅は幅広く、瓜の種のような形をしている、羽は2枚と思われがちだが、羽化直後の成虫個体は4枚あり、その後に後脚で後翅を自ら脱落させる。羽化間もない個体は飛ぶこともあり、明かりに集まり、自動販売機の下などで鳴き声が聞かれることもある。なお、長翅型と短翅型があり、飛ぶのは長翅型のみである。飼育を重ねた販売個体は短翅型の割合が多い上、飛翔筋の発達も悪いことが多いため飛ぶことは非常に稀である。夜行性のため触角が長くなっており、触角は白い部分が多く一部は黒い[4]。
スズムシの声は古くから「鳴く虫の王」と呼ばれている[5]。雄の羽は幅が広く脈が発達しており、太い脈の一部はヤスリのようになっていて、羽を垂直に立てて細かく鳴き続ける(独り鳴き)[4][5]。
生態
成虫は夏に出現し、森林縁またはススキなどの多い暗い茂みの地表に生息する。自然の豊かな農村などでは、田畑の脇の草むらで大きな石やコンクリート片などをひっくり返すと、多数の個体が潜んでいる姿に出会うこともある。他の地表性の種、たとえばエンマコオロギなどに比べ脚が比較的長く、細いため、穴を掘ることはなく物陰に隠れるのみである。
基本的に夜行性であり、昼間は地表の物陰に隠れ、夜に下草の間で鳴き声を上げるが、曇りの日などは昼夜を問わず良く鳴く。雌は産卵管を土中に挿し込み産卵する。
成虫の羽化は7月下旬頃に始まり、9月いっぱいまで鳴き声が聴かれる。10月初旬にはほぼ全ての野生個体が死ぬが、飼育下ではしばしばさらに遅くまで生存する。
食性は雑食性で、野生下では草木の葉や小昆虫の死骸等を食べている。
分布
日本では本州(東北南部以南[6])、四国、九州、国外では中国東北部、朝鮮半島などに分布する[7]。
かつては、秋田県五城目町が日本でのスズムシ群棲地の北限として知られ、県の天然記念物にも指定されていたが、平成の初めから鳴き声が聞こえなくなり、2020年には群棲地の指定が解除された[8]。
分類
亜種は知られていない。
養殖物から逃げたものも多数存在するものと考えられ、遺伝子汚染が進んでいる可能性は否定できない。ただし羽化してまもない新成虫個体は後翅も存在する。またメス個体の場合も腹部の卵巣が未成熟な時期には、産卵時期に比べ体重が軽い。そのため、晩夏から初秋にかけて飛翔していることが確認できる。水銀灯や時には家屋の明かりに来ることもある。このことから近親交配を避け各地の生息域に分散している可能性もある。
人間との関わり
飼育と鳴き声鑑賞
澄んだ鳴き声が綺麗であり、観賞するために昔からしばしば飼育されてきた。平安時代には上流階級の間で親しまれていたという。現在でも夏から秋になると店先で成虫が販売されるが、これは江戸時代にはあった風習だといい、この頃には養殖技術もあり庶民にも広く広まったようである。販売時期について昔は今より早かったようで、明治時代に書かれた『東京年中行事』によると東京では5月下旬の不動の縁日のころから、販売され始め風鈴と共に初夏の名物だったとされている[9]。
文部省唱歌の「蟲のこゑ」では、「あれマツムシが鳴いているチンチロ チンチロ チンチロリン」に対して「あれスズムシも鳴きだした リンリン リンリン リーンリン」とあるように、標準的な聞きなしとしては「リーン、リーン」などである。
虫を聴く文化は日本や中国大陸などで継承されてきた文化である[10]。欧米人は虫の鳴き声を雑音として聞くか、鳴いていることすら気付かない場合が多いとされ、その要因は人種的な違いではなく幼少期の話し言葉の環境によるとする説がある[10]。医学者の角田忠信によると、人間は一般には左脳が言語、右脳が言語以外の雑音の処理を行っているが、9歳までの時期を日本語で育つと母音の音の物理的構造に似た人の感情音や自然界のさまざまな音を左脳で処理するようになり、日本人は例外的に虫の声をはじめ自然界の音を言葉と同様に左脳で聞いているとする研究を発表している[11][10]。また、小泉八雲は、虫を愛するのは日本人とギリシャ人のみだと述べている[12]。ただし、虫を聴く文化は中国などでもみられ、ヨーロッパなどにも、虫の鳴き声を歌になぞらえた詩や歌がある[12][13]ことから、それだけですべてを説明するのは無理で、自然環境や四季の変化がその要因になっているともいわれている[10]。
他の鳴く虫にも言えることだが、周波数が高すぎるために一部の録音機材では録音できず、古典的な電話では鳴き声を伝えられない[14]。
種の保全状況評価
都道府県が作成するレッドリストでは、長野県で絶滅の恐れのある地域個体群、埼玉県と神奈川県で県独自のランク、群馬県で情報不足とされている。長野県松川村にはスズムシ捕獲禁止条例がある。
象徴
日本にはスズムシを「自治体の虫」とする日本の地方公共団体がある。
飼育
飼育は非常に容易で、キュウリやナスを主な餌とし鰹節など動物質(タンパク質)の餌を与えると、共食いも防げる。ジャンプ力はあるが、ガラスやプラスティックは上らないため、ある程度の高さがあればガラス水槽やプラケースなどで飼育できる。赤玉土などを敷いて湿度を保っておくと雌雄がいれば容易に産卵する。翌年まで湿度を保っていると、5月下旬から6月上旬ぐらいに数週間かけて孵化する。地域の気温、飼育場所の温度差により差異もあるが、何回か脱皮をすると早い個体では7月下旬ごろ成虫になる。鳴く虫は秋のイメージがあるが、本種含め本来は比較的暑い時期から鳴き始める。最近ホームセンター等で晩春から初夏にかけて売られている成虫個体は温度管理により羽化を早められたものである。
上記の通り、キュウリやナスはもちろん、カボチャやサツマイモに至るまで食べる。自然界においてはススキやクズの群生地で野生個体を多く見かけられることから、食草は比較的幅広いと推測出来る。
名前
日本昆虫学会が定める標準和名は「スズムシ」とされ、『日本産昆虫総目録Ⅰ』(1989)[1]、『日本昆虫目録 第3巻 直翅系昆虫類』(2020)[2]にはこの名前で掲載されており、図鑑や目録もこの名前で掲載するものが多い。鈴を鳴らした音のような澄んだ鳴き声に因む生態的な命名である。
方言名は少ないが「ちんちろりん」、「りんりんむし」などがいずれも広い範囲で使われているという[15]。
「ちんちろりん」はマツムシの声であり、マツムシとスズムシは今でもしばしば混同される。これは昔からの様であり、江戸時代の博物図鑑『千蟲譜』には、学者である源弘賢が両者の比較について長々と述べている箇所がある[16]
脚注
出典
- 1 2 平嶋義宏 監修,九州大学農学部昆虫学教室・日本野生生物研究センター 編 (1989) 『日本産昆虫総目録Ⅰ』. 九州大学農学部昆虫学教室, 福岡. doi:10.11501/13643318(国立国会図書館デジタルコレクション、国立国会図書館内限定公開)
- 1 2 伊藤元, 中村剛之, 日本昆虫学会 共編 (2020) 『日本昆虫目録 第3巻 直翅系昆虫類』. 櫂歌書房, 福岡. ISBN 978-4-434-28459-5
- ↑ 【足立区生物園】スズムシ
- 1 2 3 “福井の生き物情報 スズムシ”. 福井県. 2017年2月6日閲覧。
- 1 2 “平成25年9月リポート”. 磐田市. 2017年2月6日閲覧。
- ↑ “スズムシ”. 広島大学デジタルミュージアム. 広島大学 (2020年9月11日). 2025年8月12日閲覧。
- ↑ “スズムシ”. www.cgr.mlit.go.jp. 2025年7月4日閲覧。
- ↑ “県天然記念物「スズムシ群棲地」 鳴き声消え、指定解除へ 北限の五城目、環境失われ /秋田”. 毎日新聞. 2020年2月13日. 2021年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ.
- ↑ 若月紫蘭 (1911) 『東京年中行事 下巻』. 春陽堂書店, 東京. doi:10.11501/1053637(国立国会図書館デジタルコレクション 図書館送信サービスで閲覧可能)
- 1 2 3 4 「虫を聴く文化」梅谷献二 農林水産・食品産業技術振興協会、2017年2月6日閲覧。
- ↑ 角田忠信 (1984年6月). “言語脳と音楽脳”. 機関誌36号. 一般社団法人日本音響家協会. 2019年6月30日閲覧。
- 1 2 柏田雄三 (2017年1月31日). “エッセイ 楽しい“虫音楽”の世界(その18 鳴く虫を愛でるのは日本人だけ?)” (PDF). 植物防疫 第71巻 第2号. 日本植物防疫協会. 2019年6月30日閲覧。
- ↑ “日本人にとって虫の音は貴族の風流な遊びだった”. ウェザーニュース (2018年10月24日). 2019年6月30日閲覧。
- ↑ 聞こえなかった鈴虫の声が?周波数と携帯電話の進化|読んで得する知識集|福岡の学習塾・個別指導は筑紫修学館・わかるらいぶ
- ↑ 阿部光典 著、神奈川昆虫談話会 編 (2013) 『昆虫名方言事典 : 昆虫名方言を求めて』. サイエンティスト社, 東京. ISBN 978-4-86079-071-4
- ↑ 栗本丹州 著 (18xx)『千蟲譜 下巻』(服部雪斎写本、国立国会図書館所蔵、請求記号:特7-159) doi:10.11501/2576063(国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能)
関連項目
外部リンク
鈴虫
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 22:50 UTC 版)
「クインテット (テレビ番組)」の記事における「鈴虫」の解説
シャープのペット。しかしアキラの鳴らしたトライアングルのせいで全くなかず、しかもコンサート終了後に脱走してしまった(犯人はアキラ)。
※この「鈴虫」の解説は、「クインテット (テレビ番組)」の解説の一部です。
「鈴虫」を含む「クインテット (テレビ番組)」の記事については、「クインテット (テレビ番組)」の概要を参照ください。
「鈴虫」の例文・使い方・用例・文例
鈴虫と同じ種類の言葉
- >> 「鈴虫」を含む用語の索引
- 鈴虫のページへのリンク
